物理探査
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67 巻, 4 号
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論文
  • 佐口 浩一郎, 山中 浩明
    2014 年 67 巻 4 号 p. 239-253
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
      本研究では,立川断層帯における強震動予測のために,立川断層帯周辺のK-NET,KiK-netおよびSK-netによる観測点において観測された中小地震の地震記録に対してレシーバー関数法を用いた解析を実施し,各地点の1次元深部地盤構造を推定することにより,立川断層帯周辺において「長周期地震動予測地図」等による既往の3次元モデルより詳細な3次元深部地盤構造モデルを構築した。構築した3次元深部地盤構造モデルでは,立川断層の中央部から南部にかけた地域では,地震基盤は南西から北東に向かい急激に深くなっており,基盤深度は周辺の坑井データと調和的であった。また,立川断層の中央部においては1.7 kmの地震基盤の落差を有していることを明らかにした。さらに,2011年東北地方太平洋沖地震の際に断層帯周辺地域において観測された本震の水平・上下スペクトル比の卓越周期分布を,本研究で構築した3次元地盤構造モデルを用いたレイリー波の基本モードによる理論楕円率による卓越周期分布によって説明でき,構築した3次元深部地盤構造モデルの妥当性を示した。
  • 横井 俊明
    2014 年 67 巻 4 号 p. 255-266
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
      オープンスペースの少ない都市域における建設分野での地盤探査では,小口径アレイを使う微動探査法であるCenterless Circular Array法は,SPAC法等に比べて有利とされる。その普及の為には,比較的廉価な動コイル型地震計を使って実施できることが望ましい。しかし,小口径アレイを使う同法では,アレイを構成する地震計間の地動の位相差を正確に推定することが不可欠である。
      本報では,CCA法に対して,長波長近似の改良式とハドルテスト記録を使った計器特性等の補正法を提案し,固有周波数2Hzの動コイル型地震計を使って得られた実微動記録を使ってその効果を検証した事例を紹介する。検証の結果,これらの補正により,分散曲線の推定を改良する効果が見られた。しかし,その効果は限定的で,このような短周期地震計を使う場合に,解析可能な周波数帯が劇的に低周波数側へ(例えば固有周波数の1/10)延びることは困難であると思われる。それは,補正後に解析可能な周波数帯の下限を決めているのは,計測系の電気ノイズであると推測されるからである。
      一方,本報で報告する実験地と同様の地盤限定の話として,探査に使う周波数帯を,例えば3.0Hz以上,探査対象を工学的基盤までの浅部地盤と割り切れば,本報での事例のように比較的廉価な動コイル型地震計でのCCA法が,カーポート程度のスペースで実施可能であると思われる。今後,より低速度,或は高速度の地盤での実証的な検討の蓄積が望まれる。
ケーススタディ
  • 高倉 伸一, 佐々木 裕, 高橋 武春, 松隈 勇太
    2014 年 67 巻 4 号 p. 267-275
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
      斑岩銅鉱床や酸化鉄銅金鉱床などの非鉄金属鉱床探査ではIP法電気探査が利用される。これは鉱床に賦存する黄鉄鉱や黄銅鉱などの硫化鉱物がIP効果を持つためである。しかし,IP異常が観測された有望地点で試錐をしても,硫化鉱物や目的とする金属鉱物が見つからないことも多い。その原因の一つとして,IP効果を有する磁鉄鉱の存在があげられる。硫化鉱物と磁鉄鉱を識別する方法の一つとして,多周波数で複素比抵抗を測定するSIP法の使用が考えられる。硫化鉱物のSIP効果は知られているが,磁鉄鉱のSIP効果については現状ではよくわかっていない。そこで,我々は硫化鉱物と磁鉄鉱が有するSIP効果の違いを明らかにするため,代表的な硫化鉱物である黄鉄鉱の粒子と磁鉄鉱の粒子を含有させた人工試料を作成し,それらの複素比抵抗を計測した。そして,得られたデータをCole-Coleモデルを用いて解析した。その結果,黄鉄鉱と磁鉄鉱を含む人工試料では,含有される金属粒子の増加とともにSIP効果は大きくなるが,その周波数依存性が異なることが確認された。このことは,地下における黄鉄鉱と磁鉄鉱の分布がSIP法で識別できることを示唆する。
講座
  • 海江田 秀志, 鈴木 浩一
    2014 年 67 巻 4 号 p. 277-285
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
      オーストラリアでは2002年より南オーストラリア州北東部のクーパーベイズンにおいて,高温岩体方式による地熱開発が進められている。これまで深さ4,421 mの注入井から総量約2万トンの水を圧入して,人工的に地熱貯留層が造成され,2013年にはこの貯留層を貫くように掘削された生産井と注入井との間で水の循環が行われ,1 MWの発電が実施されている。これら一連の作業において物理探査の果たした役割は大きく,例えば地熱開発地点の選定においては,地震探査や重力探査の結果から,高温岩体と見なす花崗岩の深度や分布が推定され,GISを用いた坑井検層結果の解析から地下の温度分布が推定された。また,筆者らはこの現場において人工地熱貯留層の造成時にAEを観測し,その解析から貯留層の位置や広がりを推定し,生産井の掘削計画に貢献した。さらに,電磁探査により地下5 km程度までの広域の比抵抗構造を推定すると共に,将来大量の地表水が地下に圧入された場合の比抵抗変化を評価するための基礎データとした。現地は人工的なノイズが少なく,AE観測および電磁探査の高精度な測定ができたと考えられる。
英文誌要約
  • 物理探査学会会誌編集委員会
    2014 年 67 巻 4 号 p. 287-291
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     英文誌「Exploration Geophysics」の内容を広く会員に紹介するために,掲載論文の要旨の翻訳を本誌に掲載する。今回は,英文誌のVol. 45 No. 3の要旨を紹介する。著者による原著という注釈があるもの以外,要旨の翻訳は会誌編集委員会にて実施した。興味をもたれた論文に関しては,是非とも電子出版されたオリジナル版をチェックいただきたい。なお,英文誌に掲載された論文は,本学会のホームページ経由で閲覧可能である。具体的には,本学会トップページ右側のバナー一覧のうち「Exploration Geophysics download site」を選択し,ウエブページ上の指示に従い,会員認証後PDFダウンロード可能となる。
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