物理探査
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67 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集:非在来型資源・再生可能エネルギー
論説
  • 佐伯 龍男, 稲盛 隆穂
    2014 年 67 巻 1 号 p. 5-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
      東部南海トラフ海域をモデル海域として進められてきた我が国におけるメタンハイドレートの資源利用を目的とした研究開発において,物理探査技術が果たしてきた役割を地震探査技術を中心に概観する。
      BSR (Bottom Simulating Reflector:海底擬似反射面) は反射法地震探査を用いてメタンハイドレートの賦存を推定する指標であるが,三次元地震探査データによる堆積学的解釈技術,高密度速度解析,強振幅反射などの情報を付加することによって,資源開発の対象として有望なタービダイト砂層の孔隙充填型のメタンハイドレート濃集帯の存在を把握できるようになった。現在は,物理探査技術だけではなく地質学的知見や貯留層工学の知見を交えて,濃集帯の貯留層の詳細評価を行いながら,メタンハイドレート賦存層から安定的かつ経済的にメタンガスを生産するための技術の確立に寄与すべく研究を進めている。
      物理探査技術は,単にメタンハイドレート賦存層の状況を把握する方法というだけではなく,メタンハイドレート賦存層をどのような観点で生産開発対象として認識するべきかといった研究開発の方針や道筋を左右する重要な示唆を我々にあたえてくれる。
  • 棚橋 道郎, 上田 哲士, 近藤 六夫, 梶 琢
    2014 年 67 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
      マルチビームソナー (Multi Beam Echo Sounder: MBES) による海底地形調査は,海底資源調査や科学調査,および海洋土木調査など幅広い分野で利用されており,海底地形の特徴を理解する上で欠かせない調査機器となっている。そして最近では,信号処理技術の飛躍的な発展により,MBESによって水中音響に関する情報も利用できるようになりつつある。このような技術革新を踏まえ,筆者等は,MBESによる水中音響情報によって,沖縄トラフ中部海域の海底熱水系が,海底から高さ約1,000mに達する大規模な水中音響異常を伴うことを明らかにし,新たな探査ツールとしての可能性を追求してきた。本稿では初めに,このような大規模な水中音響異常の検出例をいくつか紹介する。次に,その探査能力をさらに発展させ,2周波数のMBESを利用した水中音響調査によって,二酸化炭素の液滴 (droplet) に起因すると考えられる大規模な散乱異常と,ブラックスモークのような熱水プルームによる散乱異常の検出が可能であることを示す。これらの検討結果を踏まえ,沖縄トラフのような二酸化炭素に富む海底熱水系をターゲットとした,新たな広域探査手法を提案する。今回報告する成果は,経済産業省資源エネルギー庁の委託業務によるものである。
  • 内田 洋平, 吉岡 真弓, シュレスタ ガウラブ
    2014 年 67 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
      地中熱利用ヒートポンプシステムは,1970年代に起きたオイルショックを契機として,欧米諸国が積極的に導入・普及を進めたことはよく知られている。しかし,日本では競合する空気熱源のシステムに比べ初期コストが高く,また諸外国と比べても導入コストが高いために,地中熱の利用がなかなか普及していないのが実状である。その原因の一つとして,日本と欧米諸国における第四紀層の層厚の違いが挙げられる。
      日本における大都市の地形・地質の多くは堆積平野や堆積盆地であり,欧米諸国と比べて第四紀層が厚く堆積している。例えば,日本で最大規模の関東平野では,その第四紀層の最大層厚は3000m以上と推定されている。この第四紀層の透水係数は高く,優良な帯水層を形成している。
      地下の温度は,地表面温度と地殻熱流量だけではなく,様々な要因によって変化する。従来の地熱分野では,地表面温度と孔底温度のデータから温度勾配を求め,熱伝導率との積から地殻熱流量を求めてきた。しかし,実際の地下の温度分布は地下水の流れによる熱移流の影響を強く受けており,その分布には大きな偏りがある。本稿では,地下水の流れと地下温度構造の関係を考慮した,水文情報に基づく地中熱ポテンシャル評価に関する研究事例について紹介する。
解説
  • 江頭 沙織, 福田 真人, 佐藤 啓, 藤本 顕治, 都築 雅年, 島田 忠明
    2014 年 67 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
      1970年以降,我が国では地熱資源開発の促進が進められ,旧地質調査所や新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) による全国的な地熱資源調査が行われ,地熱発電所の建設が進められたが,1999年の八丈島の地熱発電所を最後に新規の発電所の建設はない。この要因として,地熱資源の多くが自然公園内に存在すること,地下に特有なリスクに起因するコスト高などがあげられる。しかしながら2011年の震災以降,地熱資源の見直しが行われ,地熱開発の促進は重要な課題のひとつとなった。
      2012年8月の法律改正により,石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (JOGMEC) に地熱資源の開発促進の機能が追加となった。この機能には,地熱開発事業者が実施する地質構造調査における助成金の交付,探査における出資,開発における債務保証などの支援,また自主的な調査による情報提供があり,さらに2013年度から技術開発事業も加わった。
      本稿では,JOGMECが開始した支援事業および調査事業,ならびに技術開発の方針について紹介することとしたい。
  • 浅沼 宏
    2014 年 67 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
      地熱エネルギーは賦存量,安定性,温室効果ガス排出量などの面で優れた特徴を有する再生可能エネルギーである。特に,火山国であり,世界的にも地温勾配が高い我が国においては有望なエネルギー源であると認識されている。地熱エネルギー利用の一形態に地下の貯留層から高温の熱水や蒸気を坑井を介して取り出し,それによりタービンを回転させて発電する地熱発電がある。このためには,約200℃以上の熱水や蒸気を蓄えた貯留層の開発を行う必要があるが,このような地熱貯留層はきわめて偏在していることに加え,高透水性の亀裂は貯留層内に不均質に分布しているため,このことが地熱開発の不確定性を高め,高発電コストの遠因のひとつとなっている。この中で,地下に掘削した坑井に高圧の流体を注入する等により既存亀裂の透水性を高める,あるいは新たに亀裂を生成し,人工的に地熱貯留層を拡大・作成する技術の開発が行われてきた。このように人為的手段により作成された地熱システムはEGS (Engineered Geothermal Systems) と呼ばれ,欧米では地熱開発の中心的手段となっている。我が国においてもEGSは地熱発電量の拡大,持続性の維持のために有効であると認識されている。EGSにおいては開発ターゲットとなる岩体の性状の把握,および亀裂システム作成時のモニタリング等において物理探査技術の果たす役割は大きいが,EGSでは貯留層を形成する個々の亀裂の評価・モニタリングが必要とされるため,今後さらなる技術開発が必要である。
  • 西尾 伸也, Oleg Khlystov, 杉山 博一, Andrey Khabuyev, Oleg Belousov
    2014 年 67 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
      バイカル湖は淡水湖として唯一,メタンハイドレートの存在が確認されている湖である。最近,国際共同プロジェクトによりバイカル湖のメタンハイドレートに関する研究が進められている。バイカル湖の中央湖盆,南湖盆で確認されたBSR分布に基づき,多くの泥火山・ガス湧出サイトの湖底表層からメタンハイドレート試料が採取され,地質情報,物理探査情報も収集された。ここでは,今までの研究成果を概観すると共に,表層型メタンハイドレートの集積状況を把握するために実施したコーン貫入試験結果について述べる。
通常論文
英文誌要約
  • 物理探査学会会誌編集委員会
    2014 年 67 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/02
    ジャーナル フリー
     英文誌「Exploration Geophysics」の内容を広く会員に紹介するために,掲載論文の要旨の翻訳を本誌に掲載する。今回は,英文誌のVol. 44 No. 4の要旨を紹介する。著者による原著という注釈があるもの以外,要旨の翻訳は会誌編集委員会にて実施した。興味をもたれた論文に関しては,是非とも電子出版されたオリジナル版をチェックいただきたい。なお,英文誌に掲載された論文は,本学会のホームページ経由で閲覧可能である。具体的には,本学会トップページ右側のバナー一覧のうち「Exploration Geophysics download site」を選択し,ウエブページ上の指示に従い,会員認証後PDFダウンロード可能となる。
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