物理探査
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70 巻
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論文
  • 楠本 成寿, 東中 基倫
    2017 年 70 巻 p. 1-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/08
    ジャーナル フリー

    重力偏差テンソルのgzz成分のパワースペクトルと平均境界層深度の関係を導いた。両者の関係は,片対数上で波数に対して非線形であり,従来の直線近似が採用された場合,平均深度は実際よりも浅く推定されることが判明した。本研究で得られた解を,中部九州の九重地域で取得された重力偏差テンソルのgzzのパワースペクトルに適用し,平均境界深度を推定したところ,重力異常のパワースペクトルから推定される平均境界深度と概ね調和的な結果を得た。一方で,我々の解は,低波数域については平均境界深度を推定できないという問題や,重力異常から推定される平均境界深度とほぼ同じ平均深度を与える波数域が,鉛直勾配では,高波数域に移動し,その幅が高波数域ほど広くなる傾向にあるという特性が示された。

  • 小西 千里
    2017 年 70 巻 p. 56-68
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    河川堤防を中心に利用されている統合物理探査の結果をクロスプットによる単純な分類法に利用するだけでなく,工学的に有用な新たな物性断面作成に活用する方法のひとつとして,解釈テンプレートを用いる方法を考案した。具体的には,S波速度と比抵抗という二つの物性値から,物理モデルに基づく解釈テンプレートを用いて粘土含有率と間隙率を推定する。粘土含有率は土質の違い,間隙率は地盤の緩みの把握に利用する。本研究では特に不飽和土質地盤を対象とし,粒状媒質を想定した弾性波速度のモデルと並列回路モデルをベースとした比抵抗のモデルを利用する。これらの物理モデルは,理論と経験的な関係のハイブリッドなモデルであり,比較的実用性を考慮したモデルである。本手法では,物理モデルを介した逆解析によって地盤物性を求めるのではなく,物理モデルを用いて事前の順計算によって作成した解釈テンプレートと観測値の比較によって対象とする地盤物性を推定する。この方法は適用が容易なだけでなく,観測値に対するパラメータの感度を視覚的に確認できるという利点も備えている。物理モデルに入力する各種パラメータは,粒度を調整した人工土質材料を用いた室内試験結果を基に設定した。実際の河川堤防の現場で得られた統合物理探査結果を用いて,提体の土質と間隙率を推定した。探査測線区間内には6か所の提体開削箇所があり,統合物理探査によって推定した結果と実際の提体内部の観察結果とを比較・検証することができた。その結果,推定粘土含有率が高い箇所はシルト質,低い箇所は礫質土で構成されていることが確認された。また,間隙率が大きく推定された箇所は提体に緩みがみられた開削箇所と一致していた。これらの結果から,現地状況や既知情報を活用して適当な物理モデルを適用することにより,地表から非破壊的に概略的な土質の違いや緩みの把握が可能であることが示された。

ケーススタディ
  • 鈴木 浩一, 窪田 健二, 海江田 秀志, 焦 中輝, 楊 明偉, 城森 明
    2017 年 70 巻 p. 12-24
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/08
    ジャーナル フリー

    台湾電力は台中市沿岸域にあるCO2地中貯留実験場において,深度2500mの堆積軟岩を対象に注入試験を計画している。深部電磁探査法は貯留したCO2を比抵抗の変化としてモニタリングする手法として期待されているが,将来の大規模な注入実験を行う前に,貯留層の初期の比抵抗構造を把握しておく必要がある。ここで,従来のCSAMT法は,人工ノイズの影響で送信源と受信点の距離を充分離すことが出来ず,探査深度は1000m以浅に限られていた。本報では,まず深度2500mの帯水層のモニタリングが可能かを検討するため,CO2貯留を想定した数値モデルによるシミュレーションを行った。その結果,注入総量が100Mtonに達すると見掛比抵抗で約5%増加することが分かった。次に,深度3000mまでの比抵抗構造を探査する事を目的に,本実験場より15km離れた地点に5km長の電流信号源を設置し,城森ほか(2010)による送信源とのGPS同期による高い周波数分解能でデータ取得が可能なGeo-SESシステムを使用して,8192~0.015625Hzを受信する深部CSMT法を行った。その結果,強力な低周波数ノイズがある環境下においても,デジタルフィルタおよび隣り合う測点でのE/Hベクトルを加算平均することにより,比較的品質の良い見掛比抵抗・位相差が算出できた。また,信号源を考慮したニアフィールド補正を行うことにより,低周波数0.0625Hzまで有意なデータを得ることができた。更に,1次元および2次元解析により得られた深度3000mまでの比抵抗断面は,電気検層や岩石試料による比抵抗と深度2000m以深でほぼ整合し,本手法の有効性が確認できた。

  • 横田 俊之, 神宮司 元治, 山中 義彰, 村田 和則
    2017 年 70 巻 p. 25-34
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー

    2011年3月11日に平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震が発生し,多くの被害が発生した。東京湾岸や利根川下流域では広範囲にわたって,液状化の被害を受けた。本研究では,利根川下流域にあたる千葉県香取市の利根川北岸地域で表面波探査を実施し,地下約30 mまでのS波速度(Vs)構造を求めた。その結果,調査領域の地下は,比較的高速度のVsを持つ砂質表層,低速度のシルト質層,高速度の砂質基盤層の三層に区分されることがわかった。

    求められたVs分布を用いて,調査領域の地下1.5 mが平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震時の揺れにあった場合,液状化するかどうかについて検討を行った。その結果,調査領域ではほとんどの領域で液状化が発生しないことが推測された。また,液状化が発生すると推定された領域は,地表踏査結果や明治時代に水圏であった領域と良い一致を示した。これらの結果より,Vsを利用した地盤の液状化に対する強度の推定は有用な手法であることが示された。

短報
技術報告
  • 佐藤 真也, 後藤 忠徳, 笠谷 貴史, 川田 佳史, 岩本 久則, 北田 数也
    2017 年 70 巻 p. 42-55
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/10
    ジャーナル フリー

    金属鉱床探査などを目的とした自然電位探査は,陸上では従来から行われている。水中においても自然電場探査は行われており,近年では深海における自然電場観測によって海底熱水鉱床を探査する試みも始まっている。海水中では自然電位信号が小さいため,電場データに混入したノイズを除去する必要がある。しかし,複数の並行観測データを足し合わせて平均化する従来の手法(スタッキング)では,並列データに混入したノイズの間に相関が認められる場合,このノイズを除去することは難しい。そこで,海底下からの電場信号とノイズの独立性に着目し,独立成分分析(Independent Component Analysis : ICA)と呼ばれる多成分の混合信号を複数の独立な信号に分離する手法を用いて,ノイズの除去および信号の抽出を試みた。

    まず曳航式自然電場探査により取得した電場データに対してICAの適用実験を行った。海底熱水鉱床や海底湧水域から離れた場所での電場データを解析した結果,本データには自然電場信号は含まれていないことが明らかとなり,抽出したノイズの原因を推定することができた。さらに,本データに対し,海底下からの自然電場信号を模した仮想的な信号成分を足しあわせて,擬似的な観測データを作成した。この擬似的データからICAを用いてノイズを抽出および除去した結果,スタッキングよりも明瞭に仮想的な信号成分を抽出することができた。

    次に,自律型無人探査機を用いて取得した,海底熱水噴出域周辺での電場データに対してICAを適用した。その結果,スタッキングでは抽出することができなかった自然電場信号をICAにより抽出することができ,抽出および除去したノイズの原因を推定することができた。

    以上からICAによるノイズ除去・信号抽出法は,スタッキングでは除去することが困難であるノイズを除去可能であると結論付けられる。本手法は海底自然電場探査だけでなく,陸上・海底での種々の電磁・電気探査にも広く適用可能であると思われ,より高精度の地下構造情報抽出に利用可能であると考えられる。

  • 水永 秀樹, 石永 清隆
    2017 年 70 巻 p. 69-79
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,より現実的な時間領域IP法のデータ解析のために,比抵抗にコール・コールパラメータを組み入れて,見掛比抵抗の過渡応答が計算できる有限要素法による2.5次元モデリングプログラムを開発した。これまでの時間領域IP法では,過渡応答を積分して求めた見掛充電率しか使用していなかったので1つの擬似断面しか得られなかったが,今回開発した2.5次元モデリングプログラムを使うことで,任意の時間での擬似断面を作成することができる。これにより,充電率だけでなく時定数や周波数依存係数の違いによる擬似断面の時間変化をシミュレートすることができ,時間領域IP法のデータ解析に役立つものと期待できる。

    また,時間領域IP法の観測データから4つのコール・コールパラメータ(比抵抗,充電率,時定数,周波数依存係数)の地下断面を求めて鉱種の識別を行なうため,時間領域IP法の2.5次元インバージョンプログラムを開発した。今回開発したプログラムでは,2段階でインバージョンが行なわれる。最初に時間毎に2.5次元比抵抗インバージョンが行なわれ,ブロック毎の比抵抗値が求められる。次に各比抵抗ブロックの比抵抗値の時間変化を過渡応答データとして,コール・コールモデルを基にしたインバージョンが行なわれ,ブロック毎に4つのコール・コールパラメータが求められる。このプログラムを用いて,異なるIPパラメータを持つ鉱体モデルでインバージョンを行なった結果,各コール・コールパラメータが精度良く求められることがわかった。また比抵抗と充電率が等しく,これまで区別が困難であったIP異常体の違いも,時定数や周波数依存係数を利用することで識別できることがわかった。現状の時間領域IP法では比抵抗と充電率以外の情報はほとんど利用されていないが,時定数や周波数依存係数の分布まで求められる2.5次元インバージョンが可能となったことで,金属鉱床探査でのIP法の適用可能性が広がった。

特集「地熱地帯で適用される物理探査技術の最前線」
  • 松島 潤
    2017 年 70 巻 p. 80
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー

    東日本大震災後,国産エネルギー資源が見直される中で,安定的に発電を行うことが可能なベースロード電源として地熱発電に大きな期待が寄せられています。しかしながら,火山国である我が国は世界第3位の豊富な地熱資源量を誇るものの地熱発電設備容量については世界で10位と大きく後退してしまっています。2030年までに地熱発電量を現在の3倍にすることが政府目標となっており,地熱資源開発に大きな追い風が吹いている状況です。

    地熱発電量を大きく増やすことが容易でない原因につきましては様々存在しますが,物理探査の側面からは,日本の地熱資源賦存地域が主として山岳地帯に位置しているため探査実施に制約を受けることや,極めて強い複雑性を呈する地下特性のため良好な探査結果が得られにくいなどの理由により最適な生産井掘削位置の決定が容易でなく,大きな探査リスクを伴っていることがあげられます。このような探査リスクを軽減し,かつ生産後も地熱貯留層の適切な評価と管理を行うために,様々な物理探査技術を高度化し,多次元的な適用・統合解釈することにより地熱資源システムを理解する方法論を確立することが求められています。

    本特集では,英文誌「Exploration Geophysics」誌とのコラボレーション企画として「地熱」に係る物理探査技術に係る招待論文を集めるとともに一般論文も広く募集し,当該分野に係る最新技術や適用事例を紹介していただくことを企図しました。近年の地熱地帯における探査技術の飛躍的な向上を把握いただくとともに,技術的な課題の抽出と解決法に関しての議論と理解を深める機会となり,地熱資源開発への物理探査技術の貢献の向上につながれば幸いです。

解説
  • 西川 信康
    2017 年 70 巻 p. 81-95
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー

    JOGMECが地熱業務を開始して5年が経過するが,この間,国のバックアップや事業者の地熱開発に向けた気運の高まりなどを追い風に,JOGMECの支援制度の活用が着実な広がりをみせている(江頭ほか, 2014)。

    一方,国は,平成27年7月「長期エネルギー需給見通し」において,地熱発電を発電コストが低廉で安定的に発電することができる「ベースロード電源」として位置づけ,総発電電力量に占める地熱発電の割合(エネルギーミックス)を2030年度までに現在の3倍に拡大することを目標として掲げている。JOGMECは,このエネルギーミックス達成に向け,関係者との連携を一層強化して,地熱開発を加速化していくべく,尽力していく所存である。

    本稿では,我が国の地熱発電の現状と地熱発電を取り巻く課題,およびJOGMECの支援策と最近の活動状況,ならびに今後の展望について紹介することとしたい。

論文
  • 千葉 昭彦, 亀山 正義, 毛利 拓治, 代田 敦, 石川 弘真, 近持 雅春, Jackie Hope
    2017 年 70 巻 p. 96-109
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー

    日本国内の地熱資源ポテンシャルの調査に,空中重力偏差法探査,時間領域空中電磁探査および空中磁気探査を適用した。空中重力偏差法探査により詳細な探査結果が得られ,熱源となる可能性がある貫入岩を示唆するような高鉛直重力偏差異常の近傍に,地熱貯留層を発達させる断裂系に関連する可能性のある線状あるいは環状の重力偏差リニアメントが示された。空中電磁探査で得られた低比抵抗異常と空中磁気探査で得られた低磁気異常が地熱兆候の指標である帽岩や熱水変質帯の分布を示唆しているケースがあることも示された。これらの空中物理探査で得られた個々の物性指標は必ずしも地熱兆候を示唆するものとは限らないが,物性指標が重複する場所は地熱資源ポテンシャルが高いと考えられる。これらの結果に坑井での温度情報を利用した温度構造を組み合わせることで地熱資源ポテンシャルの評価が可能になる。

    地熱兆候に関連する物性指標を抽出しやすくするため,個々の手法でフィルタ解析や逆解析手法の検討が行われ,各手法の特性や留意点も明らかになった。

    日本国内で空中物理探査を行う場合には,いくつかの考慮すべき社会的事情があるものの,地表条件にかかわらず広い範囲を詳細かつ均質に調査して,調査地域全体を同じ条件でデータ処理・解析できるという特徴は空中物理探査の大きな魅力であり,地熱調査だけでなく他の分野への適用が期待される。

  • 横井 浩一, 樋口 聖, 髙山 純一
    2017 年 70 巻 p. 110-123
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー

    鹿児島県霧島地域大霧地区では日鉄鉱業株式会社が地熱蒸気供給を行い、九州電力株式会社が発電を行う大霧発電所が平成8年から運転を開始し,以降,順調な操業が行われている.独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構は地熱資源ポテンシャル評価のための空中物理探査を全国の地熱有望地で実施しているが,霧島地域では平成25年度に空中重力偏差法探査が,平成26年度に時間領域空中電磁法探査が実施された。また,過去には空中磁気探査も実施されている。

    本研究では,大霧発電所周辺で取得された空中重力偏差法探査および空中磁気探査データの2次元解析を行い,既知の比抵抗構造や地質構造と対比した。空中重力偏差法データでは,表層密度解析を行い最適な補正密度を検討した後,周波数解析によって解析に使用する波長成分を決定し,2次元密度構造解析を実施した。その結果,第2層を低密度とした浅部構造に関する3層構造解析結果では,地熱徴候地で低密度層が厚く,かつ,地表まで達する傾向が認められた。深部構造に関する解析の結果,大霧地区では重力基盤が浅いと解析された。また,空中磁気探査データに関して,第2層が低帯磁率とした3層構造解析を実施した結果,銀湯地熱徴候地付近で低帯磁率層が地表まで達し,かつ,層厚が厚くなる傾向が認められた。

    これら結果を,時間領域空中電磁法探査での比抵抗断面,MT法解析断面と対比した結果,空中重力偏差法データの解析で得られた低密度層,空中磁気探査で得られた低帯磁率層は,空中電磁法,MT法による低比抵抗層の分布とおおむね一致していることが判明した。ボーリングコアで測定された物性でも,密度,帯磁率,比抵抗に正の相関が認められ、比抵抗はコアでの変質度合いと調和的である。これらから,低密度層,低帯磁率層,低比抵抗層は,地熱変質帯の分布を示していると考えられた。

ケーススタディ
  • 青木 直史, 新部 貴夫, 佐藤 馨, 寺西 陽祐, 三浦 卓也, 持永 尚子, 原 彰男, 熊野 裕介, 中田 守, 福田 真人, 毛利 ...
    2017 年 70 巻 p. 124-141
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー

    阿多カルデラ内部に位置する鹿児島県山川地熱地域において,地熱貯留層の位置や形状の高精度把握技術の開発を目的とする弾性波探査実証試験が実施された。本実証試験の目標は,山川地域の地熱貯留層構造の詳細検討を通じて,反射法・屈折法統合弾性波探査の断裂系評価法としての有効性と,電磁探査や重力・磁気探査と組み合わせる統合物理探査の地質評価法としての可能性を示すことであった。本試験データの3次元反射法記録とそのジオメトリカルアトリビュート解析からは断裂系の連結構造が可視化されたほか,屈折トモグラフィ解析とフルウェーブインバージョン(FWI)解析からは複雑な弾性波速度構造が明らかとなった。さらに,弾性波探査をガイドにした既存のMT / 重力 / 磁気データの3次元逆解析により,比抵抗・密度異常・磁化ベクトルのモデルを推定し,弾性波探査や坑井の情報との対比や地球統計学的な検討を通じて,岩相および温度構造のモデルを推定した。そして,これら一連の作業手順は3次元地質モデル構築ワークフローとして総括した。また,本試験データを用いたデシメーションテストでは,多くの国内地熱地域が位置する山岳部における弾性波探査の適用性を評価した。ここでは,準3次元的なデータ取得配置であっても,5D内挿法や共通反射面(CRS)重合法などのデータ補間技術を適用することにより,3次元構造把握が可能であることが示された。

  • 熊野 裕介, 中田 守, 玉川 哲也, 青木 直史, 毛利 拓治
    2017 年 70 巻 p. 142-152
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー

    鹿児島県山川地熱地域において,地熱貯留層探査技術開発の一環である弾性波探査実証試験として取得された3次元弾性波探査データを対象として,不連続箇所を強調・抽出することができるcoherenceアトリビュートを評価した。得られたcoherenceアトリビュートは,dip/dip azimuth,ならびにcurvatureアトリビュートから推察される地質構造や,既往文献(Okada and Yamada, 2002)に報告されていた坑壁比抵抗イメージによって検出された天然フラクチャーの分布と整合的であることが確認された。総じて,ジオメトリカルアトリビュート解析によって信頼性の高い断裂系分布の推定ができており,地熱地域における断裂系把握への有効性が示されたものと考えられる。

  • 三浦 卓也, 持永 尚子, 青木 直史, Masashi Endo, Alex Gribenko, David Sunwall, 毛利 拓治
    2017 年 70 巻 p. 153-163
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー

    独立行政法人石油天然ガス・金属資源機構(JOGMEC)が地熱発電技術研究開発事業として実施する地熱貯留層探査技術開発では,地熱開発での掘削成功率やフィールドの長期経済性の向上において求められる地熱貯留層構造の3次元的詳細把握の課題に対し,電磁探査,重力探査,磁気探査,及び弾性波探査の統合物理探査技術の開発を行ってきた。平成27年度には阿多カルデラ内部に位置する鹿児島県山川地熱地域において,第1回実証試験として3次元弾性波探査実証試験が実施され,平成28年度には既存のMTデータ,重力データ,磁気データを用いた3次元逆解析が実施された。物理探査データの3次元逆問題は,一般的にill-posedであることが知られている。一方で,複雑な地質構造を解釈するためには,信頼性の高い3次元モデルを得る必要がある。地下の地質構造を反映したモデルを初期モデルとして与えた3次元逆解析手法がこの問題を解決する手助けとなることが期待される。本研究では,山川地熱地域における弾性波探査データや坑井データ等の既知情報を統合した先験的モデルを初期モデルとし,MTデータ,重力データ,磁気データの3次元逆解析を実施した。本稿では,先験的モデルの構築において,弾性波探査データからの情報を加味することの利点を探るとともに,RMSミスフィットや坑井データと比較することで弾性波探査データからの寄与の度合いによる3次元逆解析結果の違いを検証する。

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