物理探査
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71 巻
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論文
  • 吉田 邦一, 上林 宏敏
    2018 年 71 巻 p. 15-23
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー

    従来からSPAC法において用いられている二重正三角形アレイの水平成分から回転成分波形を求め,それを用いてラブ波の位相速度を推定する手法を考案した。水平面内の回転成分はラブ波のみに依存し,レイリー波の影響を受けないので,回転成分を適切に求められれば,その位相速度はラブ波の位相速度となる。ここでは回転成分を計算するために必要な空間微分を,正三角形アレイの記録を用いてテイラー展開により求めた。検証のため,全波動場を計算したものと,SH波動場のみを計算したものの2種類の理論微動アレイ記録を作成し,それらに対しこの手法を適用した。全波動場とSH波動場のアレイ記録それぞれから得られた回転成分波形は,ほぼ一致し,P-SV波動場を含む全波動場からSH波動場(ラブ波)のみによる成分を良好に取り出すことができることが確認できた。この方法をもとに,二重正三角形の中心点を除く6観測点の内の3点の組み合わせから,中心1点と円周上3点の計4点からなる正三角形アレイの回転成分波形を求めた。得られた回転成分アレイ波形に対しSPAC法あるいはf-k法などを適用することで位相速度を推定できる。ここでは回転成分アレイ波形にSPAC法を適用し,ラブ波の位相速度を推定できることを確認した。また,想定しているサイズのアレイで観測されるべき回転成分は,通常用いられる観測システムで十分求められるべき振幅を持つことを示した。

  • 小林 佑輝, 成瀬 涼平, 薛 自求
    2018 年 71 巻 p. 56-70
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    近年の技術進歩により,坑内に展開した光ファイバーをジオフォンの代わりとして使用するDistributed Acoustic Sensing(DAS)計測が注目されており,将来の低コストでの長期モニタリングのツールとして大いに期待されている。二酸化炭素地中貯留技術研究組合は,2017年8月に,大深度および傾斜井で,かつ,コイルドチュービング内に展開した光ファイバーを用いてのDAS-Vertical Seismic Profile(VSP)記録の評価を目的に,国内陸域の坑井においてDAS-VSP現場実証試験を実施した。貴重なDAS計測の機会を活用し,人工震源での発震作業を行えない夜間には,バックグラウンドノイズデータ取得のため連続DAS計測を行った。計12時間の連続計測期間中,通常のバックグラウンドノイズとは明らかに異なるイベントを観測した。同イベントと他のノイズイベントとの比較から,同イベントが自然地震によるものであると結論付けられた。気象庁解析結果と比較したところ,8月27日4:15(Japan Standard Time) に調査井からの震源距離約16 kmで発生したマグニチュード2.3の地震と同定できた。周辺のHi-net観測点波形データの解析結果と比較し,本調査期間中にDAS計測の検出感度を超えていた地震は上記地震のみであると考えられる。DAS計測を用いた地震観測には依然克服されるべき課題が多いものの,従来のジオフォンによる坑内観測と比較しメリットが多い同手法による長期地震観測の可能性が示された。

  • 澤山 和貴, 北村 圭吾, 藤光 康宏
    2018 年 71 巻 p. 71-85
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    地震探査,電磁探査をはじめとした物理探査による地下流体の分布評価は,地熱資源をはじめとした流体資源の開発に不可欠であり,その探査精度を向上するためには岩石の物理的性質を実験的に詳細に調べる必要がある。本研究では,地熱貯留層を構成する岩石の水飽和度と複素比抵抗ならびに弾性波の関係を実験的手法によって明らかにすることを目的とし,岩石コアの室内透水試験を行った。実験供試体は,既存のマクロクラックに加え人工的に熱性亀裂を造成した安山岩(空隙率10.5%)のコア試料を用い,封圧20 MPa,温度25 ℃の条件下で透水試験中の水飽和度,浸透率,複素比抵抗(測定周波数10-2−105 Hz)および弾性波(P波,測定周波数250 kHz)を測定した。透水試験では,地熱貯留層内の水飽和度変化を再現するため,はじめに過熱蒸気を模擬した窒素ガスで空隙を充填させたのち,塩水(1 wt-% KCl溶液)を一定圧力で注入する窒素−塩水置換試験を行った。この試験の結果,塩水注入前の複素比抵抗は104 Ωmのオーダーであったのに対し,注入後の複素比抵抗は2桁低い102 Ωmのオーダーとなった。また水飽和度の上昇に伴う複素比抵抗の連続的な減少が確認され,この水飽和度と複素比抵抗の相関には有意な周波数依存性は認められなかった。同時に測定していたP波速度は,注入水圧や水飽和度の変化によってほとんど変化しなかった一方で,P波の振幅には水飽和度の上昇に伴う連続的な減衰が認められた。これらの結果から,複素比抵抗はP波速度に比べて微細な水飽和度の変化に対する感度が高いことが明らかとなり,地熱貯留層における緩やかな水飽和度の変化が,複素比抵抗によってモニタリング出来る可能性が示唆された。また水飽和度の上昇に伴うこれら物性値の変化から,本研究試料内の窒素−塩水二相流体流動挙動は2つのステージに分けられることが推察された。

  • 杉本 芳博, 山内 泰知, 高岡 宏之
    2018 年 71 巻 p. 86-102
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/27
    ジャーナル フリー

    地震動評価のための三次元速度構造モデルは,微動アレー探査や地震探査,重力探査,ボーリングデータなど,S波速度やP波速度,密度,層厚に関する情報を含む多くの物理探査や地質データを使って構築される。これらのデータを統合して三次元速度構造モデルを構築するためのツールとしてジョイント・インバージョンのプログラムを開発した。異なる種類の探査データを同時に解析するため,広域モデルとローカル・モデルを同時に使う解析モデルの枠組みを導入し,非線形最小二乗法によるジョイント・インバージョンの定式化を行った。加えて,未知パラメータを減らすために,P波速度および密度はS波速度の関数として取り扱った。異なる探査データの同時解析においては,探査データ毎に重み係数を適切に調整することが重要であるため,ヤコビアン行列の行ベクトルのL2ノルムを使ったデータの規格化の方法について検討した。さらに,異なる探査データ間のノイズレベルの差を平準化するため,焼きなまし法(SA)を使ったABIC最小化法を適用し最適重み係数の組み合わせを推定した。シミュレーションの結果,これら2つの重み付けの方法は最適な重み係数の組み合わせを選択する方法として有効であることが確認された。次に,探査データの組み合わせを変えて解析した6ケースのインバージョン結果の精度を比較した。シミュレーション結果から,複数の探査データを使ったジョイント・インバージョンによってモデルの誤差が改善することが示された。さらに,これらの解に関する解像度行列の解析結果から,異なる種類の探査データによってもたらされる情報量の増加によって解の一意性が改善することが示された。最後に,残差分布の観点から解の収束性を議論するため,新たに考案した方法を使って多次元パラメータ空間から二次元面を切り出し,その面上にいくつかのRMS残差の分布をマッピングした。それらの分布図によって,ジョイント・インバージョンによる解の精度や一意性,初期モデル依存性の改善を視覚的に理解することができた。ジョイント・インバージョン法は三次元速度構造モデルを作成するための強力かつ効果的なツールであり,今後の発展が期待される。

ケーススタディ
  • 鈴木 浩一, 窪田 健二, 海江田 秀志, 福田 欣也, 山口 伸治
    2018 年 71 巻 p. 1-14
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/30
    ジャーナル フリー

    地中送電線路の設計では,送電線周囲の土壌の熱抵抗は送電容量を決定するための重要なパラメータとなる。従来,土壌の熱抵抗を得るには,対象地盤に発熱体や熱電対を埋設した計測法(過渡探針法)を行う必要があるため,多大なコストがかかる。そのため,現状では経験に基づく安全側の基準値(80 ℃cm/W)で代用されており,必要以上に大きい断面積のケーブルで施工される場合が多い。ここで,窪田ほか(2015)および鈴木ほか(2015)は,人工土壌試料による実験式に基づき,比抵抗から熱抵抗を推定する方法を示しているが,現地で採取した土壌試料から比抵抗や熱抵抗を測定しておく必要があった。そこで,未固結砂モデル(Avseth et al., 2005)に基づき,砂粒子粘土粒子間隙水の並列回路と空気との直列回路よりなる熱抵抗評価モデルを提案し,このモデルによる計算値は未固結土壌試料による室内試験で得られた水飽和度と熱抵抗の関係をよく説明できることが分かった。さらに,S波速度と間隙率との関係式(Avseth et al., 2005),および比抵抗と間隙率の関係式(Katsube and Hume, 1983)を組み合わせた熱抵抗の推定フローを提案した。本手法を地中送電線埋設予定地点で行われた電気探査および表面波探査データに適用した結果,比抵抗とS波速度から推定した熱抵抗と過渡探針法により測定した熱抵抗は,概ね整合することを確認した。以上より,提案した方法は最適なケーブルの設計に充分適用できると考えられる。

  • 岡田 真介, 坂下 晋, 今泉 俊文, 岡田 篤正, 中村 教博, 福地 龍郎, 松多 信尚, 楮原 京子, 戸田 茂, 山口 覚, 松原 ...
    2018 年 71 巻 p. 103-125
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    活断層の評価を行うにあたっては,断層の地下形状も重要な情報の1つである。地下数十m以深の情報は,主に物理探査の結果から得ることができる。これまでには,物理探査は横ずれ活断層にはそれほど多く適用されてこなかったが,本研究では各種の物理探査を行い,横ずれ活断層に対する物理探査の適用性について検討した。対象地域は,近畿地方北西部の花崗岩地域に分布する郷村断層帯および山田断層帯として,4つの測線において,多項目の物理探査(反射法地震探査・屈折法地震探査・CSAMT探査・重力探査)を実施した。その結果,反射法地震探査は,地表下200〜300 m程度までの地下構造を,反射面群の不連続としてよく捉えていた。しかし,活断層の変位のセンスと一致しない構造も見られ,他の物理探査の結果と比較する必要があることがわかった。屈折法地震探査は,原理的に断層の角度を限定することは難しいが,横ずれ活断層の運動による破砕の影響と考えられる低速度領域をよく捉えることができた。CSAMT探査では,深部まで連続する低比抵抗帯が認められ,地下の活断層の位置および角度をよく捉えていたが,活断層以外に起因する比抵抗構造変化も捉えていることから,他の探査との併用によって,その要因を分離することが必要である。重力探査は,反射法地震探査と同様に上下変位量の小さい横ずれ活断層に対しては適さないと考えられてきたが,測定の精度と測定点密度を高くすることにより活断層に伴う重力変化を捉えることができた。

技術報告
  • 金子 誠, 高橋 亨, 笠谷 貴史, 北田 数也, 高橋 亜夕, 町山 栄章
    2018 年 71 巻 p. 24-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/04
    ジャーナル フリー

    近年の海洋鉱物資源調査では,海底地形調査,物理探査,生物・化学調査等を目的とした潜航調査や掘削調査が数多く実施されているが,効果的な海洋資源探査・開発のために,これらの調査データを統合的に解析する手法の実用化が期待されている。海洋研究開発機構では,取得されたデータと地質情報とを簡便に比較,参照し,地球科学的な裏付けに基づいた統合解釈のためのツールの研究開発を進めている。この一環として,これまでに海洋研究開発機構が中部沖縄トラフを対象として実施してきた「しんかい6500」,「ハイパードルフィン」,「ディープ・トウ」による複数の潜航において取得された映像記録から,資源調査において最も基本となる海底地形・地質データを抽出・収集・統合してデータベース化する作業を行っている。また,とりまとめたデータは,既往データの情報検索,将来調査計画の立案,研究のテーマの発見等を容易にするためにGISに登録した。登録した海底地形・地質情報の活用事例の一つとして,海底地形・地質と熱水・湧水やチムニー等との位置関係や連続性,分布性状等を把握して,調査データの解析や解釈に有効に活用することができる海底地質情報図を作成した。作成したデータベースに,各機関で実施されている掘削データや物理探査データを統合することにより,資源調査の基本となる対象海域の詳細な3次元地質情報の推定が可能になると考える。

  • 猪野 滋, 須田 茂幸, 菊地 秀邦, 大川 史郎, 阿部 信太郎, 大上 隆史
    2018 年 71 巻 p. 33-42
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/07
    ジャーナル フリー

    超高分解能三次元地震探査(Ultra-high resolution 3D seismic survey : UHR3D)は,これまでの海上三次元地震探査のデータ取得方法を発展させ,高周波数震源による高分解能化(約500Hz以上),より高密度の発振間隔および受振点間隔(共に約5m以下),クロスライン方向のビンサイズが5m以下,および短いケーブル(約100m以下)を用いて,深度および空間分解能の向上を行う手法である。本稿ではデータ取得およびデータ処理についてその概要を報告する。具体例としては,日奈久断層帯海域部において実施したUHR3Dを取り上げる。

    2016年4月に発生した熊本地震(Mj 6.5およびMj 7.3)で活動した日奈久断層帯の八代海への海域延長部を対象として,2017年2月に1km×2kmの調査域においてUHR3Dを実施した。

    日奈久断層帯海域部UHR3Dにおいては,震源としてブーマーを用い,独立記録型のストリーマケーブル(Autonomous Cable System : ACS)4本を用いた。また,三次元調査に不可欠な航測システムとしてORCAを使用し,リアルタイムで反射点分布を計算し,均質な重合数とするためのインフィルの設定に役立てた。

    データ処理は,三次元地下構造を正しくイメージするために入念に行われた。特にフィールドノイズの除去や,潮汐や波浪の補正,不自然なフットプリントの抑制は品質の向上に効果があった。

    処理された結果より,海底面下100mまでの正確な地下構造が判明するとともに,詳細な断層分布を得ることができた。この結果は,今後の日奈久断層帯海域部の研究への貴重なデータとなるであろう。

    UHR3Dは,トレンチ調査が極めて困難である海域部での横ずれ断層の調査において非常に有効的な手段となることが期待されるとともに,土木工事等で海域での浅層部の構造調査が必要となる場合にも活用できるであろう。

  • 大田 優介, 後藤 忠徳, 小池 克明, 柏谷 公希, 林 為人, 多田井 修, 笠谷 貴史, 金松 敏也, 町山 栄章
    2018 年 71 巻 p. 43-55
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/08
    ジャーナル フリー

    近年,中部沖縄トラフをはじめとした海底熱水活動域において,海底熱水鉱床の調査を目的として,様々な物理探査が行われている。物理探査によって電気伝導度・密度などの物性値の地下分布が得られるが,これらの情報に基づいた地質学的な構造推定には限界がある。そのため,鉱床有望地の具体的な絞り込みや鉱床品位の高精度な評価においては,数多くの海底試掘が必要となっているが,掘削コストは高く,コア回収率は低い。したがって,比較的低コストで実施可能な物理探査によって得られる種々の物性情報から海底下地質情報を適切に抽出することが望まれ,新たな技術開発が必要である。そこで本研究では,海底熱水鉱床の胚胎が有望視されている沖縄トラフ内の複数の海域から岩石サンプルを採取し,室内試験によって様々な物性および鉱物組成や元素濃度を測定し,これらの関係性を調べた。さらに,岩石サンプルの電気伝導度については,間隙水などから岩石の電気伝導度を推定する岩石物理モデルの構築を試みた。本研究で構築した岩石物理モデルを岩石サンプルの測定データに適用した結果,これまでの岩石モデルでは説明が不可能であった高い電気伝導度を示す岩石サンプルについて,その電気伝導特性を再現することに成功した。さらに,推定された物理モデルパラメータと岩石サンプルの導電性硫化鉱物の体積含有率との間に明瞭な正の相関関係を見いだした。この結果は,海底熱水活動域岩石サンプルの電気伝導度は本研究で提案する岩石物理モデルによって説明できることを示している。

特集「宇宙線ミュオンを利用した地下探査の新潮流」
  • 松島 潤
    2018 年 71 巻 p. 126
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    宇宙線ミュオンの透過性を利用して物体内部の密度分布を可視化技術する技術(ミュオグラフィ)は,1955年に地下の密度情報推定手法として初めて適用されました。その後,測定装置の可搬性が高まるとピラミッドや火山を透視することに適用されてきました。近年,さらなる測定機器の小型化や高精度化などの測定技術の革新により,適用分野の拡大と新潮流の形成へ世界的関心が高まっています。とりわけ,地下探査分野においては石油・天然ガス資源あるいは鉱物資源の探査技術の高度化,老朽化する社会インフラの劣化モニタリング技術としての適用などが積極的に検討されています。このような発展を遂げてきたミュオグラフィ技術の,既存の探査体系への導入可能性,新規分野への適用性を考える機会として本特集を企画いたしました。本特集では,宇宙線ミュオンを利用した探査技術に関係する,新技術の紹介,適用事例の紹介,技術課題の抽出と解決法,既存探査スキームとの融合・体系化などの幅広い内容から構成されています。近年のミュオグラフィの飛躍的な向上を把握いただくとともに,技術的な課題の抽出と解決法に関しての議論と理解を深める機会となり,最終的に新潮流が様々な果実に結びつくための一助になれば幸いです。

論説
  • 田中 宏幸
    2018 年 71 巻 p. 127-135
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    宇宙に由来する素粒子ミュオンの強い透過力を用いた巨大物体の透視撮像技術ミュオグラフィはそのリソースのユニバーサリティーから世界の地震火山噴火予測,社会基盤監視,文化遺産調査へと適用され,実績を上げつつ有る。これまで観測ターゲットとされてきた物体のほとんどは地表に突出した形状を持つものが多い。これは上半球のみから到来するミュオンを利用する上で水平に近い方向から到来するものを使えば検出器を地下に埋設する事無く,物体内部を可視化する事が出来るからである。一方で,同技術の地表に突出した物体以外への適用についても社会への期待は大きく,古代地下都市,資源探査,地下水モニタリングなど,地下の状況を把握するためにミュオグラフィは利用され始めている。本論では,ミュオグラフィの地下構造探査への適用の現状をレビューするとともに,将来の大深度ミュオグラフィの実現可能性について述べる。

  • 宮本 伸一
    2018 年 71 巻 p. 136-147
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    宇宙線ミューオンを用いた大規模構造物内部センシング技術であるミュオグラフィの地下探査への適用にあたって,本稿では近年発展が著しい機械学習の利活用の可能性について検討する。ミュオグラフィの物理および機械学習の代表である深層学習の概要について振り返ると共に,高精度なトモグラフィと観測期間の短縮をミュオグラフィで実現するために有効である超解像度,GAN,LSTMといった深層学習の適用技術についてレビューする。また廃鉱の坑道を用いた地下探査実験について紹介し,今後の研究開発の方向性についても報告する。

  • 松島 潤
    2018 年 71 巻 p. 179-188
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    宇宙線ミュオンを利用した探査(ミュオグラフィ)は測定機器の着実な進化を遂げることにより,その適用先の多様化を図ってきている。今後,さらに様々な分野への適用が期待される中で,石油・天然ガス開発分野への適用性が検討されていくことが予想される。これまで石油・天然ガス開発分野に適用されている密度分布推定手法の体系を改めて整理することにより課題点を抽出し,そのような課題点に対してミュオグラフィがどのように貢献できるかを考察することは,密度情報の信頼性・適用性拡大の視点から重要である。本論説では,石油・天然ガス探査分野において密度情報が提供しうる価値を明確にし,密度分布推定手法の既存体系として中心的役割を成す重力探査と地震探査の進展と現状について技術的進展の視点も含めて概観することにより,それらを踏まえてミュオグラフィが貢献できる領域について展望する。

論文
  • 末永 弘, 田中 宏幸
    2018 年 71 巻 p. 148-160
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    宇宙線ミュオンを用いた密度トモグラフィであるミュオグラフィは,火山やピラミッドといった巨大物体の内部可視化技術として実証されている。しかしながら現行のミュオグラフィは大型のミュオン検出装置を用いており,地下の内部構造を可視化するためには,地下に掘削されたボーリング孔に適用可能な小型化された検層装置を用いてミュオグラフィを実施する必要がある。そこで本研究では,内径10 cm程度のボーリング孔に対応する,ミュオン密度検層装置を開発した。この検層装置は,プラスチックシンチレータをダウンサイジングすることによりミュオンの飛来方向についての角度分解能の向上を図るとともに,ミュオンの飛来する視野を広げるためにプラスチックシンチレータを回動させることができるという特徴を持つ。この検層装置の機能検証を行うため,上方に50 m程度の山体を持つ水平ボーリング孔においてミュオグラフィを実施した。その結果,得られた山体の密度分布は,近傍のボーリング孔から取得されたコア試料を用いた密度の測定値と概ね整合的な値となり,検層装置の適用性が明らかとなった。また,今後大深度のボーリング孔においてミュオグラフィを実施する場合の適用先について議論し,石油・天然ガス資源開発,CO2地中貯留,メタンハイドレート,エネルギー貯蔵,圧縮空気貯蔵,地熱発電への適用可能性を示した。

  • László Oláh, Gergő Hamar, Shinichi Miyamoto, Hiroyuki K. M. Tanaka, De ...
    2018 年 71 巻 p. 161-168
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    Muography is an emerging visualization technique for inspection of large-sized objects with the measurement of the absorption rate of cosmic-ray muons. Present paper introduces the first prototype of a Multi-Wire-Proportional-Camber (MWPC)-based borehole detector. The designed tracking system is based on the so-called Close Cathode Chamber (CCC) concept, which provides easily handling and robust detectors. The 18-cm-length detector is covering a sensitive area of 20 cm × 32 cm and an angular acceptance up to 60 deg with close to full tracking efficiency (99 %), reasonable position resolution of 1.8 mm and angular resolution of 10 mrad. The detector has been tested inside a shallow shaft and an underground iron pillar with concrete basement has successfully been imaged with the resolution of 15 cm within 15 days, which indicates the future industrial usage of MWPC detectors and encourages the application oriented development of this technology for borehole-based muography.

  • 金 政浩, 永田 悠太, 小森 智博
    2018 年 71 巻 p. 169-178
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    近年,宇宙線ミュオンの高い透過力を活かして,巨大な対象の内部構造をイメージング(ミュオグラフィ)する技術が活発に開発されてきている。具体的な対象としては,火山やピラミッドなどが挙げられ,前者は噴火機構の解明や防災のため,後者は新たな空洞の探索を通した考古学的研究のために大きな成果を挙げている。我々のグループでは,このミュオグラフィ技術を小・中規模なインフラ設備の内部探査に拡張することを目的として研究を推進している。今回は,我々の開発した検出器の構成と性能を紹介し,それを用いたインフラ設備の測定例を示し,今後の実用化について議論する。

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