尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編
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52 巻
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  • 田中 將之
    2020 年 52 巻 p. 1-11
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    「総合的な学習の時間」は21世紀を展望した教育として導入された経緯を持ち,我が国の 小・中・高等学校では必修とされている。しかし高等学校段階に於いては,学校間で実施状況に大きな差があるという現場の意見を聞くことがある。本研究の目的は質問紙法による調査を実施することで「総合的な学習の時間」の実施状況を把握し,その内容を検討することにあった。調査の結果,西日本の高等学校の方が東日本の高等学校よりも,学習指導要領が掲げる目標に沿った実践が行われているとの示唆が得られた。また大学生は「総合的な学習の時間」において,「自分で課題を見付け,自ら学び,問題を解決をしていく能力を育成する学習」を行うことを最も求めていることが明らかになった。
  • 指導法のあり様をめぐって
    生野 金三
    2020 年 52 巻 p. 13-24
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,2017(平成29)年改訂の『幼稚園教育要領』と2008(平成20)年改訂の『幼稚園教育要領』との対比を試みた。それを基に領域「環境」の「ねらい」及び「内容」の特徴を,「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」との関りより探った。このことを踏まえて,領域「環境」の指導法,つまり「七夕飾り」という単元を取り上げ指導法について考察を加えた。
  • 学習指導案の修正をとおして
    生野 金三, 伊澤 永修
    2020 年 52 巻 p. 25-36
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,授業科目「教育の技術と方法」において,学生が学習指導案を作成し,その振り返りを通して教員としての資質・能力がどのように高まったのかを探った。学生は,授業づくり(学習指導案の作成),模擬授業,そしてその振り返りを通して,「児童の立場」と「教師の立場」とを重ね合わせて授業を構想することの重要性に気付いている。つまり,児 童観を踏まえた教材観,指導観等の授業観の育ちの一端が認められる。そしてこの資質・能力の向上は,授業改善に結び付くものである。
  • 教員養成を主たる目的とする学部学科における「教職実践演習」とカリキュラム全体との関係への試論
    生野 金三, 高木 史人, 香田 健治, 湯川 雅紀
    2020 年 52 巻 p. 37-60
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    「教職実践演習」は,教員養成課程を選択した学生が最後に学習する科目である。学生が今までの学習において十分な学習成果が得られなかった部分を自覚させようとする目的を,この科目は持っている。そうしてこの弱点の克服を各学生がめざすものである。しかしこの科目は,2010年から施行された新しい科目であるために,今まで十分にその位置づけが議論されて来なかった。学生が教員養成課程で学んできて,十分に学習できなかった部分を知り,その学力不足の部分を補うために,どうしたらよいか。そこで,この科目が教員養成課程全体の中でどのような意義を持ち,どのような教育方法をとるのが良いかを明らかにしようと,この研究で我々は試みた。我々の結論は次のとおりである。この授業で重要なのは,教育方法をいくつか組み合わせて使用すること(トライアンギュレーション)である。我々はこの方法を知識の三角測量と呼ぶことにしよう。あるいは,Claude Lévi-Strauss が使い始めた術語に従って,我々はこの方法をブリコラージュと呼ぶことにしよう(これらを総合的に駆使しながら,さらに教職実践演習と研究演習とが車軸の両輪のごとく連関し合う方法を探るのが効果的であろうと考える)。
  • 保育要領及び幼稚園教育要領にみる「社会」と「自然」に注目して
    二子石 諒太
    2020 年 52 巻 p. 61-75
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,領域「環境」が新設されるまでの過程において自然と社会はどのように捉えられ,どのような意味内容をもっていたのかについて考察することである。その結果,社会は規範意識や道徳心,公共心といった個人や集団の内面的価値観から経済・産業への志向がみられた。自然は幼児の生活の場から,科学的思考のための教材という意味内容の変化があり,今日の領域「環境」へと編集・継承されていることが明らかになった。
  • 生野 金三, 安村 由希子, 本吉 菜つみ
    2020 年 52 巻 p. 77-88
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,教育課程という用語と学習指導要領との関わり,2017(平成29)年に改訂された学習指導要領の経緯及びその基本方針について触れた。これらのことを踏まえ,特別支援教育における教育課程の編成の共通的事項を探り,そして重複障害者等に関する教育課程の弾力的な編成についても整理した。
  • 明治期の熊本
    森 みゆき
    2020 年 52 巻 p. 89-100
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    明治20年代以降に,それまで軍楽隊が行っていた学校行事や地域の祝祭行事等の要請が急増したことにより,民間による楽隊が設立し全国的に広まった。民間楽隊に関する従来の研究は東京と関西が中心であり,地方都市を対象とした研究の必要性から筆者は九州日日新聞(21年から45年)における西洋音楽関連記事調査(約4500件)を基に,熊本での楽隊成立の動向を検証した。成果として,民間楽隊の種類(市町村名のついた楽隊,学校楽隊,青年団による楽隊,商店楽隊,芸妓楽隊,孤児院楽隊)と特徴等が明らかになった。さらに,その地域に初めて設立した楽隊は市町村名がついた名称になっており,設立までの経緯,設立に関わる経済的・社会的支援の構図が浮かび上がった。特に,民間楽隊設立初期には,楽隊としての営利を求める自主的な経営という要素は薄く,地域の経済的・社会的な有力者等の支援のもとに,地域ひいては国家のための行事を支える市民団体のような性格を有していたことが明らかになった。
  • マタニティウエア市場の現状と課題
    小松 美和子
    2020 年 52 巻 p. 101-111
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    2003年,就労女性の妊娠期の生活に関する調査を実施し,得られた知見を元に安全性と機能性とファッション性を兼ね備えたマタニティウエアの提案を行った。そして現在,マタニティウエア市場は大きく変容し,ワンピース形式など種類も豊富であり,妊娠前とファッションの嗜好を変えずに衣生活を送ることができるように見える。その一方で,快適性や安全性について考慮されていないウエアも見受けられる。そこで改めてマタニティウエアの研究を進める必要性があると考え,研究に着手した。今回は,マタニティウエアの市場と市販ウエアの現状と課題について報告する。
  • 管理職に至るまでの「鍵となる出来事」とは何か
    所 吉彦, 徳永 彩子
    2020 年 52 巻 p. 113-120
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    ILO によれば我が国の女性管理職比率は12%とG7最下位である。そこで本研究は女性が管理職に至るまでの「鍵となる出来事」を探ること,今後の調査への示唆を目的とした。東証1部上場企業女性管理職10名を対象とした半構造化面接を実施した。分析は前回研究と異なるM-GTA 法を用いた。その結果,「鍵」には5カテゴリーが存在することが再度確認された。また,「鍵」カテゴリーの継続修正,初級管理職の「鍵」データ蓄積が必要であることが分かった。
  • Crane の Maggie: A Girl of the Streets と比較しながら
    田口 誠一
    2020 年 52 巻 p. 121-133
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    セオドア・ドライサーは『シスター・キャリー』や『アメリカの悲劇』などの小説を書いたアメリカ自然主義作家として有名である。ドライサーは『自由,その他の短編』や『鎖』といった2つの短編集も出しているが, 短編作家としてのドライサーは一般的にあまり高い評価を受けていない。「聖域」は『鎖』に収録された短編の一つである。「聖域」とアメリカ自然主義の先駆的作品であるスティーヴン・クレインの『街の女マギー』には際立った類似性がある。両作品ともニューヨークのスラムを舞台にしており,主人公のマドレーンとマギーは花に喩えられ,派手な服装の若者に誘惑されたのち売春婦になる。 この論文では「聖域」と『街の女マギー』を比較しながら,「聖域」の作品評価をするとともに,ドライサーの文学におけるその重要性を考察する。
  • 教育用表現リストの選定を中心に
    中川 明夫
    2020 年 52 巻 p. 135-156
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    慣用表現は,伝達力と感化力を兼ね備えた表現である。その中でもNV 型慣用表現はもっとも数が多く, 各種辞典や教育教材に数多く掲載されている。実際の言語生活では複数の類義語を有する語形が使用される傾向が強い。しかし,このような語形が掲載された資料は稀であり, 韓国語教育用の資料としては十分ではない。本稿は,「語形- 考え- 対象= 限定的」の関係を慣用表現の構造1, 類義語の有無によって分類される4種類のパターンを構造2とし,これらの構造をもってNV 型慣用表現の定義とした。その上で, 15種類の教育用資料に最も頻度が高く掲載されている91項目を韓国語教育用の表現として選定した。
  • 山川 仁子, 天野 成昭
    2020 年 52 巻 p. 157-167
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    非日本語母語話者が発声した日本語音声の自然性に関わる音響特徴を明らかにすることを目的とし,日本語,中国語(台湾語),韓国語,タイ語,ベトナム語, フランス語を母語とする話者各10名が発声した日本語単語を,日本語母語話者22名に呈示し,発声の正誤判定および自然性の5段階評価を行わせた。発声が正しいと判断された単語の各母音について,単語全体に対する相対時間長,相対強度, 相対基本周波数を求め,これらを独立変数とし,自然性評価値を従属変数とする重回帰分析を行ったところ,母語による相異はあるものの,語頭または語末の母音の相対時間長および相対基本周波数において標準偏回帰係数の絶対値が大きかった。従って非日本語母語話者が発声した日本語音声の自然性に相対時間長および相対基本周波数が関与していることが示唆される。
報告
  • 三浦 知志
    2020 年 52 巻 p. 169-209
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー
    ジョージ・マクマナス作「親爺教育」は20世紀アメリカで最も知名度のあるマンガのひとつである。このマンガは1913年から,ウィリアム・ハースト率いるシンジケート,スター・カンパニーによって配信され,アメリカの人々はこのマンガを地元の新聞で読むことができた。しかしながら,このマンガが配信されたときの実際の状況についてはほとんど明らかに なっていない。本稿は,アメリカ議会図書館が公開している新聞のデジタル資料を調査することを通して,1913~14年にこのマンガが実際どのように配信されていたのかを明らかにする。調査結果は,このマンガの各エピソードがいつどこで掲載されたのかを示している。さらに本稿では,「親爺教育」の舞台化に関する当時の新聞広告や記事を紹介することによって,このマンガが当時の人々にどのように受容されていたのかを検討する。本調査は「親爺教育」のより包括的な理解のための出発点であり,とりわけ日本語版「親爺教育」との比較文化論にとって必要である。
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