セオドア・ドライサーは『シスター・キャリー』や『アメリカの悲劇』などの小説を書いたアメリカ自然主義作家として有名である。ドライサーは『自由,その他の短編』や『鎖』といった2つの短編集も出しているが, 短編作家としてのドライサーは一般的にあまり高い評価を受けていない。「聖域」は『鎖』に収録された短編の一つである。「聖域」とアメリカ自然主義の先駆的作品であるスティーヴン・クレインの『街の女マギー』には際立った類似性がある。両作品ともニューヨークのスラムを舞台にしており,主人公のマドレーンとマギーは花に喩えられ,派手な服装の若者に誘惑されたのち売春婦になる。
この論文では「聖域」と『街の女マギー』を比較しながら,「聖域」の作品評価をするとともに,ドライサーの文学におけるその重要性を考察する。
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