本研究は,芳香族性のナノカーボン材料の表面に対するアミノ酸の結合自由エネルギーをもとに,アロマフィリシティ・インデックス(芳香族親和性指標)というアミノ酸の新指標を提案する.一般に,ナノ材料のバイオテクノロジー応用において,ナノ材料とタンパク質の非特異的な相互作用は,材料の性能や物性に影響を与える重要な因子となる.ナノ材料とタンパク質の相互作用は本質的に熱力学に従うため,これらの相互作用を理論的に理解・予測するには,自由エネルギーのような熱力学的な量を決定することが有効である.本研究は,分子動力学シミュレーションを使用して,カーボンナノチューブやグラフェンといった芳香族性のナノカーボン材料に対するアミノ酸(20種類)の結合自由エネルギーを決定した.結合自由エネルギーを規格化することで,アミノ酸のアロマフィリシティ・インデックスを定義した.本指標は,実験結果とよく相関しており,芳香族性の界面や溶質とタンパク質の相互作用をアミノ酸レベルで理解・予測する上で有用なものとなるだろう.なお,本内容はACS Appl. Nano Mater. 4, 2486–2495 (2021)で報告したものである.(Reprinted with permission from ref. 1. Copyright 2021 American Chemical Society. Further permissions related to the material excerpted should be directed to American Chemical Society).
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