縮合リン酸塩とフィチン酸による生体微量元素の吸収, 代謝への影響を検討し, 特に鉄欠乏性貧血との関係を追求した。
1)ポリリン酸, フィチン酸両物質の摂取により体重増加がわずかに抑制されたが, 臓器重量には顕著な影響が認められなかった。
2)血液性状では, ヘモグロビン量が両物質の摂取により有意に低下したが, 鉄欠乏食を摂取した群ほど顕著な低下は認められなかった。
3)微量元素の糞中排泄量については, フィチン酸を摂取した群でFeの排泄量が増加した。またFeの消化管吸収率も対照群と比較して明らかに低下していた。しかし, Cu, Mn, Zn, MgおよびCaの糞中排泄量は実験期間中大きな変動は認められなかった。
4)臓器, 組織内微量元素量にたいする両物質の影響では, フィチン酸の摂取により肝と脾のFe含量が鉄欠乏食群と同程度にまで低下しており, またポリリン酸の摂取によっても肝, 脾および骨で有意に減少した。Cu, Mn, ZnおよびMg含量については, Fe含量ほど明らかな変動は認められなかった。しかし, ポリリン酸を摂取した群の腎に顕著なCa沈着が認められた。
抄録全体を表示