生活経済学研究
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論文
  • 水落 正明
    2020 年 52 巻 p. 1-18
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    学校から仕事への移行過程が、その後の仕事からの成果に与える影響は、わが国において非常に大きいものとなっている。そこで本稿では「平成24年就業構造基本調査」(総務省)の個票情報を使い、学校卒業時の就業状態がその後の労働収入に与える影響について分析を行った。過去の就業状態と現在の収入の内生性に対処するために、操作変数法を用いて因果推定を行った。15〜39歳の男性を使った推定からは、学卒時に正規職に就けなかった場合、正規職に就けた場合に比べて60%程度、労働収入が低くなることが明らかになった。この負の影響は、就業状態間の単純な比較および最小二乗法による推定結果に比べてかなり大きなものとなった。さらに、正規職に就けた場合に比べて、無職だった場合には60%程度労働収入が低く、非正規に就いた場合には有意な差がないこともあきらかになった。これらの結果は、学卒時に正規職に就けない場合には不利な影響をもたらすが、非正規に就くことは、その後の労働収入、キャリア形成という観点からは有効であると言える。
  • 平均と分散・変動と安定に着目して
    真鍋, 島, 遠藤
    2020 年 52 巻 p. 19-32
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、大学教育投資の成功の陰に潜む失敗の可能性について検証する事である。我々は、標準的な地方私立大学における4学部3ヵ年分の就職先データを用いて、当該大学卒業者の期待生涯賃金及び期待教育投資収益率を推計し、その値の平均と分散の変動、安定性に着目した分析を行った。 主要な知見は以下の通り。(1)就職状況及び期待生涯賃金・期待収益率について学部別に見た場合、該当学生数が少ない学部においては変動が大きくなるものの、大学計で見た場合、結果は安定的である。(2)標準的な地方私立大学における大学教育投資収益率は、「平均」的には全国大卒者計の数値を若干下回るものの一定の投資効果が期待できる。(3)ただし、その分散(ちらばり)について見た場合、全体の4割強において大卒平均を上回る投資効果が確認される一方で、2割前後の投資失敗者が存在する。 さらに、知見から得られる含意は以下の通りである。(1)政策的観点からは、大学教育投資の重要性とともに投資の失敗の可能性を常に明確にし、こうしたエビデンスのより広範囲・強固な基盤を作成していく事が必要である。(2)経営的観点からは、自大学における大学教育投資の「平均」的な効果とともに失敗の可能性を含めたエビデンスに関するIRの推進が期待される。
  • 近藤 智
    2020 年 52 巻 p. 33-48
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、我が国では地域間格差の問題が深刻化している。この問題がどのような構造を伴って生じているかについての多角的な研究が求められている。 こうした問題意識から出発した本稿では、まず全国203経済圏について産業構造を基にした階層的クラスター分析をおこない、それらを8地域に分類し地図上に表した。これにより各地域における地理的特性を含めた経済特性が明らかになり、続けて「首都圏集中」や「地方消滅」などの地域経済課題についての分析をおこなっている。
  • 尾島 雅夫
    2020 年 52 巻 p. 49-62
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    新規開業者の業績が安定化するには時間を要することが多い。期待した売り上げが得られなければようやく開業した事業を短期間で廃業することにつながり、開業者へはもちろん地域経済へもマイナスの影響を与えることなる。こうした開業者の心配事に対して、開業にこぎつけるまでサポートしてきた金融機関は、引き続いて開業後も事業者に対して支援ができているか、金融機関の支援の有効性を雇用成長面において捉えるため定量分析をおこなった。分析手法として雇用成長率と金融機関借入には内生性の問題があることを考慮して2SLSを用いた。 得られた結果によると、民間金融機関と日本政策金融公庫の両者から併用して借入れている開業者の雇用成長率は時間経過とともに増加していることがわかった。新規開業を達成した後も金融機関と事業者の関係性が維持され、民間金融機関と日本政策金融公庫の金融支援が補完されることにより雇用へプラス効果をもたらしていることを示唆している。一方、民間金融機関のみ借入れている開業先や日本公庫だけから借入れている開業者と雇用成長との関係性は見られなかった。
  • 佐々木 昇一
    2020 年 52 巻 p. 63-78
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、日本においてどのようなワーク・ライフ・バランス(WLB)制度を持つ企業においてそれらの制度を社員が使用した場合に昇進を遅らせる期間にどのような影響を与えるのか、また、どのようなWLB制度を利用した社員の昇進の程度にどのような影響を与えるのか、という2つのリサーチ・クエスチョンを設定し実証的に検証した。   その結果、職場(上司や同僚)の協力確保、男性の育児休業取得促進を行っている企業は、育児休業取得に伴う昇進の遅れ期間が長引かせないという結果を得た。WLB制度の利用と昇進程度との関係では、男性において6カ月から1年以内の育児休業取得が昇進程度を有意に高める効果があり、反対に女性の場合は、その期間の育児休業取得が昇進程度を有意に低下させる効果があることが分かった。また、くるみんマークの認定は昇進の遅れを長引かせない効果を持ち、効果的に機能している。 これらのことから、政策的には、男性の育児休業を普及させるには、比較的短期間の育児休業を普及促進することが有効であり、女性の場合には、女性の役職登用も並行して推進する必要があることが言える。
  • 岩本 朋大
    2020 年 52 巻 p. 79-100
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    都市や地域を結ぶ交通網は年々改善している。空間経済学の理論では輸送コストの低下は人口集積を招くとする。したがってそのような改善は人口移動を誘発させていると考えられる。本稿では航空・鉄道・バス・自家用車による移動時間の改善が地域間人口移動を増加させるのかを都道府県間平均移動時間のデータを用いてグラビティモデルの手法で分析する。 分析の結果、航空と鉄道での移動時間の短縮が人口流出を加速させることが確認された。さらに若年者の人口移動に限り分析を行うと、航空と鉄道での移動時間の短縮は人口流出を増加させ、さらにバスでの移動時間の短縮も人口流出を増加させる傾向を確認した。
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