新規均一系触媒樹脂として,高圧法 LDPE と同等の成形性を有するエチレン α-オレフィン直鎖状ポリエチレン (LLDPE) を開発した.この優れた成形性を有する樹脂 (HPP) は均一系触媒およびプロセス技術から構成され,拘束幾何型触媒 (CGC) 技術により製造される.この技術はポリオレフィンプラストマー(POP),エンハンストポリエチレン(EPE),ポリオレフィンエラストマー(POE)の商業的な成功からも優れていることが実証されている.長鎖分岐,短鎖分岐度分布,分子量分布を考慮した樹脂設計および製品の要求に見合った樹脂設計が可能である.優れた成形性を有する HPP は,押出性能とフィルム性能を特徴とする数種のグレードに分けられる.CGC 技術は長鎖分岐量や分子量分布の制御が可能なので,物性を維持しながら,溶融張力が制御できる.そのため高圧法 LDPE が有する押出性能やバブルの安定性などの成形性を付与することができる.分子鎖当たり 3~7 個の長鎖分岐を有し,平均 200~300 Cの分岐長さである.また,コモノマー種はオクテンであり,均一に分岐を導入することにより,タイ分子生成量を増やし,物性の向上を図ることが可能である. HPP は CGC 技術で製造した樹脂で,Six-Days Model と名づけた物性予測モデルを使っている.6 日間で,要求特性の入力から樹脂構造設計,最良な製造プロセス選定を経て,グレード開発ができる.このモデルを用いることにより,統一されたデータベースを世界中からアクセスでき,トライアンドエラーをなくし,研究は新モデルの構築に集中できるといったメリットがある.高圧法 LDPE のマーケットは大きく,EPE や POP の開発技術を通して高圧法 LDPE と同等の成形性を有したエチレン α-オレフィン LLDPE(HPP) グレードを開発した.具体的には, HPP-FAMILY # 1 は機械特性が従来の Ziegler-Natta 触媒 C8-LLDPE グレードと同等で押出性能に特徴を有する.なお,高圧法 LDPE のブレンドは不要である. HPP-FAMILY # 2 は高圧法 LDPE 並の光学特性と押出特性,バブル安定性を有し,高圧法 LDPE に比べ力学特性が良好なグレードである. HPP-FAMILY # 3 は高圧法 LDPE 並の押出特性とバブル安定性を有し,従来のZ iegler-Natta 触媒 C8-LLDPE グレード 並の機械特性と光学特性を有するグレードである.(要約 : 出光石油化学(株) 応用研究所 金井俊孝)
平たいフィルムやシートの共押出は多層の樹脂溶融体を一つのダイから同時に押出す成形法であり,異なる樹脂を選んで組み合わせることにより特徴ある製品を提供するための重要なアプローチの一つである.大別すると,複数の溶融体をダイの外で合わせるとき使用する manifold diesと,ダイのキャビティの中で接触させるとき使用するfeedblook diesがある.feedblock diesの場合は層の厚さが不均一になったり,界面の状態が不安定になる問題があって多くの関心をひき,研究論文も多い.最近の実験やコンピューターの計算結果によれば,層の厚さの不均一性 (一つの溶融体が他の溶融体を包み込む現象と関係することが多いが) は樹脂溶融体の粘度,流速比,ダイの形,および応力の相違が影響する.界面における不安定性も同じ要因が影響するが,弾性の影響(elastic contributions)はよくわかっていない.この文献はflat die coextrusionでの樹脂挙動の予測における最近の進歩を振り返ってまとめたものである.(要約 : 日本電気㈱ 松浦恂一)