溶融紡糸直後に接触式の冷却引取りロールを設置し,未延伸繊維の結晶化を制御して延伸を行なう新しいDSDプロセス(I-DSD)を考案した.前報では冷却引取りロールの設置による未延伸繊維の構造や延伸性に及ぼす影響について検討した.本報では,I-DSDプロセス,従来型のDSDプロセス(C-DSD),そして紡糸と延伸をオフラインで行うプロセス(OFD)の各プロセスで得られた繊維の構造を調べた.その結果,同じ延伸倍率で比較すると,C-DSDプロセスと他の2つのプロセスで得られた繊維の構造には大きな差があった.つまり,C-DSDプロセスの繊維は他のプロセスに比べて結晶化度,複屈折とも高かった.一方,繊維の融点は,OFDプロセスが最も高く,次にI-DSDプロセス,そしてC-DSDプロセスのものは最も低かった.この結果は長周期の傾向と一致し,繊維の融点が低いものほど長周期は小さかった.また,繊維の破断強度は,同じ延伸倍率で比べるとC-DSDプロセスの繊維が最も高かったものの,延伸倍率3~4倍程度にしか高められないために0.30GPa程度にとどまっていた.それに対して,I-DSDプロセスではOFDプロセスと同様に延伸倍率を9倍程度に高められるため,0.51GPa程度の高い破断強度の繊維が得られた.
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