3群 (CA群: 4±1℃で4週間以上飼育した寒冷適応群, CT群: 22±2℃で4週以上飼育した対照群, NE群: 0.4mg・kg
-1のl-norepinephrine (NE) を毎日1回4週間以上皮下注射した群) のWistar系雄ラットを, 無麻酔下で1匹つつ直接熱量計に閉鎖し十分熱的平衡がえられてから, 生理食塩液に溶かしたNE0.4mg・kg
-1を皮下に注射し, その後の心拍数 (HR) , 熱産生量 (M) , 熱放散量 (HL) , 結腸温 (Tcol) の変化を連続的に測定した。熱量計壁温 (Tw) 14℃では, 安静時CA群のM, HL, TcolはいつれもCT群より高かったが, HRは逆に有意に低かった。このCA群では, NE投与後M, Tcolの増加がおこるのに反し, CT群では逆に減少がおきた。HRも, CA群ではNE投与直後僅かに減少するものの, やがて安静時の値に近いレベルまで回復するが, CT群では有意に減少し, その低い値を維持した。Tw25℃下では, CA, CT両群ともに, NE投与後M, Tcolが増加, HRの減少は両群ほぼ同程度で, かつ僅少であった。繰り返しNE投与ラットでは-NEの昇圧反応が減弱し, Tw14℃下でもCT群でみられたごときM, Tcolの著明な低下は認められなかった。以上の結果から, 動脈壁圧受容器反射の正常に作動する無麻酔下では, NEはCTラットで強い昇圧返応とそれに応ずる反射徐脈, その結果の心拍出量の著減をおこすと思われる。この心拍出量減少は, 末稍熱産生臓器の代謝のlimitingfactorの一つとして働き, M, Tcolの低下をおこすが, CA群ラットでは, 末梢熱産生臓器の代謝率の亢進と平行して, この圧受容反射の減弱あるいは昇圧反応そのものの減退がおき, NE投与後も十分な組織へのエネルギー基質の供給が維持されるため, 高いM, Tcolが維持されると考えられ, 末梢血管平滑筋レベルでのα-adrenergic recepterの感受性減少も一部関与するとの結論をえた。
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