日本生気象学会雑誌
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22 巻, 2 号
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  • 中越 信和
    1985 年 22 巻 2 号 p. 55-65
    発行日: 1985/10/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    中国山地比婆山の冷温帯林域で, 適湿な7個の植物群落の構成種の生産植物季節と再生産植物季節を調査し, 動的植生学の立場から調査結果を考察した.
    植物季節の観察は1976年3月から12月までの期間に合計23回行った.観察記録: をまとめて, 植物季節を以下のように区分した.
    生産植物季節: (1) 萌芽期 (木本植物のみ) , (2) 展葉期, (3) 光合成期, (4) 紅葉・落葉期.
    再生産植物季節: (1) 前開花期 (花芽の連続的膨潤から開花直前まで) , (2) 開花期, (3) 未熟果期, (4) 果期・種子散布期.花序の満開から果実の大半の完熟までは熟果期間 (Fl。Fr期) として定義した.
    上記の方法による各植物季節相を, 全群落の113種 (チマキザサとネザサを除く種子植物すべて) において, 種別に植物季節スペクトルとして描き出した.この植物季節スペクトルによって, 群落別の光合成期の長さ, 熟果期間の長さ, 開花の特性, 結実の特性, および成熟した植物種群中の結実率を, それぞれ各群落間の生態学的な比較をするためにまとめた.また群落内の光環境を知る目的で, 相対照度を測定した.
    極相林のブナークロモジ群落への2次遷移系列において, 順に群落の光合成期の長期化が認められた.2次林やマント群落の構成種は比較的長い熟果期間を持っていた.開花と結実の特性では, 両方とも極相林への遷移に従って収敷していく傾向があった.林床の暗い群落では, 成熟した植物種群中の結実率が減少していた.これは群落内の日射量が不足しているためだと推察された.以上のように, 各植物群落はその群落が置かれている生態学的状況を反映した固有の植物季節を有していることが判明した.
  • 白倉 卓夫
    1985 年 22 巻 2 号 p. 67-71
    発行日: 1985/10/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    日本の中央部, 白根火山の裾野に位置する草津には, “時間湯”と称される伝統的な入浴がある.これは強酸性泉を用いる, 47ないし48℃の高温泉浴の一種である.300年以上にわたり, 種々の疾患をもつ多くの患者が草津を訪れ, 時間湯を行ってきた.これら患者の大多数は, 湿疹, 皮膚炎, 乾癬を含む皮膚疾患である.
    本研究の目的は, この時間湯を用いる温泉療法の, 健康人と乾癬症患者に及ぼす免疫学的作用を明らかにすることにある.
    全対象に1日3回, 連続3週間にわたり時間湯を行った.そして, 7人の健康人と3人の乾癬症例において, 免疫学的指標としてのT細胞サブセットとPHAやCon Aに対する反応性を検討した.結果はつぎのとおりである.
    1) 末梢血リンパ球数は健康対象で, 時間湯後明らかに減少し, 一方, 乾癬症例では同じ泉浴後, 明らかに正常レベルに増加した.
    2) 前者では, T細胞総数は時間湯後, 明らかに減少, ヘルパーT細胞も有意に減少, したがって, OKT4/OKT8比の軽度の減少傾向がみられた.後者では, 時間湯前, T細胞, ヘルパーT細胞の減少がみられた.これらの諸値は時間湯後, 乾癬症皮膚病変の改善とともに正常レベルに増加した.
    3) 前者において検討したPHAやCon Aに対する反応性は, とくに時間湯前後に有意の変化はみられなかった.
    健康成人で時間湯後, T細胞とくにそのうちヘルパーT細胞の減少がみられた原因や, その生理的意義はなお明らかではない.一方乾癬症例では, 程度の差はあれ, 皮膚病変の改善が時間湯後観察され, また浴前減少していたヘルパーT細胞の正常化がみられたが, この一種の高温浴療法が皮膚病変の改善をもたらした可能性があり, それとともに局所病変部に偏在していたヘルパーT細胞の血中への復帰が想定される.症例数が少ないので, 今後の検討成績に待つ必要がある.
  • 樫村 修生
    1985 年 22 巻 2 号 p. 73-81
    発行日: 1985/10/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究は, 体育専攻男子学生5名について, 気温20℃, 25℃, 30℃, 気流ほぼ無風0.1m/sと有風5.0m/s, 相対湿度60%の環境下, 自転車エルゴメータで50%VO2maxの運動を30分間負荷した.そして, 無風時と有風時における生理的反応および温冷感の差異を検討した.結果はつぎのとおりである.
    1) 有風下運動時の心拍数の増加は, 無風下運動時のそれより少なかった.両者の差は, 気温の低下に伴い大となった.
    2) 気温20℃有風下運動時の直腸温上昇の度合は, 無風下のそれに比較し, 少ない傾向にあった.
    3) 運動時の温冷感と直腸温との間には, 正の相関関係があった.
    4) 気温20℃および25℃において, 局所発汗量と総発汗量の増加の度合は, 気流により減少した.
    5) 温熱性の局所発汗の時期は, 無風時・有風時の両方において温冷感の「すこしあたたかい」に相当した.
  • 高野 健人, 本間 健, 本橋 豊, 小林 康人, 山田 邦雄
    1985 年 22 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 1985/10/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    Histological changes were examined in the brown adipose tissue (BAT) of the coldacclimated rats on the 1 st, 3 rd, 7 th, and 14 th day after streptozotocin (STZ) treatment to investigate the effect of insulin deficiency on BAT cells. The staining techniques employed in the present study consisted of hematoxylin-eosin, oil red O, Sudan BB, and silver impregnation. Plasma insulin levels were measured by immuno-reactive assay. The damage of β cells in islets of Langerhans were evaluated by histological examinations. The results showed that a marked accumulation of neutral fat in BAT cells was observed on the 1 st, 3 rd, and 7 th day after STZ treatment. On the 3 rd diabetic day, the degree of fat deposit was the most remarkable. However, such fat accumulation was not observed on the 14 th day after STZ treatment. Plasma insulin levels were constantly low through the experimental period after STZ treatment.
  • 綿貫 勝, 飯塚 平吉郎, 堀 清記
    1985 年 22 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 1985/10/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    左手を-10℃の寒気に30分間曝露した場合と左手中指を30分間氷水浸漬した場合との寒冷血管反応との違いを比較検討して, つぎの結果を得た.
    1.寒気曝露実験と氷水浸漬実験との寒冷血管反応は全体としては類似した結果を示したが, 寒気曝露実験の方が氷水浸漬実験よりも各測定項目で個人差が大きく現れた.
    2.両実験とも寒冷血管反応発現温度が高いほど, 寒冷血管反応発現時間が短い傾向を示した.
    3.寒冷血管反応発現温度および曝露時平均皮膚温は, 寒気曝露実験の方が氷水浸漬実験に比べて高く, 個人差が大きかった.寒気曝露実験では曝露時平均皮膚温は15℃以上の群と15℃以下の群に分れた.
    4.寒気曝露は冷水浸漬と比較して寒冷負荷がより軽く, 寒冷痛の訴えも少なく, また個人差も大きく現れるので, 人の寒冷血管反応をより詳細に検討できる測定法として有用な方法と思われる.
  • 綿貫 勝, 飯塚 平吉郎, 堀 清記
    1985 年 22 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 1985/10/15
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    同一被験者を用いて, 左手を-10℃の寒気に曝露する方法で春, 夏, 秋, 冬の寒冷血管反応を測定し, つぎの結果を得た.
    1.夏は寒冷血管反応発現温度, 曝露時平均皮膚温および最低温がもっとも高く, 冬は逆にもっとも低い値であった.
    2.寒冷血管反応発現時間については, 季節間に有意な差はみられなかった.
    3.曝露前皮膚温が高い場合は, 曝露時平均皮膚温が高く, 曝露前皮膚温が同じ場合には, 夏の寒冷血管反応発現温度と曝露時平均皮膚温は他の季節より高く, 冬はとくに低い値を示した.
    4.平均皮膚温が15℃以下になると寒冷痛が現れ, その程度は曝露時平均皮膚温が低いほど強く, その発現頻度は冬がもっとも大きく, 夏がもっとも小さかった.
    5.寒冷血管反応の結果は, 夏>秋>春>冬の順で, より詳細に得ることができた.
  • 福岡 義隆
    1985 年 22 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 1985/10/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    瀬戸内地域は, 平均値気候学の立場からは温和な気候を示す地域と考えられている.しかし実際には, 時折, 太平洋側や日本海側よりも夏に蒸し暑く冬に寒いことがある.とくに夏の夕凪は西日本で非常に有名で, かなり暑く, 心理的にも蒸し暑いと思われやすい.
    著者は夕凪の蒸し暑さ (YS) を次式のように表現することを試みた.
    YS=P1+P2+P3+P4
    ここに, P1, P2, P3およびP4はそれぞれ, 物理的要因, 人為的な熱汚染, 生理学的気候および心理学的気候を意味する.
    YSは広島, 岡山や他の都市で観測されたような都市温度により強められること, およびYSは明らかに不快指数の時間的変化によって認識されることなどが結論される.
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