温泉・気候医学はともに自然環境と生体との相互関係を研究する医学の一分野である.温泉療法は, 温泉やガスなど天然の地下物質や周囲の気候要素も医療に利用するもので, 実際には温泉浴, 飲泉, 各種の物理療法, 運動などを組み合わせる複合療法として行われる.気候療法は患者が異なった気候の地に転地してその気候刺激を医療に用いるものである.両治療法ともに各治療刺激への直接反応のほか, これら刺激を治療期間中反復負荷することによる生体機能の非特異的トレーニングにより, 適応能や防御能を増加させて疾患の治療や健康維持・増進を図るものである.したがってこの自然療法は, 薬物や手術療法とは作用原理が異なるもので, 両療法はその長短を相い補い, 併用すべきものである.現代のようなストレス社会, 高齢化社会にあってストレスの解消, 成人病予防などはとくに本療法の適応となる.
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