本研究では, 高齢者の暑熱・寒冷下各種体温調節反応が, いかなる要因に影響されるかを明らかにするため, これらの反応と暦年齢 (age) , 体表面積/体重 (Ad/Wt) , 体脂肪率 (%fat) , 体重あたりの最大酸素摂取量 (VO
2max) , 日常歩行量 (PR) との関連性を重回帰分析により検討した.冬季における暑熱暴露 [35℃, 45%rh下での60分間の下肢温浴 (42℃) ] 終了時の直腸温 (T
re) , 総汗量 (M
sw) , M
sw/△T
re, 平均血圧 (MBP) はPR, 大腿の皮膚血流量と皮膚血管コンダクタンスはVO
2max, 平均皮膚温 (T
sk) はage, 大腿総発汗量 (T
msw) はAd/Wtと, それぞれ強く関連した.さらに二次的に, PRがT
skとT
mswに, 暦年齢がM
sw, M
sw/△T
re, MBPに, %fatが三次的にM
sw/△T
reに, それぞれ影響した.夏季の暑熱暴露においても冬季と同様の傾向がみられたが, PRと強く関連する反応項目が減少した.冬季における寒冷 (12℃) への全身暴露 (60分間) 終了時のT
sk, 熱産生量 (M) , 乾性熱放散量 (DHL) , 呼吸性熱放散量 (RHL) , 皮膚コンダクタンスはVO
2max, 心拍数 (HR) はPRと, それぞれ強く関連した.さらに, %fatがT
skとDHLに, Ad/WtがMとRHLに, VO
2maxがHRに, それぞれ二次的に影響した.夏季の寒冷暴露 (17℃) においても冬季と同様の関連傾向がみられた.また, PRは日常の衣服内温度と負の相関を有した.以上のことから, 暑熱・寒冷刺激に対する高齢者の体温調節反応は, 暦年齢や体格にも修飾されるが, 主に日常歩行量や有気的体力に大きく影響されることが明らかにされた.
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