日本生気象学会雑誌
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31 巻, 4 号
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  • 入江 伸, 天本 敏昭, 木村 良司, 田中 孝一, 宮城 研
    1994 年 31 巻 4 号 p. 165-173
    発行日: 1994/12/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    新しい小型軽量の口腔用液晶体温計「MT-II」の臨床試験を実施した.I.MT-IIと水銀体温計を用いて5分間の口腔温測定を行い比較検討した.各測定値の差は, 0.07±0.09℃ (mean±SD, n=186) であり, 各測定値の間には高い相関が認められた (r=0.946, p<0.001, Y=0.938X+0.364, n=186) .従って, MT-IIは水銀体温計と同等の口腔温測定精度をもつといえた.II.同一のMT-IIを反復使用した時の精度について検討した.安定した口腔温測定値が得られ, 非臨床試験でも使用後に劣化は見られなかった.従って, MT-IIは21回以内の繰り返し使用が可能であるといえた.III.MT-IIでの口腔温測定時間を, 180秒, 120秒, 90秒と短縮した場合に, 水銀体温計5分間での測定値と比較した.測定値の差はそれぞれ, 0.11±0.07, 0.15±0.09, 0.19±0.10℃ (mean±SD, n=62) であった.従って, MT-IIは90秒以上の測定で実用上有用な口腔温の指標が得られるといえた.
  • 西山 哲成, 小川 徳雄, 菅屋 潤壹, 鈴木 一乃
    1994 年 31 巻 4 号 p. 175-182
    発行日: 1994/12/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    ビデオマイクロスコープを用いて, 手掌部における個々の汗腺の活動をビデオ録画し, コマ送り再生より個々の汗孔からの汗の拍出タイミングと, また同時に隣接指の相当する部位の発汗量を換気カプセル法により測定した.発汗中枢活動を反映すると考えられる発汗波との関係から個々の汗腺における活動性を調べ, 以下の示唆を得た.個々の汗腺の参加パターンは少量発汗時ではある程度, それぞれの閾値に影響を受けるが, それ以上の発汗量では常に一様ではなく, 閾値の違いだけが個々の汗腺の拍出活動に影響するとはいえない.手掌部における個々の汗腺の活動性は, 数十分の経時変化に伴い動揺することがみられた.これらは, 精神活動の違いによって中枢からの出力を伝える発汗神経―腺単位が異なるためというよりも, 汗腺ないし汗分泌細胞レベルにおいて活動の周期性があるのか, あるいは分泌過程での疲労等によって活動度の消長が現れるのか等の可能性が考えられた.
  • 松田 晋哉, 華表 宏有
    1994 年 31 巻 4 号 p. 183-188
    発行日: 1994/12/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    韓国の人口動態統計を資料として1982年1月から1991年12月の月別出生数の季節変動について古典的な時系列分析の手法を用いて解析を行った.出生数の季節変動は2月の巨大な山と秋 (9月-11月) の小さな山を持つ2峰性のパターンを示した.関連が考えられる要因のうち, 結婚の季節変動について出生の季節変動との関連を分析した.一致度の検定の結果によると, 2つの時系列はその月間の変動に10ヵ月の時差をおいて, 統計学的に有意の一致性を認めた.この結果は韓国においては, 結婚の季節性が出生の季節変動をもたらしている要因の一つであることを示している。しかしながら, 韓国の出生のデータの特徴を説明するためには, 生気象学的要因を含め, その他の要因についてさらに分析されることが必要である.
  • 井上 芳光, 上田 博之, 中尾 美喜夫, 荒木 勉
    1994 年 31 巻 4 号 p. 189-199
    発行日: 1994/12/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究では, 高齢者の暑熱・寒冷下各種体温調節反応が, いかなる要因に影響されるかを明らかにするため, これらの反応と暦年齢 (age) , 体表面積/体重 (Ad/Wt) , 体脂肪率 (%fat) , 体重あたりの最大酸素摂取量 (VO2max) , 日常歩行量 (PR) との関連性を重回帰分析により検討した.冬季における暑熱暴露 [35℃, 45%rh下での60分間の下肢温浴 (42℃) ] 終了時の直腸温 (Tre) , 総汗量 (Msw) , Msw/△Tre, 平均血圧 (MBP) はPR, 大腿の皮膚血流量と皮膚血管コンダクタンスはVO2max, 平均皮膚温 (Tsk) はage, 大腿総発汗量 (Tmsw) はAd/Wtと, それぞれ強く関連した.さらに二次的に, PRがTskとTmswに, 暦年齢がMsw, Msw/△Tre, MBPに, %fatが三次的にMsw/△Treに, それぞれ影響した.夏季の暑熱暴露においても冬季と同様の傾向がみられたが, PRと強く関連する反応項目が減少した.冬季における寒冷 (12℃) への全身暴露 (60分間) 終了時のTsk, 熱産生量 (M) , 乾性熱放散量 (DHL) , 呼吸性熱放散量 (RHL) , 皮膚コンダクタンスはVO2max, 心拍数 (HR) はPRと, それぞれ強く関連した.さらに, %fatがTskとDHLに, Ad/WtがMとRHLに, VO2maxがHRに, それぞれ二次的に影響した.夏季の寒冷暴露 (17℃) においても冬季と同様の関連傾向がみられた.また, PRは日常の衣服内温度と負の相関を有した.以上のことから, 暑熱・寒冷刺激に対する高齢者の体温調節反応は, 暦年齢や体格にも修飾されるが, 主に日常歩行量や有気的体力に大きく影響されることが明らかにされた.
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