日本生気象学会雑誌
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32 巻, 1 号
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  • 入來 正躬
    1995 年 32 巻 1 号 p. 5-6
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    技術の進歩により環境条件の人工的操作や環境創造が可能な現在, 環境の総合的指標の一つとしての死亡率や罹患率は適切でなくなった.これに変わり「アメニティ」が指標の一つとして期待される.アメニティについての問題点として, (1) アメニティは人にとって本当にいいことか, (2) アメニティを決めている因子はなにか, (3) アメニティの評価に適した指標はなにか, の3点がある.
  • 福岡 義隆
    1995 年 32 巻 1 号 p. 7-9
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    アメニティとはなにか.その言語上の定義や環境行政上の慣習などについて述べ, 生気象学においてアメニティと取り組む意義を論考する.次に, このシンポジウムにおいて話題提供された生気象学各分野の概要を紹介した.今回とりあげた分野以外の生気象事象も含め, アメニティの研究は, 結局「真の豊かさ」と「自然愛・人類愛」の追究にあることを強調した.
  • 黒島 晨汎
    1995 年 32 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    生理的適応の観点から環境の快適性として捉えられてきたアメニティamenity (A) について再考する必要のあることを考察した.体温調節における適応の機序, さらに適応獲得のための条件の検討における知見に基づいて, 適応の意義を評価することによって, Aは生体の適応能を発揮する環境すなわち至適環境のなかに捉えられなければならないことを提唱した.
  • 堀 清記
    1995 年 32 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    ヒトが裸体で安静にしているときの中和温域は28℃~32℃である.中和温域では熱産生量と熱放散量は等しく, 環境温が上昇するとき皮膚温は上昇するが, 熱産生量と中枢温は変わらない.環境温に関するアメニティは, 中和温域で温熱的に快適である.ヒトが頻回に暑熱環境に曝露されるか, 運動を行うと暑熱適応が形成され, 暑熱曝露時の発汗量の増加, 汗の塩分濃度の減少, 中枢温上昇および心拍数増加の軽減がみられる.暑熱適応が形成されると高温耐性が向上し, 中和温域, 即ち環境温に関するアメニティの上限温は高くなる.Vo2maxの50%の仕事を30℃, 湿度60%で1日1回30分の運動を2週間行うと, 同じ暑熱負荷に対して, 発汗量の増加は冬から夏にかけての増加量より少し多く, 心拍数増加の抑制の程度は冬から夏への暑熱馴化時よりかなり大きくなる.汗の塩分濃度の減少の程度は季節馴化より小さい.
  • 山下 脩二
    1995 年 32 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本論文は都市気候の立場からアメニティを考えたもので, 先ず始めに気候と都市気候の定義を簡単に述べた.次に地球環境問題の変遷について第2次世界大戦後の変遷を環境行政の課題とともに示した.1990年代は都市・生活環境の創造であり, アメニティの時代ということができる.その結果, 20年前にLandsberg (1973) が提唱したMetutopia (Meteorologically utopian city) を取り上げ, 現代的に考察した.最後にアメニティを都市気候の立場から考察した.理想的には地表面は自然状態に保つことであるが, 都市の存在が人類文明の大前提である.それゆえ, 都市域に郊外の新鮮な空気を取り入れる風の道の考えが提案された.さらに, 水の道, 土の道の概念を都市計画や都市景観に活かすべきことが提案された.具体的には前橋市の例が提示された。
  • 堀越 哲美
    1995 年 32 巻 1 号 p. 27-28
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    見えないアメニティ, すなわち, ものよりは空間, 環境, そして人間を中心に考えるべきである.建築物のような人工的な環境の中に身をおくことは, 人体や心にとっての快適性が必ずしも実現されているとは言えない.アメニティは, エネルギー消費を抑えた, 自然に適合した環境創りの中にある.
  • 篠原 道正
    1995 年 32 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    竪穴住居, 江戸時代中期の農家, 断熱機密化住宅その他の室内外の温度測定結果を用いて調和分析を行った.その結果から外気温度の室内への影響は時代の経過と共に小さくなってきていることを示した.最近の建物では温熱環境に充分な工夫がなされるようになってきているが, 機密化, 断熱化の結果, 空間内が重苦しい感じのする建物がしばしば見られ, 温熱環境のアメニティが向上したとは言えない.
  • 山岡 貞夫
    1995 年 32 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    サーカディアンリズムは生物が生まれつき有している内因性の周期的現象であって殆どの生理現象に観察される.しかしこのリズム現象は固定されたものでなく, 生物を取り巻く環境の変化によって変動し得る現象である.従って環境条件が生体にとって快適であるか否かによってリズムに変動の現れる可能性もある.1) サーカディアンリズムに最も強い影響を与えるのは照明であるので, 照明と人のリズムの関係について, 交替勤務・ジェットラグ・季節性感情障害が照度や照明時間の位相変化によって生じる異常であることを概説した.2) 温泉浴がリズム異常を正常化するとの報告を紹介した.3) 動物実験より森林揮散物質αピネンがストレスによる脳内アミン・ACTHの変動を抑制し, ストレスによる免疫抑制を減弱すること, および連続的αピネン曝露はサーカディアンリズム振幅を増大させること, ヒトの実験よりαピネン曝露は脳波のα波増加・R-R間隔延長・CVR.R増大などを起こすことより森林浴は快適感を増す事によりサーカディアンリズム振幅を増大させ明白なリズム形成に関与するものと推定した.
  • 植田 理彦
    1995 年 32 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    森林の優れた自然環境の中で, 休養の手段となる快適なrecreation活動を行うのが森林浴である.高齢社会を迎えた今日「森林浴」を通じて世代を超えた楽しむ行動は, 森林が二世代, 三世代にわたって触れ合いの復活の場として, また, 心肺機能の低下を防ぐ健康の維持・増進の場として活用されることが望まれる.
  • 加賀美 雅弘
    1995 年 32 巻 1 号 p. 43-45
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    わが国では, 森林浴はその導入期以来, とくにフィトンチッドの効用に注意が払われてきた.しかし, 森林浴本来の成果が上がっているかというとそこには疑問がある.本稿は, ドイツの保養地での森林浴の実態を踏まえて, 森林浴がいかにしてより有効なものとなるかを, 保養地における人々の保養行動という側面から論じた.森林浴は, フィトンチッドに代表されるような物質的, 生科学的な側面を追及する態度によってのみならず, むしろ地人融合, 統一体としての人間-環境系といった地理的観点に基づいて論じられるべきであろう.
  • 大塚 吉則, 薮中 宗之, 野呂 浩史, 渡部 一郎, 阿岸 祐幸
    1995 年 32 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    水浴温度の血小板グルタチオン代謝に与える影響を水温を25℃, 36℃, 42℃と変化させた水浸法にて検討した.その結果, 25℃, 42℃において過酸化脂質 (LPO) 値の上昇が認められ, この温度では血小板に何らかの活性酸素種による酸化的ストレスが働いていることが示唆された. 36℃でもLPO値は上昇したが一過性であった. 25℃と42℃では酸化的ストレスが働いたため, 抗酸化防御機構の一種であるグルタチオン (GSH) とその関連酵素のグルタチオン過酸化酵素 (GPX) , グルタチオン還元酵素 (GR) の誘導が認められた.このような温熱あるいは寒冷刺激が繰り返されることにより, 過酸化物が血小板内に蓄積して凝集能を亢進させる可能性が考えられた.
  • 林 千穂, 登倉 尋実
    1995 年 32 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    農薬散布用防除衣着用下において, 長靴の素材の違いが人体の生理的反応に及ぼす影響を検討するため, 気温28±0.5℃, 相対湿度50±5%の人工気候室で実験を行った.用いた3種類の長靴は, ゴム長靴 (A, 重量1, 440g) と長靴脚部のみ高透湿防水布 (Goretex) を用いた長靴 (B, 重量750g) およびBに重しをつけてAと同重量にした長靴Cとした.被験者は女子学生5名で, 踏み台 (高さ22cm) 昇降を行い, 直腸温, 心拍数, 皮膚温, 前腕における局所発汗量, および実験前後の衣服重量変化から衣服付着汗量を算出した.得られた結果は以下の通りである.1) A着用時は, B着用時より直腸温は有意に高い値を示したがB, C間には有意差はなかった.2) 下腿の皮膚温はB, C着用時の方がA着用時より有意に低い値を示した.今回の実験結果から, 防除衣を着用した暑熱環境下において生理的, 心理的負担を軽減するには, 靴の素材が重要であることが示唆された.
  • 山中 伸一, 中村 泰人
    1995 年 32 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    4地域 (北海道, 東京都, 京都市, 和歌山県) における夏季の脳血管疾患死亡率と気温との関係について調べるため, 年死亡率の20年間の変化曲線と月毎の実死亡率から「過剰死亡指数」を定義し, その気温依存について解析した.その結果, 東京都の場合を除いて, 7月には月平均気温と死亡指数の間に有意の相関を認め, およそ23℃以上では気温の上昇とともに死亡指数が上昇し (京都市, 和歌山県) , およそ23℃以下では逆に気温の上昇とともに死亡指数は低下した (北海道) .しかし8月についてはいずれの地域においても, そのような相関を認めることは出来なかった.京都市の場合について, 全20年のデータを前期と後期とに分けて比較すると, 前期では死亡指数と平均気温の間で有意の相関が認められたが, 後期では認められなかった.
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