本研究は母親と子供が同じ環境に居るときの温熱快適性と母子の温熱反応について明らかにすることを目的としている.13人の母親 (25~39歳) とその子供達 (9ケ月~4歳半) がこの実験の被験者になった.実験室は最初25℃に設定されていたが, 室内から0.4℃/分の速さで室温の上昇, 下降が可能である.温熱快適性が得られるように, 温度を上昇させるか低下させるかは, 母親自身がスイッチ操作をすることによってコントロールされた.また, 実験中, 平均皮膚温と直腸温が連続的に計測された.本研究で母親によって決定されたいくつかの温度データが, Ohnaka
et al. (1993) で得られた青年女子のデータと比較され, 選択温度には有意な差を認められなかったが, 母親が決定した最高温度は有意に低く, 最低温度が有意に高く決定されたことが明らかになった.これらの結果は, 母親により決定された選択温度が狭い温度範囲でコントロールされていたことを示唆している.最高温度および最低温度時点での平均皮膚温と直腸温に関しては, 母子間に有意な差を認めなかった.しかしながら, 周囲気温の変化に対しては, 母親よりも子供の平均皮膚温の方がより速い反応を示しており, このことは温熱中性域においても周囲温熱環境に対する子供の体温調節反応は影響を受け易いことを示唆している.
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