日本生気象学会雑誌
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35 巻, 4 号
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  • 藏澄 美仁, 松原 斎樹, 古川 倫子, 藤原 三和子, 上 麻美, 植木 弥生, 長井 秀樹, 山本 志津恵
    1998 年 35 巻 4 号 p. 121-132
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    姿勢が異なることによる温熱環境を人体側から評価する指標として, 姿勢別の平均皮膚温度が定義された.体表解剖学上の区分にしたがい, 各区分ごとに人体と床面との接触面積が, 女性15人を用いて実測された.実測に用いられた姿勢には, 生活空間でとられると考えられる立位と椅座位, 正座位, 胡座位, 横座位, 立て膝位, 投げ足位, 側臥位の8種類が選択された.各姿勢ごとに, 人体と床面との接触区分が明確にされ, 接触面積が定量化された.臀部を中心として床面と接触する平座位では, 臀部と大腿部に体型による接触面積比の差が顕著に現れた.また側臥位での躯幹部と上膊部に体型による接触面積比の差が顕著に現れた.体型による接触面積比の差を考慮し, Hardy-DuBoisの平均皮膚温算出用の重み係数の修正により, 各姿勢ごとに体型別の平均皮膚温算出用の重み係数が定義された.日本人男性の姿勢別の床面との接触面積の実測結果とを総合し, 日本人の体表区分比率に基づいた各姿勢ごとの平均皮膚温算出用の重み係数が定義された.
  • 青木 哲, 水谷 章夫, 須藤 千春
    1998 年 35 巻 4 号 p. 133-144
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    名古屋市の市街部および豊田市の郊外部に位置する2棟のそれぞれ7階建と11階建の高層集合住宅において, 階層の室内塵性ダニ類の生息分布および室内温湿度変動に及ぼす影響を調査した.室内塵試料から飽和蔗糖液遠心浮遊法によりダニを分離し, ナイロン製の200メッシュ上に展開し, 乳酸で封入して, 同定, 計数した.高階層ではヤケヒョウヒダニおよびイエササラダニ, ツメダニ類, ホコリダニ類などの減少傾向がみられ, コナヒョウヒダニの分布は階層にあまり影響されないことが示された.この原因として高階層では室内湿度が低下し, 湿度要求性の高いヤケヒョウヒダニや非チリダニ類の生息分布に適しなくなると推察された.そこで名古屋市内の1棟において各階の温湿度変動を調査し, 高階層では低階層よりも湿度がやや低く, 降雨や風などの外気の影響によって大きく変動することが示された.これらの結果から, 高層集合住宅の高階層では風速の垂直分布の影響を受けて, 風力換気が高まり室内湿度が低下し, ヤケヒョウヒダニのような湿度要求性の高いダニ類の生息分布に適さなくなるが, コナヒョウヒダニは湿度要求性が低く, 高階層でも生息分布していると推察された.また両棟のダニ類の分布を比較して, 階層と同時に建物の気密性や周辺環境も室内気候に影響していると推定された.なお1983~1984年の調査ではコナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニの比が約1: 1であったが, 本調査では約5: 1で, 湿度要求性の高いヤケヒョウヒダニの減少が注目された.
  • 岩崎 輝雄
    1998 年 35 巻 4 号 p. 145-152
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    百歳長寿者は健康に生き抜いて来た“健康エリート”と評価されてよい.本調査は人間を健やかに育てる居住環境とは何かについて, 厚生省による「全国高齢者名簿」により, その居住分布状況を地図にプロットし, 海岸, 森林, 山岳などの居住や環境を気温要素, 植生要素などによって地域区分し, 生気象学および健康地理学の観点から検討した.気候区は関口武と前島郁雄のものを参考に, 北海道気候区, 日本海岸気候区, 太平洋海岸気候区, 三陸地方, 東海地方, 内陸地方, 瀬戸内地方, 北九州地方, 南海地方, それに南西諸島気候区の9つの気候区に分類した.1980年に集計された1, 349人の調査結果では瀬戸内地方気候区が最も多く, 375人で27.8%を占め, 人口10万人対で見ると1.67人であった。その理由としてあわせて調査した食事の結果などから, 温暖な気候, 多照時間, 豊富な海産物, 良好な物流経済立地などとの関連性が認められた.
  • 土谷 彰男, 苗村 晶彦
    1998 年 35 巻 4 号 p. 153-163
    発行日: 1998/12/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    瀬戸内地方の内陸盆地の中腹に顕著なアカマツ林の衰退と冷気湖の発現について広島県の標高210mの西条盆地を例に考察した.盆地の内外, 盆地尾根部と中腹部のアカマツ林の比較により, 盆地内の中腹部 (260-280m付近) のアカマツの枯死率が84%と高く, 枯死直前の数年間の年輪生長が極端に衰えていることが確認された.係留気球による温湿度分布の観測では, 晴天日の夜間に放射冷却による接地逆転層が500m付近までを支配するが, 290m以下の気層に冷気湖が発現し, 低温・高湿度の大気が封じ込められ, 冷気湖内の上層に30ppb/24hを越える二酸化窒素が滞留することが判明した.こうした気象条件のもとで, 二酸化窒素を前駆物質とする酸性物質がアカマツに負荷を与えていると推察される.この結果から, 中腹以下の帯状の枯死現象には, 害虫による直接原因の他に盆地特有の冷気湖の形成とそれに伴う二酸化窒素の沈着が直接・間接的に関与していることが示唆された.
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