日本生気象学会雑誌
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36 巻, 2 号
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  • 司会者の言葉
    小坂 光男, 森本 武利
    1999 年 36 巻 2 号 p. 63
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
  • 松本 孝朗, 小坂 光男, 菅屋 潤壹
    1999 年 36 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    暑熱に繰り返し暴露されると, 暑熱による負荷を軽減する適応が生じる.規期の暑熱順化では, 発汗能の亢進により熱耐性が獲得される.一方, 長期暑熱順化した熱帯地住民は, 非蒸散性熱放散能に優れ, 少量の発汗で有効に熱放散を行える.その発汗抑制には発汗中枢の活動性抑制と汗腺のアセチルコリン感受性低下の両者が関与する.発汗量を減少させる長期暑熱順化は, 暑熱環境での生存のための経済性を重視した適応戦略であり, 発汗量を増加させる短期暑熱順化は暑熱環境下での行動能率を重視した適応戦略と言えよう.後者は脱水の危険をはらんでおり, 体液・浸透圧調節の面からは, 前者が優れている.発汗反応の点からは両者は両極に位置するが, 果たして短期暑熱順化の延長線上に長期暑熱順化が位置するのか否か, 興味深い.地球温暖化が危惧されている今日, 暑熱環境への適応は重要な課題となるであろう.
  • 酒井 秋男
    1999 年 36 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    高地環境が生体に与える主な外的要因は, 気圧の低下 (低酸素) と気温の低下である.生体はそのような環境圧に対して呼吸・循環器系を中心に適応現象がみられる.中でも, 右心室肥大や肺高血圧などの肺循環系を中心とした変化が顕著であるが, 完全高地適応動物とみられるナキウサギはそれらの反応が極めて小さいことが特徴である.エベレスト (8, 848m) の無酸素登頂は, 今までの生理学的常識から は不可能とされていた.その根拠は, エベレスト頂上のVO2maxは基礎代謝量に近似してしまうとするものであった.ところが, 1978年にMessncrとHabelcrによって無酸素登頂が成功した.これを機に, 1981年にはJ.westがAmcrican Mcdical Rcsearch Expedition to Everest (AMREE) を組織し, 全隊員医師によるエベレスト登頂を目指した.また, 1985年にはC.Houstonがエベレスト登頂を想定した, 低圧タンクによる大がかりなシミュレート実験 (Operation Everest II) が企画・実施された.
  • 毛利 元彦
    1999 年 36 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    海洋の極限の生気象学との課題であるが, 海洋科学技術センターで行った諸研究の結果に基づき, 深海潜水に伴う高圧神経症候群, 高圧利尿とヘリウムガスの特性ならびに深海の神秘を観察できる“しんかい6500”と一人乗り大気圧潜水服の内部環境の変化について述べた.
  • 米山 重人, 橋本 聡子, 本間 研一
    1999 年 36 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    南極においてヒト概日リズムにつき, 二つの同調因子のもとで, 睡眠覚醒リズム, 活動リズム, 血漿メラトニンリズム, および直腸温リズムがどのように変化するかを検討した.二つの同調因子とは, 一つは年間を通じて極端に変化する明暗周期であり, もう一つは季節変動を示さない労働スケジュールである.被検者は9名の成人健常男子で, 15ヶ月間南極圏 (南緯66.5度以南) に滞在し, うち13ヶ月間, 南極観測隊員としてドーム観測拠点 (南緯77度) で越冬した.睡眠, 日常活動については位相, 時間ともに季節変動を示さなかった.これに対し, メラトニンの夜間分泌帯のピークの位相は, 夏に比べて冬に約4時間の位相後退を認めた.直腸温が夜間最低値をとる位相も冬に約2時間の位相後退を認めた.これらの知見により, 睡眠, 活動リズムは明暗周期よりも労働スケジュールによって優位にリセットされるが, メラトニン, 直腸温リズムは明暗周期の影響をより強く受けると考えられた.厳しい労働スケジュールは, ヒト概日リズムにおいて明暗周期に拮抗する可能性があると思われる.
  • 間野 忠明
    1999 年 36 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    極限環境としての宇宙環境への生体適応と, これに伴い出現するさまざまな障害について概説した.例えば, ヒトが宇宙空間の微小重力環境に曝露されると, 頭部方向へ体液が移動し, これに適応するために循環血液量が減少して, 心循環系変調 (cardiovascular deconditioning) が引き起こされる.宇宙環境への適応後に宇宙飛行士が地上に帰還すると, 直ちには1G環境に再適応できず, 起立耐性が低下する.この機序の解明のために, 1998年4月に打ち上げられたスペースシャトル・ニューロラブでなされた最近の研究などについても紹介した.
  • 中村 泰人
    1999 年 36 巻 2 号 p. 93-102
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    調査の結果, 夏と冬の至適温度の実態が住宅とオフィス (事務所) で著しく違うことから, 学生を被験者として, 年間一定の熱環境条件に対して温熱負荷実験を行った.その結果, 明らかに季節順化と思われる特性が現れた.得られた温熱生理学の結果に対して工学的サイドより, 得られた特性の生起現象の解釈を試みた.温熱生理学と工学的サイドには相互に解釈の違いがみられた.融合についてはさらに, 工学的側面から環境の中立温度を定義し, それに基づいて脳血管疾患死亡率の地域変化特性から, 風土適応の見直しが可能なことを示した.
  • 前田 亜紀子, 山崎 和彦, 飯塚 幸子, 吉田 燦
    1999 年 36 巻 2 号 p. 103-111
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    透湿性防水素材は野外活動用の外衣として多く使用されている.本研究の目的は, 雨天想定下での作業時における温熱影響について観察することであった.外衣条件は3種であり, ミクロテックス (MT: 透湿性) , ゴアテックス (GT: 透湿性) , 及びハイパロン (HP: 非透湿性) を用いた.環境条件は気温20℃, 相対湿度80%に制御され, 環境条件2種 (条件D: 散水なし, 条件R: 散水あり) を設定した.被験者は健康な成人女子6名 (平均: 22.7歳, 58.1kg, 164.2cm) を用い, 最終段階の作業強度がRMR6.1に相当する漸増負荷作業を行わせた.条件Rでの散水量は80ml/分であった.測定項目は衣服内温湿度, 直腸温, 皮膚温, 心拍数, 酸素摂取量及び主観申告とした.条件Dでは素材間の温熱的効果について有意差が認められたが, 条件Rでは観察されなかった.また、温熱負荷は条件Dより条件Rにおいて軽減された。
  • 星 秋夫, 中井 誠一, 稲葉 裕
    1999 年 36 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    近年3年間 (1994~1996) における, 小学生から高校生を対象とした学校での運動時における死亡事故の実態と発生要因について検討した.心疾患による死亡が最も多く, すべての死因において女子よりも男子で発生件数は多かった.熱中症, 溺水による死亡事故は7, 8月に発生が集中する季節変動が認められた.多重ロジスティックモデルの結果, 心疾患において, WBGT (Wet Bulb Glob Temperature) が21.0℃以上では, 21.0℃未満よりも死亡の危険が有意に低いことが認められた.これに対して, 熱中症, 外傷・打撲等および溺水はWBGTが21.0℃未満よりも21.0℃以上では死亡の危険が高いことが認められた.心疾患において, 運動部在籍者は非在籍者よりも有意に死亡の危険が低いことが認められた.熱中症および外傷・打撲等においては運動部在籍者で死亡の危険が高い傾向にあった.以上のことから, 心疾患による死亡事故の暑熱環境による影響は小さいと推察された.熱中症と外傷・打撲等による死亡事故の発生は夏季の暑熱環境下で激しい身体トレーニングを実施したためであると推察された.
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