日本生気象学会雑誌
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38 巻, 3 号
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原著
  • 栄 涼子, 森 悟, 古賀 俊策, 朝山 正己
    原稿種別: 原著
    2001 年 38 巻 3 号 p. 63-69
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/10/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,高蛋白食によって生ずる食餌誘発性熱産生(DIT)の増加により,運動開始前の体温が異なる状況下で運動を実施した際の体温調節反応を観察し,DITと運動時の体温調節反応との関係について検討した.実験は健康な女子大学生10人を被検者とし,無摂食と高蛋白食摂取の2条件下でそれぞれ60%V.O2maxに相当する自転車エルゴメーター運動を60分間負荷した.その結果,運動開始前の深部体温は,無摂食時に比して摂食時の方が有意に高い値を示した(P<0.01).一方,運動時の深部体温は,運動前の体温差を運動終了時まで維持しながら上昇した.また,熱産生量は無摂食時と比較して摂食時は有意に高い値を示し(P<0.01),熱放散量には差は認められなかった.以上から,DITによって生ずる体温上昇は,すくなくとも60%V.O2max程度の中等度の運動によって修飾されることは無く,体熱平衡も保たれていた.すなわち,DITによる体温の増加が運動時の体温に加算されて生ずる受動的な反応と考えられる.
  • 青木 哲, 水谷 章夫, 須藤 千春
    原稿種別: 原著
    2001 年 38 巻 3 号 p. 71-88
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/10/16
    ジャーナル フリー
    室内気候の実態の把握および温湿度変動から住宅の温熱性能の簡便な評価法を開発し,疫学調査などに資することを目的に,名古屋市内の立地条件や構造,暮らし方などの異なる住宅5戸において室内外の温湿度を約1年間に亙って測定し,年間の変動に加え8月と1月の室内外の温湿度変動と各住宅の温熱性能との関連を検討した.在来型木造住宅のA,B宅では居間に冷暖房設備がなく,軽量鉄骨造住宅のC宅,RC造集合住宅のD宅および高気密・高断熱型木造住宅のE宅では冷暖房の使用頻度が高かった. 夏期の月平均室温は28~30℃で住宅間に顕著な相違を認めなかったが,絶対湿度は非冷房住宅と冷房住宅で有意差がみられ,冷房住宅では外気絶対湿度が約12g/kg'または外気温が26℃を上回ると絶対湿度の室内外差が拡大し,冷房に伴う除湿効果によると推定された.冬期に非暖房のA,B宅の平均室温は10℃以下であったが, 暖房住宅では約18℃と高かった.年平均相対湿度はA宅を除いて50%台で,特にC,E宅では2月に30~40%台に低下した.またC宅では冬期の室温および相対湿度の変動がD,E宅に類似したが,絶対湿度の変動はA,B宅に類似し,特異な温熱性能を有していると推察された.そこで8月と1月の一日間の室内平均温湿度,最高最低差(変動幅),室内外差を求めて外気温湿度との関連を検討した.A,B宅では室温が外気温に追随的に変動し,絶対湿度の室内外差および日変動幅が小さいことから,断熱性能,気密性能は低いが,調湿性能は高く,D宅では室温に対する外気温の影響および室温の変動幅が小さいが,絶対湿度の室内外差および変動幅は大きいことから,熱容量が大きく,気密性能も高いが,調湿性能は低いと推定された.E宅では室温および絶対湿度の変動幅が小さく,絶対湿度の内外差は大きいことから,断熱性能,調湿性能,気密性能が高いと推定された.一方,C宅では室温および絶対湿度の変動幅が大きく,冬期の絶対湿度の内外差は小さいことから,断熱性能,調湿性能のみならず気密性能も低く,冬期に暖房により室温が高く,相対湿度が低下したが,気密性能が低いので絶対湿度が低くなったと推定された.以上から,断熱性能,熱容量は温度変動の解析により,気密性能,調湿性能,冷房の効果は湿度変動の解析により,それぞれ簡便,端的に評価できると推察された.また近年では室内湿度の低下が顕著であり,一方,アトピー性皮膚炎や脱水症,心臓・脳血管障害などでは室内湿度の低下に伴う皮膚や粘膜からの水分喪失が発症や悪化と関連していると推察されるので,温度変動と同時に湿度変動も調査解析し,居住空間の温熱性能や環境特性を総合的に把握することが,これら疾患の疫学調査や予防対策においても重要であると考えられる.
  • 竹村 勇司, 小笹 直子, 塗師 憲太郎, 原田 史
    原稿種別: 原著
    2001 年 38 巻 3 号 p. 89-106
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/10/16
    ジャーナル フリー
    日本コリデール種ヒツジの繁殖季節最盛期に,発情周期を示す成雌3頭,妊娠成雌2頭,春機発動期育成雌2頭,および成雄2頭の体表25ヵ所のニオイに対する性成熟雄10頭(成雄8頭と育成雄2頭)の嗅覚行動反応を観察し,性成熟雄が興味を示すニオイの体表分布を調べた.観察項目は(1)ニオイ嗅ぎ行動:忌避,興味弱,興味中,興味強の4段階評価;(2)ニオイ嗅ぎ持続時間:短,少長,長,特長の4段階評価;(3)フレーメン行動発現の有無とした.観察の結果,性成熟雄は1)成雄よりも成雌や育成雌のニオイに強い興味を示すこと,2)肛門部では成雌や育成雌のニオイに興味を示すが成雄のニオイは忌避し質的に異なる反応を示すこと,3)成雌や育成雌の尿,外陰部,肛門,ならびに尾根腹側面,眼窩下洞,鼠径洞,および趾間洞に存在する変形皮膚腺のニオイに特に興味を示すこと,4)発情間期よりも発情期のニオイにより興味を示す傾向のあることが示唆された.
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