日本生気象学会雑誌
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40 巻, 1 号
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原著
  • 藏澄 美仁, 土川 忠浩, 大和 義昭, 角谷 孝一郎, 松原 斎樹, 堀越 哲美
    原稿種別: 原著
    2003 年 40 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/06
    ジャーナル フリー
    対流による熱交換量の算定をおこなう場合には,人体の全体表面積と対流熱交換に関わる伝熱面積を知る必要がある.しかし,人体の対流熱交換に関わる伝熱面積の具体的な実測値はこれまで明らかにされていない.そこで,人体の対流熱交換に関わる伝熱面積を有効対流面積率として定義し,生活空間でとると考えられる立位と椅座位,正座位,胡座位,横座位,立て膝位,投げ足位,側臥位,仰臥位の9種類の姿勢における有効対流面積率を直接測定により求めた.水性アクリル絵の具で着色した水溶液を体表面へエアーブラシで砂目状に吹き付け,非着色体表面を非対流面として抽出した.実測はサージカルテープを直接体表面に貼付し,その被覆に要したテープの面積を測定する方法を用いた.その結果,立位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.92,椅座位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.83,正座位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.79,胡座位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.83,横座位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.81,立て膝位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.89,投げ足位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.90,側臥位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.87,仰臥位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.86となった.いずれの姿勢においても有効対流面積率はこれまでに得られてきた有効放射面積率よりも大きな値となった.一方,いずれの姿勢においても有効対流面積率は1.0よりも小さな値であった.人体の有効対流面積率は1.0よりも明らかに小さい値であることを実測により明らかにした.
  • 前田 亜紀子, 山崎 和彦, 栃原 裕
    原稿種別: 原著
    2003 年 40 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/06
    ジャーナル フリー
    我々は,人体―被服―熱環境系を評価する一指標として,MCM(mean clothing microclimate)を提唱した.これは被服内温度(MCM-t)と被服内相対湿度(MCM-h)という2つの要素から成る.本研究の目的は,MCMと主観評価との関係について評価することであった.被験者は9名の健康な成人女性であった.clo値は,冬季被服条件が0.89 clo,夏季被服条件は0.23 cloであった.まず被験者は,20分間前室(冬季:20°C 50%RH,夏季:28°C 50%RH)に滞在した.次に,温度が −3~+3°C,湿度が −20~+30%RHに設定された曝露室に移動し,60分間の椅座位安静を保ち,10分間ステップテスト(RMR:1.2)を行わせた.MCMは皮膚温よりも温冷感を捉える上でより敏感であった.冬季,及び,夏季条件におけるMCM-tとMCM-hの快適となる時の値は,各々,29.7 ±1.4°C,39.9±7.6%及び,33.0 ±0.7°C,37.0±9.3%であった.平均皮膚温には明確な変化は認められなかった.
総説
シンポジウム:植物とヒトとのかかわり
  • 山岡 貞夫
    原稿種別: 研究論文
    2003 年 40 巻 1 号 p. 35
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/06
    ジャーナル フリー
  • 川島 茂人
    原稿種別: シンポジウム
    2003 年 40 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/06
    ジャーナル フリー
    毎年早春の2月頃から5月頃まで,スギ花粉による花粉症が発生する.近年その患者数は増加する傾向にあり,大きな社会問題となっている.しかしながらテレビ,新聞などで報じられる花粉予報はかなり大まかなものである.わが国には,空間的に密な気象観測システムが展開されており,国内の植生についても詳細な調査が行われている.さらに,近年花粉症が社会問題化したことに対応して,いくつかの地方自治体によって、組織的な花粉捕集数の観測が始まり,データが蓄積しつつある.そこで,これらの情報を積極的に利用し,有機的に総合化することにより,従来よりも詳細な,スギ花粉飛散量分布の推定を行う手法ができないかと考えた.本報告では,気象条件とスギ花粉飛散量の関係について示すとともに,気象データとスギ森林データを用いて,詳細な花粉飛散量分布をシミュレートする方法について述べる.
  • -とくに植物が放出する揮発性物質が他の生物に及ぼす作用-
    藤井 義晴, 濱野 満子
    原稿種別: シンポジウム
    2003 年 40 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/06
    ジャーナル フリー
    アレロパシー(Allelopathy)は他感作用ともいい,植物が個体外に放出する化学物質が,他の生物個体に何らかの作用を起こす現象を意味し,作用物質を他感物質(Allelochemical)という.アレロパシーの作用経路の中で,生気象学と関係が深い揮発性物質による作用に関する研究を紹介する.1)植物から放出される揮発性物質を,常温吸着法により同定・定量する方法を開発した.この手法を用いて,農耕地を構成する植物から放出される揮発性物質を検定した.2)バイオアッセイによって植物由来の揮発性物質を検定する「ディッシュパック法」を開発した.3)ディッシュパック法によって,クレオメの作用成分としてメチルイソチオシアネートを同定した.4)ミレニアムプロジェクトの一環として,ヒバやヒノキ等の間伐材を原料にした樹木由来成分に含まれる生理活性物質を分析し,農業に利用する研究を,産官学共同研究として実施している.
  • 宮崎 良文
    原稿種別: シンポジウム
    2003 年 40 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/06
    ジャーナル フリー
    自然は,日常生活の快適性の増進に寄与していることが経験的に知られている.人は,ヒトとなって500万年経過し,仮に産業革命以降を都市化,人工化と仮定した場合,その99.99%以上を自然環境下で過ごしてきたことになる.すべての人の生理機能は,自然環境中で進化し,自然環境用に作られている.そのような状況の中,人工環境下で生活する我々は常にストレス状態にあると考えられる.この論文の目的は,種々の自然由来の刺激が生理応答に及ぼす影響を明らかにすることである.生理指標としては,近赤外線分光分析法による脳(前頭前野)活動ならびに指先を用いた血圧,脈拍数を用い,毎秒測定を実施した.自然由来の刺激としては,スギ,ヒバ材のにおい物質,小川のせせらぎ音,森林浴風景等を用いた.その結果,これらの自然由来の刺激は血圧の低下と脳活動の鎮静化をもたらし,生理的に鎮静化した状態を作り出した.自然由来の刺激は,現在のストレス社会において積極的に鎮静的快適感をもたらすことが分かった.
  • 吉田 博一
    原稿種別: シンポジウム
    2003 年 40 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/06
    ジャーナル フリー
    花粉症は,アレルギー性鼻炎を好発時期によって通年性と季節性に分類し,季節性のうち花粉を原因とするものであり,季節性アレルギー性鼻炎の大部分を占める.従って,花粉症はアレルギー性鼻炎の代表的疾患であり,I型アレルギー疾患である.鼻の主徴は,くしゃみ,水性鼻汁,鼻閉で,原因花粉飛散期にのみ症状を現す.「国民病」とまで言われるスギ花粉症の有病率は徐々に増加し,近年行われた2つの全国的疫学調査では,都道府県別では有病率に違いが認められたが,全国平均すると15%前後であった.有病率増加に関係する因子としては,スギ花粉飛散量の増加,浮遊粒子状物質のアジュバンド効果,住環境や食生活の西欧化,結核症や寄生虫疾患などの感染症の減少に伴うTh1とTh2のアンバランス(Th2優位)などが挙げられる.
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