対流による熱交換量の算定をおこなう場合には,人体の全体表面積と対流熱交換に関わる伝熱面積を知る必要がある.しかし,人体の対流熱交換に関わる伝熱面積の具体的な実測値はこれまで明らかにされていない.そこで,人体の対流熱交換に関わる伝熱面積を有効対流面積率として定義し,生活空間でとると考えられる立位と椅座位,正座位,胡座位,横座位,立て膝位,投げ足位,側臥位,仰臥位の9種類の姿勢における有効対流面積率を直接測定により求めた.水性アクリル絵の具で着色した水溶液を体表面へエアーブラシで砂目状に吹き付け,非着色体表面を非対流面として抽出した.実測はサージカルテープを直接体表面に貼付し,その被覆に要したテープの面積を測定する方法を用いた.その結果,立位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.92,椅座位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.83,正座位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.79,胡座位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.83,横座位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.81,立て膝位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.89,投げ足位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.90,側臥位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.87,仰臥位姿勢の裸体人体の有効対流面積率は0.86となった.いずれの姿勢においても有効対流面積率はこれまでに得られてきた有効放射面積率よりも大きな値となった.一方,いずれの姿勢においても有効対流面積率は1.0よりも小さな値であった.人体の有効対流面積率は1.0よりも明らかに小さい値であることを実測により明らかにした.
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