立位や座位時など下肢への静水圧負荷は下肢への血液の貯留および組織への水分漏出による浮腫形成を引き起こす.下肢への血液の貯留量や組織への水分漏出量を決定する因子である静脈コンプラアンス,毛細血管水透過係数(K
f)を定量化し,これらパラメータに及ぼす局所加温および筋肉痛を惹き起こす筋運動の影響を検討した.10 名の健康な若年女性において安静臥位を 60 分間保持した後,大腿に装着したカフの圧力を 7 分ごとに 10 mmHg ずつ 50 mmHg まで上昇させ,その際の下腿の容積変化,皮膚血流量,血圧,心拍数を測定した.同様の測定を下腿加温時にも行った.1 日目の測定終了後,踵の挙上運動を 100 回,4 セット負荷して翌日筋肉痛が起こったことを確認した後 1 日目と同様の実験を行った.それぞれのカフ圧で得られた血液貯留量(下腿容積変化の第 1 相)および経毛細血管水分移動量(下腿容積変化の第 2 相)とカフ圧の関係から各々静脈コンプライアンスおよび K
f を算出した.静脈コンプライアンスは,下腿局所加温および筋肉痛を惹き起こす運動の影響を受けなかった.K
f は,筋肉痛を訴えた 2 日目に 1 日目に比べ有意に上昇した.下腿局所加温の影響は 2 日目にのみ認められ,皮膚温上昇により K
f は上昇した.以上より,筋肉痛を惹き起こす運動は K
f を上昇させ,その効果と皮膚温上昇には相互作用があることが明らかになった.
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