日本生気象学会雑誌
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46 巻, 1 号
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原著
  • 石井 与子, 中島(上地) 歩美, 平田 耕造
    2009 年 46 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,吸湿率が 2%異なる 2 種類の肌着着用による温熱生理反応への影響を,発汗開始前後に分けて明らかにすることを目的とした.7 名の女性被験者は,ポリエステル丸編み・長袖 T シャツ(以下 P:吸湿率 0.6%),あるいはキュプラ/ポリエステル交編丸編み・長袖 T シャツ(以下 C:吸湿率 2.6%)を着用し,椅座安静を保った.環境温度は,240 分の間に 26℃,20℃,35℃と変化させた.その結果,皮膚血流量は,発汗開始前では C が P に比べて有意に低く,発汗開始後では C の方が有意に高かった(p<0.05).平均皮膚温の変化を C と P の差(C−P)としてみると,発汗開始前は −0.52±0.33℃を示したが,発汗開始後は −0.03±0.16℃となり,0.49℃有意に上昇した(p<0.05).局所皮膚温も同様に,発汗開始後は上昇した.これらの変化は,C の高い吸湿性により,発汗開始前では皮膚からの気化促進が,発汗開始後ではそれを上回る肌着からの高い収着熱が,それぞれ影響したものと推察される.すなわち,P と C の吸湿率の違いが,皮膚血流量および皮膚温に及ぼす影響は,発汗開始前後で異なることが判明した.
  • 有富 由香, 堀越 哲美
    2009 年 46 巻 1 号 p. 13-25
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    幼児にとっての室内温熱環境および居住者が幼児に対して行なう体温調節行動に関して考察することを目的に,愛知県内の幼児のいる家庭を対象にアンケート調査を行なった.冷房エアコンの調節に母親の体質や感覚が大きく影響している傾向が認められ,母親が幼児の体温調節に関与する場合,自身の感覚を基に行なっていることが示唆された.
  • 渡部 成江, 森谷 きよし, 角田(矢野) 悦子, 阿岸 祐幸
    2009 年 46 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    温泉保養地において,天然温泉入浴並びにさら湯入浴対照実験を行い,天然温泉水がもたらすストレス軽減効果を検討した.実験期間は 2004 年 11~12 月,被験者は 57~67 歳の健常な女性 8 名であった.両実験ともに全身入浴用ポリウレタン製の袋に 40℃の天然温泉水,またはさら湯を満たして温泉の浴槽に入れ,水質のみが異なり他の環境条件を同一にした.被験者に入浴を 10 分間,出浴後は 28–29℃で 30 分間半臥位での安静をとらせた.天然温泉入浴の結果,入浴中に脳波感性スペクトルの「喜び」,「Comfortable」,「Good Mood」値が上昇し,心地よい感情の高まりを示し,出浴後の「リラックス感(MCL)」はさら湯入浴に比べて高い傾向であった.出浴後の平均皮膚温変化を比較すると,天然温泉入浴はさら湯入浴に比べて保温効果が高かった.天然温泉入浴はさら湯入浴よりも感情改善,保温,ストレス軽減効果が大きいと考えられる.
短報
  • 渡来 靖, 中川 清隆, 福岡 義隆
    2009 年 46 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,関東平野中央部で著しい高温となった典型事例である 2007 年 8 月 15,16 日について領域気象モデルによる数値シミュレーションを行い,高温の要因を調べた.15 日,16 日ともに,関東平野北西内陸域を中心とした地上気温の極大域が見られた.15 日は混合層がよく発達しており,日射による加熱が気温上昇の大きな要因であることが示された.また,気温極大域が弱風域に対応しており,海風の影響が及ばないことが高温域の形成に寄与していることがわかった.一方,16 日は日射加熱による気温上昇の影響もあるが,地上気温の極大域には強い北西風が吹いており,フェーンによる昇温の影響も大きいことがわかった.このフェーンは,風上側斜面で降水を伴わないフェーンであることが示唆された.
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