著者らは既往研究において,熱平衡式に基づいて湿球温 T
w,グローブ温 T
g,気温 T
a で人体の熱平衡式を得,それを皮膚温で基準化し,Yaglou らの2つの WBGT 実験式と同形で表わされる理論式(以降 WBGT
* 式と記述)を導いた.T
w,T
g,T
a の変数係数を風速・代謝量・着衣量などの実数値を代入して試算し,日射の影響を無視できる室内のような環境で用いる指標として WBGT
*=0.85T
w+0.20T
g を,日射の影響を無視できない屋外環境で用いる指標として,気温 T
a の係数がマイナスとなる WBGT
*=0.84T
w+0.30T
g−0.08T
a を得た.
上述の結果を受け,本研究は,著者らが示した WBGT
* と Yaglou らの式の係数値の違いが人体に及ぼす影響を検討すること,および日射の影響を無視し得ない環境で使用する導出式の,T
a に掛かる係数がマイナス値をとる物理的な意味を考えることの2点に目的を置いた.結果は以下にまとめられる.
(1)Yaglou らの式から得られる WBGT の導出式の WBGT
* に対する 1.5℃のずれは,気温換算で 4~5℃のずれに当たる可能性がある.Yaglou らの WBGT は導出式と比べて高湿条件で低くなる.
(2)気温 T
a の係数が負号を示すのは,グローブ温 T
g と人の作用温度 T
op とのずれを補正する為,および,水蒸気圧を湿球温 T
w で表現したことにより,T
a の上昇が水蒸気圧の低下を意味する為と解釈できる.
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