日本生気象学会雑誌
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55 巻, 2 号
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総説
  • 櫻井 博紀, 佐藤 純, 牛田 享宏
    2018 年 55 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2018/09/28
    公開日: 2019/03/27
    ジャーナル フリー

    運動器慢性痛を訴える患者は,様々な症状・複雑な病態を呈するが,その中には気象変化により痛みが変化することを訴える症例がしばしばみられる.このように,慢性痛が天気の影響を受けるという報告は少なくないが,一方で両者の因果関係が見いだせないとするものもあり,一貫した見解はない.我々は天気の影響で痛みが悪化する患者に対して,人工的な気圧・温度環境に曝露することで痛みが変化することを確認してきており,そこに自律神経系が関与していることを示してきた.また,臨床において,自身の持つ痛みと天気との関連を患者自身が気づくことに加えて,薬物療法と併せて運動療法を行うことで,治療効果を挙げている例も多数みられている.今後,気象による痛みへの影響の機序に関してのさらなる研究を進めることで,より効果的な治療につながると考えられる.

原著
  • 北島 尚治
    2018 年 55 巻 2 号 p. 83-89
    発行日: 2018/09/28
    公開日: 2019/03/27
    ジャーナル フリー

    天候や気圧の変化により,めまい症状が引き起こされる現象は経験談としてよく耳にする.今回,大気状況が,めまいの一大疾患であるメニエール病発作に及ぼす影響を調べるため,生気象学的調査を東京にて行った.症例は2011年1月から2014年12月にかけて当院外来を受診したメニエール病患者16名である.患者には,めまい,難聴,耳鳴などのメニエール症状を記載するための用紙を渡し,症状自覚時に記載するよう指示した.東京の気象情報は気象庁のホームページより得られるデータを用いた.患者は少なくとも一度は季節ごとに発作を生じていた.前庭症状は主に梅雨時期から夏期,そして冬期,蝸牛症状は冬期から春期にかけて発症する傾向があった.めまいは多湿時に有意に生じ,耳鳴は低温時に生じる傾向があった.メニエール病を治療する際には,気象状況も念頭に置くことが重要であると考察された.

  • 橋本 剛, 遠藤 皆美, 今 和俊, 栗原 広佑
    2018 年 55 巻 2 号 p. 91-106
    発行日: 2018/09/28
    公開日: 2019/03/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,連続的に配置された屋敷森が夏季日中の集落気候形成に及ぼす影響を明らかにすることである.茨城県つくば市洞下集落において,2017年の夏季に気温,湿度,風向,風速および日射量の観測調査を行った.その結果,屋敷森内や屋敷森の縁では夏季の暑熱環境を緩和する効果が現れることが明らかになった.また,夏季日中において,連続した屋敷森に囲まれた住宅地では屋敷森が消失した住宅地よりも気温が低くなることが明らかになった.連続した屋敷森に囲まれた住宅地の低温環境は,屋敷森からの冷気の移流によって形成されるものであり,冷却効果は風向や風速の影響を受ける.早朝には,明確な気温差は生じなかった.結論として,洞下集落の連続的な屋敷森を地域の気候環境に適応した環境デザイン手法の典型例として位置づけた.

短報
  • 大野 秀夫, 西村 直記, 岩瀬 敏, 菅屋 潤壹, 西村 るみ子, 杉山 理
    2018 年 55 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2018/09/28
    公開日: 2019/03/27
    ジャーナル フリー

    近年,皮膚弾力性の低下は生理機能および血液成分と相関を有し,老化指標となりうるという興味深い研究結果が複数報告されている.筆者らは加齢に伴う皮膚弾力性の変化に焦点をあて,青年期女性(青年群)と中年期女性(中年群)の頬における皮膚弾力性を冬季と夏季に測定し,中年期女性に対する老化指標としての皮膚弾力性の意味を検討した.その結果,冬季には中年群の弾力性が青年群より有意に低かった.青年群の弾力性は季節間で差がなかったが,中年群の弾力性は夏季に比べて冬季は有意に低値であったことによると考えられる.夏季は群間に差はなかった.弾力性は身体の皮膚,血管,筋肉など諸器官に共通する特性である.中年群の冬季における皮膚弾力性低下は中高年の動脈硬化など循環器疾患が寒い季節に多いという厚労省報告と関連する可能性も考えられ,今後の検討課題である.

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