日本生気象学会雑誌
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58 巻, 1 号
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総説
  • 竹村 勇司
    2021 年 58 巻 1 号 p. 3-15
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2021/08/27
    ジャーナル フリー

    畜産は人類がいくつかの野生動物種を家畜として飼育繁殖するようになって生まれた.現在の近代的家畜品種は育種改良を経てそれぞれの生産目的に特化した高い生産能力を持っている.20世紀中頃から先進諸国で施設加工型の集約畜産が急速に発達し,消費者と生産現場の家畜との距離が離れ,消費者は専ら畜産製品とのみ接するようになった.1964年のルース・ハリソンの『アニマル・マシーン』の出版を契機に集約畜産における劣悪な家畜の飼育状態が関心を集め,以後,家畜福祉問題の解決に向けた動きが始まった.また,1986年の牛海綿状脳症の発生とその後の感染牛由来畜産物摂取による人への感染を契機として畜産食品の安全性の確保が社会的要請となった.さらに,21世紀に入ると人獣共通感染症である重症急性呼吸器症候群(2002年),新型インフルエンザ感染症(swine-origin influenza A/H1N1,2009年),中東呼吸器症候群(2012年),新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2感染症,2019年)などの新興感染症が相次いで発生し,人の健康と家畜の健康および生態系の健全性との間の密接な関係が認識され,人・動物・環境の相互作用の視点からの統合的な健康アプローチ(One Health Approach)の考えが浸透した.今日の畜産は,家畜の飼育環境や育種に起因する動物の福祉問題の改善に加えて,食品の安全性確保,人獣共通感染症の防御などの観点からも動物福祉に基盤を置く畜産が求められている.

原著
  • 西村 一樹, 玉里 祐太郎, 小野寺 昇, 長﨑 浩爾
    2021 年 58 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2021/07/30
    公開日: 2021/08/27
    ジャーナル フリー

    本研究は夜間睡眠中のダンボールベッドおよびフィットネスマットの使用が生理的および心理的指標に及ぼす影響を検討した.対象者は若年男性16名とした.対象者にはインフォームドコンセントを実施した.ダンボールベッド条件とフィットネスマット条件を設定した.睡眠時間は23時から翌朝7時までとした.対象者は19時に同一の夕食を摂取した.測定項目は心拍数,血圧,心臓自律神経系調節,睡眠・覚醒リズムの指標,主観的熟睡度とした.夜間睡眠中の1分以上の中途覚醒頻度は,フィットネスマット条件に比較して,ダンボールベッド条件が有意な低値を示した.ダンボールベッド条件の主観的熟睡度は有意な高値を示した.心拍数,血圧,心拍変動から求めた心臓副交感神経系調節の指標であるlnHF,睡眠時間,睡眠効率は条件間に有意な差は観察されなかった.以上の知見から,ダンボールベッドの使用は睡眠環境改善の一助になるものと期待された.

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