日本生気象学会雑誌
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最新号
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総説
  • 松本 太
    2025 年 61 巻 3-4 号 p. 55-63
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/03/13
    ジャーナル フリー

    本報では,日本各地におけるウメの開花日について,どの時期の気温と相関が高いか,さらに近年における温暖化の影響を考察し,以下の結果を得た.(1)東日本では,1961~2020年にかけて概ね開花日が早まっているが,西日本では,数地点で開花日が晩期化しており,特に2001年以降の遅れが顕著であった.(2)開花日と相関の高い月平均気温は,札幌が3-4月,東北や北信が12-2月或いは12-3月の値であった.それ以外の東日本や西日本では,12月と12-1月の地点が多い.(3)東日本の多くの地点では,近年,前項で示した時期が早まっており,開花日も早い傾向がみられる.一方,西日本の5地点では,前項の時期は早まっておらず,気温上昇はあるものの,開花日が遅れている.(4)福島以南の東日本では,近年,開花日に対する前年12月の昇温の寄与が高くなっている.一方,西日本の3地点では,12月の昇温はあるが,開花日には寄与しておらず,その一因として,昇温により花芽の休眠解除が進まず,開花日が遅れている可能性がある.

原著
  • 長野 和雄, 押尾 健吾
    2025 年 61 巻 3-4 号 p. 65-77
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/03/13
    ジャーナル フリー

    兵庫県三田市における藁小屋による伝統的なウド栽培を行っている農家1軒と,作付面積が同規模で現在の主流であるビニールハウス栽培を行う農家1軒を対象にライフサイクルアセスメントを実施した.算定はライフサイクルインベントリデータベースIDEA v2.3を用いた積み上げ法とした.その結果,気候変動の影響物質であるCO2の排出量は,ウド小屋栽培ではウド1kgあたり4.50 kg-CO2eqであったのに対し,ビニールハウス栽培では1.61倍の7.25 kg-CO2eqであった.その他,資源消費・富栄養化・光化学オキシダントなど計10の影響領域でウド小屋栽培の方が優位であった.一方,収穫量はビニールハウス農家の76.9 %にとどまり,総労働時間は41.2時間長かった.

  • 永井 信, 斎藤 琢, 森本 宏
    2025 年 61 巻 3-4 号 p. 79-89
    発行日: 2025/02/28
    公開日: 2025/03/13
    ジャーナル フリー

    ソメイヨシノの開花日(FFD)や満開日(FBD)の短期的な変動の空間分布の特徴の調査は,短期的な気温変化に対するサクラの開花季節の感度を高精度に評価し,人々の短期的なFFDやFBDの予測を改善するために重要である.このためには,地球温暖化やヒートアイランドなどを要因とした長期的なトレンド成分を除去した時系列データに対する解析が必要である.我々は,ソメイヨシノの開花季節観測が長期継続的に行われている日本の48地点を対象に,FFDとFBDの前年差の相互の相関関係の空間的な特徴を調査した.その結果,主に,同一地域内に位置する相互の地点間,九州南部地方を除く東北南部地方以南に位置する相互の地点間,東北北部と北海道の両地方に位置する相互の地点間において,FFDやFBDの前年差には統計的にみて有意な正の相関関係がみられた.これらの特徴は,地域ごとの気候に応じた開花プロセスの期間の類似性と相違性により生じた可能性が示唆された.

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