生産研究
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62 巻, 6 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
特集1 建造物の総合的保存保全に関する研究グループ
特集に際して
調査報告
  • 桑野 玲子
    2010 年 62 巻 6 号 p. 575-578
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    2009年6月17日,東京大学生産技術研究所コンベンションホールにて,英国インペリアルカレッジ名誉教授のJohn.B.Burland氏による講演会“Rescuing the Leaning Tower of Pisa -the inside story”が開催された.イタリアのピサの斜塔は,12世紀の建設初期段階から傾き始めていたが,1990年には倒壊が危惧されついに観光客に対して閉鎖される事態に至った.Burland教授は,斜塔の安定に関して召集された国際検討委員会に委員として参加され,基礎の安定の見地から,観光客に気づかれない範囲で傾きを戻して恒久的安定を確保するという困難な課題に取り組まれた.建設当初から断続的に南側に傾き続けてきたピサの斜塔は,その800年におよぶ歴史の中でおそらく初めて北側に少し回復し,倒壊という破滅的状況を間一髪で免れ,検討委員会他多くの人々の10年に及ぶ斜塔との格闘がようやく終結した.講演会では,その一連の取組みについて,ご紹介いただいた.本報告は,その講演内容の概要を記すものである.[本要旨はPDFには含まれない]
研究速報
  • 加藤 佳孝, 恒国 光義, 西村 次男
    2010 年 62 巻 6 号 p. 579-582
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,プレストレストコンクリート道路橋の残存プレストレスの低下,および鉄筋コンクリート道路橋の疲労の進行を,ひび割れ幅の計測から定量的に評価するための手法の開発を行ったものである.π型変位計やひずみゲージといった器具を用いているため安価な計測であり,かつ,自動車荷重の計測を行う必要がなく簡易であることから,老朽化した多くの橋への適用が容易で定量的な劣化診断手法である.試験体の載荷試験に基づく計測・評価手法の構築,および架設から40年以上が経過した既存道路橋への適用事例について報告する.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 影沢 政隆, 大石 岳史, 小野 晋太郎, 池内 克史
    2010 年 62 巻 6 号 p. 583-588
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    私達の研究室では,近年発達が進んだ情報処理技術を用いて文化財をデジタル化する試みを続けている.屋外の大型有形文化財を対象とした研究は,文化財科学的な意義はもちろん,情報学的意義としても大いなる挑戦である.これに挑んだ私達は,国内外でさまざまな成果をあげてきた.本稿では,生産技術研究所のグループ活動として行った福島県会津若松市のさざえ堂の3D計測事例を最初に紹介し,その後,このような計測で得られたデータをどのように利活用してきたかを,過去の事例を含めて紹介し,その技術の意味を解説するものである.[本要旨はPDFには含まれない]
研究解説
  • 趙 旺熙, 加藤 信介
    2010 年 62 巻 6 号 p. 589-598
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,戸建住宅を対象建物とし,湿気による建物腐朽の問題について考察を行い,その対策としてのデシカント空調システムの適用可能性を検討することにある.高温多湿の気候では室内に結露が生じやすくなり,カビや腐朽菌,シロアリの繁殖による建物腐朽,断熱材の内部における含水率の上昇による断熱性能低下及び吸放湿の繰り返しによる断熱性状の劣化が問題になっている.住宅における建物腐朽の防止対策として,既往研究の発展形としての住宅用デシカント空調システムの提案を行い,提案した空調システムの構成及び運転モードを説明する.また,提案した空調システムの性能を評価するための数値解析モデルを作成し,冬季の加湿暖房性能と夏季の除湿冷房性能を評価した結果を報告する.
研究速報
  • 腰原 幹雄
    2010 年 62 巻 6 号 p. 599-602
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    明治期に入ると,近代建築に影響を受けた近代木造建築は,それまでの伝統木造建築とは異なる構造工学に基づいた木造建築を目指していた.1919年の市街地建築物法,1950年の建築基準法の制定により大規模な木造建築に建築制限が加えられたが,低層の木造校舎はそれ以降も建てられ続けている.こうした木造校舎は築100年を超えるものもあり,改修保存,建替の選択を迫られているが,構造性能に対する課題は大きい.本報では,木造校舎の構造の変遷を整理し,木造校舎の耐震診断・耐震改修の基礎資料となることを目的としている.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 秋山 仁志, 井上 翔, 岸 利治
    2010 年 62 巻 6 号 p. 603-604
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    新設コンクリート構造物の耐久性能診断の手法として,コンクリート表層からの非破壊透気試験による方法が提案されている.本研究では,非破壊透気試験の結果と中性化抵抗性に及ぼす養生条件の影響を検討した.表層透気係数と促進中性化速度係数の関係は,封緘養生および著しい乾燥を施した養生において,正の相関を示した.一方,水中養生を行ったものでは,同様の透気性に対して促進中性化速度係数がばらつく現象が確かめられた.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 酒井 雄也, 岸 利治, 長井 宏平
    2010 年 62 巻 6 号 p. 605-610
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    膨張材を用いてケミカルプレストレスを導入したコンクリート(CPC)は,普通コンクリートに比べてテンションスティフニング効果向上や高い変形性能を示すことが報告されている.本検討では一軸引張挙動を対象として,上記メカニズムの解明を試みた.その結果,膨張作用に起因する初期ひずみにより, 変形に伴ってCPC全体に微細な損傷が発生することが確認された.またCPCではマクロなひび割れによる鉄筋ひずみの急増が生じなかった.プレストレインの影響に加え,微細な損傷により,変形の局所化が回避されたためであると考えられる.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 荒木 裕行, 古関 潤一, 佐藤 剛司
    2010 年 62 巻 6 号 p. 611-615
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    セメントや石灰等の改良剤を混合しない伝統的な版築壁材料を対象とし,これを用いて作製した供試体の一軸圧縮試験を実施した.その結果,供試体の含水比が減少すると,一軸圧縮試験におけるピーク強度および変形係数E50はともに増加した.また,供試体の含水比が比較的低い状態においては,含水比が0.2 %程度変化しただけでもピーク強度で500 kPa,E50で200 MPa程度の変化が確認されるなど,強度変形特性は含水比の影響を受け易いことが明らかとなった.本研究で対象としたような改良剤を使用しない版築壁の強度が増加するのは,含水比の低下に伴うサクションの増大に起因すると考えられる.[本要旨はPDFには含まれない]
調査報告
  • 今井 公太郎
    2010 年 62 巻 6 号 p. 617-622
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    本稿は駒場リサーチキャンパスに計画中の60号館の改修計画に関する報告である.60号館の概要ならびに改修の経緯について述べ,建物の歴史性の扱いについて考察したうえで,改修計画の方針と手法について論じている.歴史性の表現としては,新旧の仕上げのコントラストを際立たせる方針が導かれている.この方針を実現する手法として,構造体の素直な表出,単純な部分増築,メカニカルチムニー,天井を貼らないで床下空間を利用した設備計画など,可能なかぎり古い部分を隠蔽しない手法が検討されている.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 川口 健一
    2010 年 62 巻 6 号 p. 623-629
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    日本はプロ野球のドーム球場に代表されるような大規模集客施設が多く建設されてきたが,これからは,維持管理や既存施設の改修が増えると考えられる.西洋には100年を迎えようという近代施設もあり,健全に使われ続けるためには人々を惹きつけ続ける魅力的な改修が必要だ.日本にすでに数多く存在する大規模集客施設の供用期間は42年だが,取り壊されたものの供用期間は33年だ.米国の大規模集客施設も曲がり角に来ており,屋根だけの架け替えなども行われている.日本のリニューアル最盛期はこれから訪れると考えられる.[本要旨はPDFには含まれない]
特集2 耐震構造学研究グループ(ERS)
特集に際して
研究速報
  • 下野 大樹, 大原 美保, 目黒 公郎
    2010 年 62 巻 6 号 p. 633-636
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    鉄道の早期地震警報は,地震時に新幹線を制御することを目的に開発・導入されてきた.しかし近年では,在来線や多くの私鉄にもP波検知による警報システムが導入されている.そこで本研究では,各鉄道事業者の警報システムが,首都圏の鉄道ネットワーク上で実現できる余裕時間(警報を受信してからS波が到達するまでの時間)を,中央防災会議で想定される東京湾北部地震(M7.3)を対象に算出し,鉄道事故のリスク軽減による減災効果を検証した.その結果,多くの鉄道利用者の危険率が半分以下となり,さらに鉄道事業者間で警報を共有することにより,S波到達前に警報を受け取れる鉄道利用者が大幅に増加することがわかった.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 沼田 宗純, 太田 賢治, 小林 明夫, 小松 高廣, 目黒 公郎
    2010 年 62 巻 6 号 p. 637-642
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,Smart Phoneを高密度な観測体制を補強するツールとしての可能性について基礎的検討を行った.Smart Phoneの内蔵加速度センサに着目し,振動データ収集アプリケーションを開発し,試験的に収集された加速度データによって,センサー性能の基礎的検討を行った.データ収集アプリケーションは,XYZ成分の加速度記録をテキスト形式のファイルとして保存する事として,Smart Phoneのメール送受信機能により,添付ファイルとして外部のPCに転送しPC上で詳細な分析を行えるようにした.センサー性能表評価試験は,比較用の高性能サーボ型加速度計を同時に振動台に載せ,リニアスイープ波,及び観測地震波計によって駆動し,周波数特性,波形の再現性についての評価を行った.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 沼田 宗純, 秦 康範, 大原 美保, 目黒 公郎
    2010 年 62 巻 6 号 p. 643-652
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,災害医療情報をリアルタイムに収集し,医療機関・行政・住民等,地域全体で災害医療情報を共有するためのITトリアージシステムを開発した.本システムを山梨大学医学部附属病院で行われた450名規模のトリアージ訓練において適用した結果,リアルタイムにトリアージレベル別の患者数の把握,各診療科の受診患者数の把握,容易なトリアージレベルの変更対応等,トリアージの高度化だけでなく,他病院,行政,住民を含めた地域全体で情報共有が可能となり,迅速な転院対応や住民からの問い合わせ対応が可能であることが確認できた.[本要旨はPDFには含まれない]
  • スワル ラクシュミ プラサド, 桑野 玲子, 佐藤 剛司
    2010 年 62 巻 6 号 p. 653-662
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    室内土供試体内を伝播する弾性波速度測定のためにバイモルフ型圧電素子を用いた受信センサーを開発し,その経緯を報告した.平均粒径の異なる3種類の粗粒材料(豊浦砂,ケイ砂,ヒメ礫)を用いてその性能を検討した.全ての供試体において,加速度計を用いた(Trigger-Accelerometer法)弾性波速度測定結果や,繰返し三軸試験による供試体剛性の静的測定結果とよく一致した.[本要旨はPDFには含まれない]
  • 古関 潤一, 堤 千花, デシルバ ナリン
    2010 年 62 巻 6 号 p. 663-666
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    粘性土を比較的高強度にセメント改良した試料を用いて繰返し中空ねじり試験を実施し,繰返し変形特性を評価した.さらに,同じ試料を用いて別途実施した繰返し三軸試験結果との比較を行った.中空ねじり試験では引張破壊が生じるため,三軸試験よりも小さいひずみレベルで非線形化した.この傾向は,特に拘束圧が低い場合に顕著だった.セメント改良地盤の大地震時応答解析を実施する際には,このような引張破壊の影響を適切に考慮する必要がある.[本要旨はPDFには含まれない]
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