生産研究
Online ISSN : 1881-2058
Print ISSN : 0037-105X
ISSN-L : 0037-105X
68 巻, 4 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
特集 持続可能な都市システムの構築を目指して
特集に際して
研究速報
  • 井料 美帆, ディアス チャリタ, 加藤 弘則, 霜野 慧亮, 中野 公彦
    2016 年 68 巻 4 号 p. 281-284
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    パーソナルモビリティは,特に短距離トリップに有効な新たな交通手段として注目されている.歩行者・自転車等の低速交通需要の多いアジア諸国においてパーソナルモビリティが実道展開するためには,他の交通手段との相互作用を適切に理解する必要がある.相互作用を表現するパーソナルモビリティの挙動モデルは,歩行者・車両挙動との類似点・相違点を理解したうえで,既存の歩行者・車両モデル等を改良することで構築可能と考えられる.本速報では,挙動モデルで用いられる説明変数の特性について,被験者実験による分析結果を報告する.

  • 本間 裕大, 篠原 悠介, 千葉 靖伸, 逸身 勇人
    2016 年 68 巻 4 号 p. 285-288
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    近年,クラウドアプリケーションなどの登場により,データセンタネットワークの重要性が増している.これらは,ピーク時に多くのトラヒックが発生する一方で,その他の時間帯において,多くのネットワーク機器がアイドル状態となることが,よく見受けられる.その意味において,ネットワーク機器の電源を,一時的に切ることは,電力消費量,グリーンネットワーキングの観点からも有益と考えられる.

    そこで本研究では,データセンタネットワークへの適用を目指し,トラヒック量に応じて,スイッチのon/off 制御をし得ることを考慮した電力消費量最適化システムの提案を試みる.具体的には,最適化システムの導出を混合整数線形計画問題として定式化することによって,構成するネットワークトポロジー,トラヒックマトリックス,輻輳の回避などを総合的に勘案した,適切なスイッチのon/off 制御を提案する.加えて,MLB マルチパス・ルーティングに基づく近似解法を提案・比較し,その性能評価について議論する.さらには,都市解析分野における,施設配置問題で近年提案された“共進化GA” を用いた定式化を援用した解法とも比較することによって,上述の問題に対し,多角的なアプローチを試みる.

  • 沖村 遥平, 本間 裕大, 鵜飼 孝盛, 栗田 治
    2016 年 68 巻 4 号 p. 289-292
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    夏の風物詩として存在感の大きなものに,都市部での花火大会が挙げられる.都市部で打ち上げられる花火を観賞するにあたって,周囲の建物群の影響は無視できないものであり,これらの高層な建物群によって,視界に届くはずの花火が遮蔽されてしまうのである. そこで本研究では,建物群が建ち並ぶなかでの花火の見え方に主眼を置き,建物による遮蔽と観測位置などを厳密に考慮した上で,視界にとらえられる花火の量を定量的に評価する.より具体的には,視対象となる打ち上げ花火が視界でどの程度の大きさを占めるかを,視対象の見かけの大きさを数値化した物理量である「立体角」を用いて評価すると同時に,花火の全形のうちどの程度の割合が視界にとらえられるかを,立体角の定義から直ちに算出される「可視率」を用いて評価し,これら2つの要素を評価指標とする.また,構築したモデルを都市部で行われている実際の花火大会のいくつかの事例へ適用し,実証的な視認性評価分析を展開する.

  • 本間 千尋, 本間 裕大
    2016 年 68 巻 4 号 p. 293-296
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    明治期に日本に移入された西欧モダンのピアノ文化は,戦後はライフスタイルの都市化に伴い全国的に浸透した.日本では子どもに楽器の演奏技術を学ばせる際にはピアノを選ぶ場合が多く,我々は自国の伝統楽器よりも西欧の楽器であるピアノの方に親しみを感じる.また現在の日本では,ピアノの経験者や国際コンクールの参加者は本場西欧を凌ぐ程になり,日本におけるピアノ文化は成熟期を迎えていると言えるだろう.このように戦後日本の都市化と不可分の関係にあり,多くの人々が趣味やレッスンで経験するようになったピアノ文化であるが,日本においてピアノ文化に関する研究は多くはない.そこで,本研究では,高度経済成長期が終焉した1980 年代以降のピアノ文化の受容を,質的調査を用いて検討し,それを踏まえた上でコンペティションデータを用い数理的解析から明らかにする.こうした視点からピアノ文化を検討することは,ピアノ文化の分析に新たな知見をもたらしてくれることが期待でき,また高度経済成長期終焉以降の日本社会の特質を垣間見ることにもなるだろう.

  • 原 菜摘, 郷右近 英臣, 目黒 公郎
    2016 年 68 巻 4 号 p. 297-301
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    2015 年4 月25 日11 時56 分(現地時間),ネパールの首都カトマンズ市から北西77km の地下15km を震源とするMw7.8の地震が発生した.周辺国を含め死者数が9,500人を超える大きな被害となった.しかし,被災地内の強震観測点が非常に少なかったため,一年以上経過した現在においても,高い空間分解能の地震動分布は明らかにされていない.本研究では,このような強震動観測点の少ない地域での地震動分布推定手法を構築することを目的とし,地震被害関数とリモートセンシングによる被害評価結果を用いて,2015 年ネパール・グルカ地震の被災地の地震動分布を推定した.

  • 堀田 真由子, 桑野 玲子
    2016 年 68 巻 4 号 p. 303-306
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    近年問題となっている道路陥没は,路面下の空洞が原因である.道路陥没の予防・対策に当たって路面下空洞の生成要因や成長状況を把握する必要がある.本研究では,福岡市より実際の路面下空洞データを提供いただき,QGIS 上で地形,交通量などの各種地図データ,地下埋設物との位置関係などと比較.空洞の生成状況との相関を評価した.加えて,空洞が頻発する箇所および成長した箇所の共通点を挙げるとともに大まかに空洞の発生・成長速度を算定した.

  • 堀内 佑樹, 桑野 玲子
    2016 年 68 巻 4 号 p. 307-310
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    2011 年東北地方太平洋沖地震における広域な噴砂により,路面の不同沈下などに加えて路面下空洞や陥没などの被害があった.これを踏まえ,水頭差による上向き浸透流実験や振動台実験により舗装亀裂からの噴砂発生を模擬した模型実験を行ってきた.舗装と地表面の隙間を流れる水平流によって表面侵食が発生し,それによって砂が運ばれ噴砂となり亀裂部分から噴出する様子が観察された.本報では,その一連の実験結果について検討した.さらに,粒径の異なる二層地盤や混合粒径を用いて作製した模型地盤で噴砂を再現し,地盤の粒度構成が噴砂に及ぼす影響について考察した.

  • 鈴木 俊也, 桑野 玲子
    2016 年 68 巻 4 号 p. 311-314
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    近年,次世代資源としてメタンハイドレート(以下MH)が注目されている.燃える氷とも言われるこの資源は日本周辺でも南海トラフなどにて,海底地盤の砂の間隙内を充てんする形で,水深およそ1000m 程度,圧力レベル10MPa 程の高圧環境下に貯留されていることが確認されている.このMH の商業生産に向けて解決すべき課題の一つに,MH 層からガス坑井内への出砂現象が挙げられる.本研究では実際の産出試験で出砂対策として用いられたグラベルパック法について,一次元カラム透水試験を通じてその安定性を評価することを目的とした.グラベルパック模擬層とメタンハイドレート模擬層の二層供試体の透水試験を実施し,グラベルパック模擬層への細砂の侵入,移動を観察した.

  • 沼田 宗純, 高津 諭, 林 恵利子, 近藤 一夫, 大川 純世, 目黒 公郎
    2016 年 68 巻 4 号 p. 315-320
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    東京大学生産技術研究所では,災害発生時に構成員の状況を把握するために点呼確認を実施し,毎年点呼票を用いた訓練を行っている.点呼票には各研究室や事務部など各組織のメンバーの氏名等を手書きで記入するため,「紙媒体」による受け渡し,その集計作業などに大きな課題がある.そこで本研究では,点呼票による受け渡しの非効率性,集計作業の煩雑さなどを解消するために,避難所情報共有システムCOCOA を使った避難訓練を実施し,点呼確認の有効性を確認した.その結果,リアルタイムにCOCOA により集計ができ,正確で,状況を共有できることに利点があることが示された.

  • 平山 研都, 郷右近 英臣, 目黒 公郎
    2016 年 68 巻 4 号 p. 321-325
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    現在の日本において災害による建物倒壊を抑止するためには,今後数十年にわたる人口減少の予測を考慮すれば,被災リスクの低い土地への人口誘導が効果的かつ現実的な手段と考えられる.また,被災リスクの低い土地への人口誘導によって,日本の地震保険の料金区分に生じている不公平を解消できる可能性がある.本稿では以上のような人口誘導による 2 種類の効果を検証した.本研究の結果から,岩手県においては,人口誘導によって2040 年における建物被害のほとんどを無くすことができることが示され,またリスクを反映させた料金区分に変更したとしても現在より格段に安価となることが示された.

  • 小林 大吉, 加藤 孝明, 河原 大
    2016 年 68 巻 4 号 p. 327-330
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    VR(仮想現実)を用いて,地震火災時の市街地延焼からの避難行動を把握する予備実験を行った.本研究の成果は以下の2 点である.第一に,リアリティのある地震火災避難VR を作成し,市街地火災の状況の表現手法を開発したことである.第二に,避難行動特性把握のための実験計画の立案及び予備実験を実施したことである.なお,予備実験の主な結果は,以下の2 点である.第一に,火災1 個の場合,火災までの距離が300m で,半数の人間が避難する.第二に,火災までの実際の距離よりも,近くで発生していると感じる傾向にある.

  • 昌本 拓也, 郷右近 英臣, 越村 俊一, 目黒 公郎
    2016 年 68 巻 4 号 p. 331-335
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    2011 年東北地方太平洋沖地震津波によって多数の死者が発生した. 津波に襲われる前に避難をすることは生き残るために大切である. しかし, 海岸近くにいる人々にとっては, そこから逃げることが難しい場合もある. この課題を解決するために目黒(2011)は, 自己浮上式津波避難施設を提案した. 本研究では, 発生が危惧される南海トラフ巨大地震津波を想定し, 高知県周辺での平面二次元での流体力空間分布を解析した. まず, 津波数値解析を行い流体力の空間分布を得た. 次に津波数値解析の結果を用いて,自己浮上式津波避難施設に作用する外力を計算した. その結果, 外力は最大で567.2kN になることが分かった.

feedback
Top