生産研究
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72 巻, 2 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
特集 生産数理グループ
特集に際して
研究解説
  • ルル ティモシー
    原稿種別: 研究解説
    2020 年 72 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    Ising マシンは,複雑かつ無秩序なシステムの特性を研究するために必要なエネルギー消費コストと時間を削減することを目的とする,さまざまな非従来型のハードウェアに実装された物理シミュレータである.多くの複雑な非凸(または頑丈な)エネルギーランドスケープ,特にバイナリスピンシステムのイジングハミルトニアンは,これらの物理シミュレータに直接マッピングすることができる.ここでは,状態が実変数によって記述されるアナログイジングマシンに焦点を当て,新しく提案されたダイナミクスの時間とエネルギー消費の減少について議論する.開発されたシミュレータは,複雑かつ無秩序なシステムの物理学を研究するための新しい方法を与えることが期待される.

  • 名波 拓哉
    原稿種別: 研究解説
    2020 年 72 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    シリコン神経ネットワークは神経系を模倣する電子回路システムであり,神経系の情報処理を高い電力効率で実現する為,次世代人工知能の基盤技術として,近年注目を集めている.シリコン神経ネットワークは神経細胞の挙動を再現するシリコンニューロンから構成されるが,我々はこれまでの研究で,少ない消費回路リソースで多種多様な神経細胞クラスを忠実に再現するDigital Spiking Silicon Neuron (DSSN)モデルの開発を行ってきた.本解説では,DSSN モデルについて,特にパラメータ探索手法を中心に,解説を行う.

  • 辻 祥太朗
    原稿種別: 研究解説
    2020 年 72 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    パラメータによって増大していく形状のホモロジー群の変化を計算する手法であるパーシステント・ホモロジー群は,単体複体の増大列であるフィルトレーションに対して定義されるホモロジー群である.Vietoris-Rips 複体を用いることで単体複体のフィルトレーションを点の集合から構成することができる.パーシステント・ホモロジー群は線形代数における掃き出し法の一種で計算することができる.本解説ではパーシステント・ホモロジー群の算法を紹介し,Vietoris-Rips 複体のパーシステント・ホモロジー群の計算例を提示する.

  • 山下 洋史
    原稿種別: 研究解説
    2020 年 72 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    与えられた論理式を満たす論理変数の割当の有無を求める充足可能性問題(SAT)は,計算機科学の理論と実応用の両面において重要な問題である.本稿では,Ercsey-Ravasz と Toroczkai によって提案されたSAT を解く力学系についての解説を行う.SAT を時間変化する最適化問題として定式化し,連続時間・連続状態空間上での最急降下法を用いて解くこの系は,過渡カオスなどの興味深い力学系的性質が知られており,電子回路としての応用も期待されるものである.

  • 宮原 英之
    原稿種別: 研究解説
    2020 年 72 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    機械学習は数理的および工学的な興味から多くの注目を集めている.その中でもベイズ推定は広く利用されており,変分ベイズ法はその代表的なアルゴリズムである.一方で,様々な文脈で量子計算や量子力学に基づく計算手法が注目を集めている.そこで本解説では,近年提案された変分ベイズを量子力学的に拡張したアルゴリズムの解説を行う.初めに教師なし学習の問題設定で定式化を行う.その後ハミルトニアン量子化に基づく量子化を用い,推定のための更新式を示す.さらに,教師あり学習の場合にも言及する.

  • 松木 彩星, 田中 剛平
    原稿種別: 研究解説
    2020 年 72 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    感染症の数理モデルは,複雑な感染症伝播過程の理解や感染症対策の有効性評価に用いられる.その中で,メタ個体群感染症モデルは,空間的に離れたパッチ(区画)に分布した個体群とパッチ間の個体の移動を考慮するモデルである.このような現実的要素を取り入れるモデルでありながら,ある程度の理論的解析も可能である.本稿では,一部のパッチに介入して(つまり感染症対策を施して)実効的な感染率を引き下げるような局所的対策に注目し,感染症の大規模流行を予防するために必要な最小介入割合(介入閾値)の理論的導出や選択的介入の有効性を検証するための数値シミュレーションについて解説する.

研究速報
特集 ITSで開拓するモビリティの新時代
特集に際して
研究解説
研究速報
  • 杉町 敏之, 郭 鐘聲, 須田 義大
    原稿種別: 研究速報
    2020 年 72 巻 2 号 p. 191-194
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    現在,提案されている自動車の遠隔操縦システムでは,従来の運転席を模擬したハンドルとペダルで構成された仕様となっている.遠隔操縦者への情報提供および操作入力については,通信速度などの影響により遅れが生じる.遠隔操縦者は運転時に体感情報が得られないだけでなく,運転操作を行う環境が一般の運転と大きく異なる.本研究では,遠隔操作車両に対する運転者の運転特性を明らかにするとともに,遠隔操縦システムで有効な運転操作と情報提示に関するインタフェースの研究開発を目的とする.本稿では,自動車の遠隔操縦システムに適合する運転操作のためのインタフェースについて,ドライビングシミュレータを用いて基礎検討を行った.

研究解説
  • 小野 晋太郎, 木田 侑, 渡邉 高之進, カーグ ミシェル, 須田 義大
    原稿種別: 研究解説
    2020 年 72 巻 2 号 p. 195-200
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    過去2 秒間の映像から警察官の手信号による交通指示を認識する手法を開発した.車載カメラ映像から指示者の骨格座標を連続的に推定し,深層学習(LSTM)を用いて手信号の現示を「赤」「青」の2 値および「その他」を加えた3 値に分類する.得られた現示状態と継続条件等から自車の停止・進行を判定する.実験の結果,「赤」「青」には類似の挙動が含まれており,それを「その他」として分離することで適切に判定できることが明らかになった.最終的な結果では,進行・停止の指示を正しく判定し,かつ,切り替わり時間の誤差(早すぎる進行指示および遅すぎる停止指示)を0.43 秒以下に収めることができた.

  • 馮 遠超, 小野 晋太郎, 板垣 紀章, 須田 義大
    原稿種別: 研究解説
    2020 年 72 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    交通事故は人間社会の安全を脅かしている。全ての事故原因において、交差点による視覚環境の不良が重大な要因と考えられる。このような問題を解決するために、車載カメラを用いてカーブミラーの中に映る接近物体の検出に試みた。Faster R-CNN を用い、車載カメラで撮影した運転シーンからカーブミラーを見つけ、さらにカーブミラー中に映る道路物体を検出した。検出した物体のバウンディングボックスをもとに各物体を追跡し、カルマンフィルターとオプティカルフローで軌跡の補間を行った。カーブミラー中に映る物体の垂直移動方向から、物体が近づいているか、遠ざかっているかを判断した。自作のデータセットを用いて提案手法の評価を行った結果、比較的に大きく映る道路物体は高い精度及び再現率で検出できるが、15*15 ピクセル以下の小さい物体は検出および追跡することが困難であることが示された。

  • 中野 公彦, 浅野 晃, 長澤 弘之, 高田 哲也, 貝塚 勉, 楊 波
    原稿種別: 研究解説
    2020 年 72 巻 2 号 p. 207-211
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    鉄道車両の自己位置をGNSS(全球測位衛星システム)により検知し,その情報を携帯電話のLTE 通信を利用して送信し,センターサーバーが鉄道踏切までの最短到達時間を計算し,警報機と遮断機の制御機に送信し,警報動作を開始するシステムがある.LTE 通信の汎用性を活かして,さらに鉄道踏切と自動運転車両を統合して制御するシステムを提案し,その性能を,大学構内の実験フィールドにある鉄道試験線と試験道路を用いた実験により示した.

研究速報
  • 皆川 佳唯, 酒井 雄也, 勝木 太
    原稿種別: 研究速報
    2020 年 72 巻 2 号 p. 213-217
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    大量に発生するコンクリートがれきの処理やセメント製造時のCO2 排出の削減が課題となっている.本研究では木材を使用することで,セメントを使用せずにコンクリートがれきを硬化体として再生する方法を検討した.具体的には,コンクリートがれきと木材のそれぞれを粉砕して得られる粉体を混合してホットプレスすることで硬化体を製造し,コンクリートと木材の割合,含水率,成形温度などが硬化体の曲げ強度に与える影響を検討した.実験の結果,これらの条件を変化させた多くのケースで,一般的なコンクリートの曲げ強度を大きく上回る結果が得られた.

  • 伊藤 遥子, 酒井 雄也
    原稿種別: 研究速報
    2020 年 72 巻 2 号 p. 219-221
    発行日: 2020/03/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    コンクリートの表面仕上げにおいて,養生剤の散布はコテの滑りを容易にするとされている.本研究はセメントペーストの粘弾性に界面活性剤系養生剤が与える効果の定量化を目的とし,剛体振子物性試験器を用いた測定を実施した.その結果,剛体振り子の自由減衰振動の周期および対数減衰率からセメントペーストの相対貯蔵弾性率および相対損失弾性率が推測可能であること,界面活性剤系養生剤を加えたセメントペーストの相対貯蔵弾性率および相対損失弾性率の増加は,無添加や養生剤の代わりに水を加えた場合と比較して遅延・抑制されることを確認した.

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