本稿では,緩い砂地盤に丸太杭を静的に圧入し,地盤を密実化することにより液状化対策とカーボンストックを同時に行うことができる工法の浅層改良工法への適用を検討した. 本研究では,中型せん断土槽を用いた1G 場振動台模型実験を実施した.丸太については相似則を考慮してPVC を使用した.多数の杭の圧入による改良範囲を変化させ,主に入力加速度と住宅模型のめり込み沈下量・傾斜角に着目し,改良効果を評価した.その結果,改良範囲を住宅模型より大きくすることにより,めり込み沈下量と傾斜角が大幅に低減することを確認した.
地盤の原位置応力状態を考慮したサウンディングの実施や小規模凍結サンプリング手法の開発のため,本研究では鉛直応力と水平応力を独立して制御できる加圧土槽を作製した.その加圧土槽では,体積ひずみと,ベンダーエレメントによるせん断波速度の測定が可能であるため,地盤の圧密時の微小せん断剛性率を従来三軸試験などで計測されてきた結果と比較することができた.比較結果により,微小せん断剛性率と間隙比の関係,および応力依存性の値は既往研究と整合的な結果が得られることを確認したため,本研究の加圧土槽はベンダーエレメントを用いて微小せん断剛性率を適切に計測できると結論付けられる.
本稿では2022 年3 月16 日に福島沖で発生した規模M7.4 の地震による天井落下被害について報告する.この調査では震度5 強以上の地域に位置する大規模集客施設である東北地方の計6 施設を対象に行った.これらの施設では大規模な天井落下から天井における小規模な損傷まで,施設によって被害の規模は異なるが,吊りボルトの破断や点付け溶接の外れ,ハンガーの開きなどの共通の被害が確認できた.また,このような被害から内部空間の人命を守るために,人命保護を最優先とした天井落下防止対策を施す必要があることを再確認した.
本研究速報では文化財建造物木材の破壊および非破壊試験による剛性・強度の比較結果について報告する.破壊試験では実大試験体および無欠点小試験体で3 点曲げ試験法により実施し,無欠点小試験体のほうが高い強度を示した.非破壊試験では応力波伝播法および打撃法により測定を行い,打撃法によるヤング率測定値において一部低い傾向が見られた.実大試験体の破壊試験と応力波伝播法による非破壊試験では剛性が比較的相関に近い傾向があり,一般的に言われている動的試験値が静的試験値より剛性が高くなる結果と同様の傾向が見られた.
輸送部門の脱炭素化,更には太陽光発電や風力発電などの導入促進に必要な調整力の提供手段として,電気自動車(EV)の導入が注目されている.しかし,EV 充電を「脱炭素化」する方法は自明ではない.本研究では,EV の充電の「脱炭素化」について,EV 利用者,電力小売事業者,電力システムの観点から整理し,既存の充電手法の課題を示す.その解決策として,EV の充電電力需要をグリーン電力などと契約する需要家の電気料金メニューに合算して精算する方法を提案する.この合算メニューを,移動する電力需要に対するサービスを指す概念としてのPlace of Use (PoU)の一例として位置付ける.