日本生態学会誌
Online ISSN : 2424-127X
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56 巻, 3 号
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総説
  • 増田 直紀, 中丸 麻由子
    原稿種別: 本文
    2006 年 56 巻 3 号 p. 219-229
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル フリー
    複雑ネットワークは、要素と要素のつながり方の構造と機能に焦点をあてた新しい研究分野である。生態学の多くの対象においても、地理的空間、あるいは抽象的空間で個体や個体群同士がどのようなつながり方にのっとって相互作用するかは、全体や個々のふるまいに大きく影響しうる。本稿では、複雑ネットワークについて概説し、次に食物綱や伝播過程の例を紹介しながら、生態学へのネットワークの応用可能性を議論する。
  • 石井 博
    原稿種別: 本文
    2006 年 56 巻 3 号 p. 230-239
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル フリー
    ポリネーター(花粉媒介動物)には、同じ種類の植物を連続して訪問する性質(Flower constancy:定花性)がある。この走花性のメカニズムについては、主に2つの仮説が提唱されている。採餌技術記憶の干渉仮説と探索イメージ仮説である。前者は、ポリネーターが複数の花に対応した採餌技術を同時に記憶しておくことができないため、1つまたは少数の種類の花に専門化することで効率的に採餌しているという説、後者は、ポリネーターは一度に一種類の探索イメージ(花探索の手掛かりとする色や形態)しか使うことが出来ないという説である。この両説は、最近明らかになりつつある昆虫の記憶メカニズムとも整合性がある。すなわち、最も引き出しやすい記憶形態である短期記憶は容量が小さく、一種類の採餌技術や探索イメージしか格納できないため、定花性が起きると考えられる。一方、定花性が植物にとって都合の良い行動であることは多くの研究者が明言しながらも、定花性が植物の繁殖や進化に与える影響を調べた研究は少ない。植物の密度が大きい時には定花性が顕著になることや、植物上での滞在時間が長い時ほど、次にも同種の植物を訪問する傾向があることが、数例報告されているにすぎない。定花性が、植物の繁殖や進化にどのような影響を与えているのかは、今後の研究が待たれる。
  • 三木 健
    原稿種別: 本文
    2006 年 56 巻 3 号 p. 240-251
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル フリー
    生態系の中でエネルギーと物質の動態は、一次生産者、消費者、分解者などのさまざまな機能群によって担われている。各機能群は複数種の生物によって構成されており、機能群全体の特性がどのような要因で決まっているかを明らかにするために、これまで多くの研究がなされてきた。その一つは、「被食-捕食関係」を基本とした機能群間の相互作用に注目した食物連鎖・食物綱解析であり、もう一つは、資源競争を基本とした機能群内の種間相互作用に注目した「生物多様性-生態系機能」研究である。これらの研究は、進化・個体群・群集生態学と生態系生態学との統合へ向けて進んでいる。本論ではまず、これらの研究、とくに「生物多様性と生態系機能の関係」の研究が抱える問題点を3つに分けて整理する。次にこれらの問題を解決するために現在発展しつつある新しい方法論を紹介する。これは、1.注目する機能群を相互作用綱の中に位置づけ、2.機能群内の生物多様性(種数・種組成・種の相対頻度)を所与のものとは仮定せず、生物多様性を決定する要因→生物多様性→物質循環過程という一連の過程に注目し、3.適切な単位を用いて生物多様性・群集構造を記述する、という方法論である。これにより、環境条件の変化→生物間相互作用の変化→群集構造・生物多様性の変化→物質循環過程の変化というステップで、環境条件に対応して形作られる生物群集の構造と群集が担う物質循環過程の特性をともに説明・予測することができる。実験的研究および数理モデルを用いた研究を例に挙げながら、メタ群集過程や間接相互作用網、生物多様性の中立説との関係などの今後さらに解決すべき問題について議論し、群集生態学に基づく物質循環研究の新たな方向性を探る。
記事
連載1 えころじすと@世界(5)
連載2 野外研究サイトから(5)
連載3 博物館と生態学(3)
連載4 学校便り(1)
連載5 北極紀行(1)
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