カナダで実施されたリター分解の地域間比較プロジェクト(Canadian Intersite Decomposition Experiment、以下CIDET)の概要とこれまでの成果を紹介する。CIDETでは、(1)カナダのさまざまな地域で採取された針葉樹や落葉広葉樹の葉など、のべ37リタータイプの実験材料について、元素分析、有機物組成の近似分析とともに、固体^<13>C核磁気共鳴光度計(solid state
13C NMR spectroscopy)による詳しい化学性の測定がなされた。(2)カナダの主要な生態気候区に含まれる21サイト(森林18サイト、湿地3サイト)において、11リタータイプ(葉10タイプ:アメリカネズコThuja plicata、アメリカブナFagus grandifolia、アメリカカラマツLarix laricina、ダグラスモミPseudotsuga menziesii、バンクスマツPinus banksiana、アメリカヤマナラシPopulus tremuloides、クロトウヒPicea mariana、アメリカシラカンパBetula papyrifera、ワラビPteridium aquilinum、ウシノケグサ属草本Festuca hallii、1タイプ:アメリカツガTsuga heterophylla)の長期的な分解過程がリターバッグ法により調べられた。実験対象となった21サイトの年平均気温は-9.8〜9.3℃、年降水量は266〜1,783mmの範囲にある。これまでに6年間の分解にともなうリター重量残存率の変化と窒素・リンの動態についての結果が報告されている。これらの結果に基づいて、気候変数とリター化学性変数から分解速度や窒素動態を予測する経験的な重回帰モデルと、Forest Litter Decomposition Model (FLDM)とよばれる数学モデルが提案されている。
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