日本生態学会誌
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59 巻, 3 号
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原著
  • 本多 健太郎, 野田 裕二, 津田 裕一, 安間 洋樹, 宮下 和士
    原稿種別: 本文
    2009 年 59 巻 3 号 p. 239-247
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    現在、絶滅危惧種イトウ(Hucho perryi)の日本における生息分布域は、北海道の一部の河川と湖沼に限られている。本種成魚の生態は、産卵習性に関する知見以外はほとんど知られていない。そこで、本研究では超音波テレメトリー手法を用いてイトウ成魚の季節的な移動パターンを明らかにする野外調査を実施した。北海道東部の別寒辺牛川(べかんべうしがわ)水系において、2007年4月下旬から11月下旬の間、超音波受信機・発信器により5個体のイトウ成魚の行動を追跡した。放流後、5個体すべてからデータが得られ、総受信回数は37,683回であった。上流域で放流した標識個体は、1〜4日かけて平均33.4±12.5km(Mean±SD)を降下した。降下後、調査期間にわたってほとんど移動しない個体と広範囲に移動する個体がみられたが、全体として、春季(5〜6月)は中流域から下流域、夏季(7〜8月)は中上流域から下流域、秋季(9〜11月)は下流域に主に生息する傾向を示した。ロジスティック回帰分析の結果、夏季に下流域に生息する標識魚の上流側への移動は現場の日最高水温の影響を強く受け、春季および秋季における中上流域の日最低水温は標識魚の下流への移動を促すことが明らかとなった。本魚による河川内の季節的回遊行動には、河川の水温レジームが関与することが示唆された。
  • 拝師 智之, 小泉 博, 新井 朋徳, 小泉 美香, 狩野 広美
    原稿種別: 本文
    2009 年 59 巻 3 号 p. 249-257
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    0.2テスラ(T)小型MRI装置を用いて収穫果実におけるモモシンクイガ(Carposina sasakii Matsumura)幼虫の食入害を非破壊的に観測した。安定性が高い三次元スピンエコー法(分解能(470μm)3)によって食害孔、虫糞とともに成長した幼虫を検出することができた。本測定法では輪郭が明瞭な画像が得られたが、撮像時間は一果実につき82分を要し、果実に食入した幼虫の行動観測のためには撮像できる試料数の制限が問題となる。食害孔および蓄積された虫糞は、輪郭の鮮明度が若干劣るが、三次元グラディエントエコー法(分解能(860μm)3)によって27分で検出された。グラディエントエコー法による食害孔の拡大の追跡は、果実における幼虫の活動を追尾する指標となると同時に、試料の数に関する問題を解決できる。画素サイズに対して幼虫は小さいので、幼虫自体の検出には画素サイズが小さい画像を長時間かけて撮像することとともに、画像回転などの画像処理技術が必要であるが、0.2T小型MRIは果実における蛾の幼虫の生態学において、ユニークで新しい視点を切り拓く研究手法となると考えられる
生態学会賞受賞者総説
  • 和田 英太郎
    原稿種別: 本文
    2009 年 59 巻 3 号 p. 259-268
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    近年、生態学に二つの手法が導入され新しい地平を切り開いている。一つは種レベルのDNA解析で進化系統を解析する分子生物学的方法となっている。他は安定同位体精密測定法で生態系の物質循環の特長やその物質の起源・生成経路・食物網の構造を知る有力な化学的方法を提供する。この手法はここ10年我が国の生態学の分野において急速に広まった。ここではこの手法の近過去史の概要、この手法の現状での評価、生物圏における炭素・窒素同位体比分布則の骨格、食物網解析の問題点、環境科学への応用、今後の展望についてまとめた。
特集 種分化における性選択と性的対立
連載1 野外研究サイトから(13)
連載2 博物館と生態学(11)
連載3 始めよう!エコゲノミクス(3)
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