熱帯季節林内に同所的に存在する株立ち型のタケ4種(
Gigantchloa albociliata、G.hasskariana、Bambusa tulda、Cephalostacyum pergracile)の動態を11年間調査し、一斉開花枯死時の種間の相互作用を検討した。調査地は、タイ西北部カンチャナブリ県メクロン長期生態試験地である。いずれの種も、最大稈高は10m程度であった。
G.hasskarianaは斜面下部、
G.albociliataは斜面中部から尾根部、
C.pergracileは尾根部に分布していたが、Btは斜面中部に主として
G.albociliataと混交して分布した。
G.albociliataと
C.pergracileの2種は期間中に一斉開花枯死が観察されたが、
G.hasskarianaと
B.tuldaは調査期間を通じて開花枯死しなかった。計9つの20mx20mのコドラートで、高さ1m以上の稈すべてをマークして、加入、生存、枯死を記録した。
G.albociliataと
C.pergracileの開花枯死は、それぞれ個体群レベルでほぼ同調しており、ピーク年には調査個体のほとんどの株個体(90%以上)が開花枯死した。周辺の
G.albociliata、
C.pergracileの一斉開花枯死による光環境の好転により、小さいサイズで待機していた
B.tulda個体の発生稈密度、サイズは急激に増加した。そのため、新たなコホートの補充がないにも関わらず、
G.albociliata、
C.pergracileが優占していた場所で、
B.tuldaの優占度は急速に高まった。一斉開花枯死という生活史が持つ適応的メリットの一つとして、親世代との競合を回避することでの次世代コホートによる同所的な更新の促進が挙げられている。しかし、熱帯性タケ類群集における異種の待機個体の存在は、この同所的な更新を阻害し、適応的なメリットを低下させる要因となるだろう。
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