日本生態学会誌
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60 巻 , 2 号
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追悼記事
原著
  • 藤村 善安, 加藤 邦彦, 藤原 英司, 冨士田 裕子, 竹中 眞, 柳谷 修自, 永田 修
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 157-168
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    北海道東部の釧路湿原では、流入する河川流域の開発などに起因する、湿原内への大量の土砂流入が指摘されているが、湿原内での土砂堆積実態は明らかにされていない。そこで大量の土砂を流送していることが明らかになっている久著呂川を調査地として、その後背湿地における(1)土砂堆積履歴の記載、(2)堆積環境の変化要因の検討、および(3)土砂の流入堆積による相対的な地表面高の上昇と地表に対する相対的な地下水位低下が生じたか否かの検討をすることを目的に研究を行った。土砂流入状況は、河道に直角な調査ライン上の4地点と、対照として土砂流送量の少ないチルワツナイ川の後背湿地2地点で採取した土壌柱状試料について、深さ別に求めた炭素含量から推定した。また137Cs濃度分布と樽前a火山灰層を利用して、1963年と1739年の堆積層を推定した。その結果、久著呂川調査区では1963年前後に土砂の流入堆積量が増加するようになり、その増加傾向は河道に近いほど著しいこと、チルワツナイ川調査区では1739年以降、土砂の流入堆積が少ない環境が継続していたことが明らかとなった。この久著呂川調査区における増加傾向は、1957年頃より頻発した洪水によって引き起こされたと考えられた。土砂の流入堆積による相対的な地表面高の上昇は、土砂の流入堆積が土壌堆積速度(cm/yr)に与えた影響を評価することで検討した。1963年以降の無機物堆積量は、河道から150m地点のK2で0.521kg/m2・yr、河道から250m地点のK4では0.098kg/m2・yrであった。一方1963年以降の年平均堆積厚は、K2、K4でそれぞれ0.37cm/yr、0.34cm/yrで、無機物堆積量のような明瞭な差は認められなかった。チルワツナイ川調査区C1、C2の無機物堆積量は、久著呂川調査区に対して多い地点でも3分の1程度であった。一方、年平均堆積厚は久著呂川調査区と同程度であった。これらのことから、久著呂川調査区において1963年前後に増加した流入土砂は、堆積厚に影響を与えていなかったことが示唆された。先行研究の結果と比較すると、本研究の調査ラインにおいて堆積厚に影響を及ぼす規模の土砂流入が認められる範囲の境界は、河道からの距離100mから150mの間にあると考えられた。これらの結果は、久著呂川後背湿地においては、堆積厚に影響を及ぼす規模の土砂堆積が認められる範囲に比べて、堆積厚に影響を与えない規模の土砂堆積が認められる範囲が広いことを示唆している。
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総説
  • 入江 貴博
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 169-181
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    温室効果ガスに起因する地球温暖化への懸念を背景として、欧米では外温生物の温度適応に関する研究集会が近年頻繁に開催されている。決定成長の生活史を伴う分類群を対象とした研究者の間では、低い温度環境で育った外温動物が長い発育期間を経て、より大きな体サイズで成熟するという反応基準の適応的意義が古くから議論の対象となってきた。この温度反応基準は、分類群の壁を越えて広く観察されることから「温度-サイズ則」と呼ばれている。温度-サイズ則が制約の産物であって、自然淘汰の産物ではないのだという可能性は、主に昆虫を対象とした実証研究によって繰り返し否定されてきた。その一方で、この普遍的な反応基準を進化的に支える適応的意義を説明する数多くの(相互に背反しない)仮説が提唱されている。この数年で温度-サイズ則の適応的意義を説明するための理論的基礎は整いつつあり、現在はそれらの妥当性を検証するための実証研究に対する需要が高まっている。しかしながら、多くの仮説は生活史進化の分野で理論研究の一翼を担ってきた最適性モデルに基づくものであり、数式を用いた表現に慣れていない者にとっては、その論理を直感的に理解することが容易でない。従って、本稿ではまず生活史形質の温度反応基準に関する過去の研究を幅広く紹介することで、この分野での基礎となる考え方を紹介する。次に、温度-サイズ則の適応的意義を説明するために提唱されている代表的な仮説をいくつか取り上げ、可能な限りわかりやすく解説する。最後に、この問題を解決するために今後取り組まれるべき課題を述べる。
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特集 生物の空間分布・動態と生態的特性との関係:マクロ生態学からの視点
  • 角谷 拓
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 183-186
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
  • 角谷 拓, 須田 真一, 鷲谷 いづみ
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 187-192
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    類似の環境変化のもとでも種の絶滅リスクはその生態的特性に応じて異なる。種間の絶滅リスクの差異の生態的要因を解明するための統計モデルによる分析手法が発展しつつある。本稿では、日本産トンボ目の種ごとの絶滅リスク評価、および絶滅リスクに及ぼす生態的特性の効果を分析した研究を紹介する。このような種間比較アプローチは、種の絶滅リスクに大きな効果を持つ人為要因の特定に有効である。
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  • 大谷 雅人, 石濱 史子, 西廣 淳
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 193-205
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    劇的に増加しつつある絶滅危惧種を効率的にモニタリングし、適切な保全策を講じるためには、絶滅危惧種の生態的特性における一般的な傾向を多種間の比較によって抽出し、詳細な現状調査の対象となる種やハビタットタイプの選定に活用するマクロ生態学的手法が有効である。しかし、絶滅リスクの大きさと生態的特性の関係は、地域や系統グループによって異なる可能性がある。本研究では、気候帯の異なる2地域(神奈川県と琉球列島)の被子植物、絶滅危惧種の出現状況に関して対照的な傾向を示す2つの科(ラン科とイネ科)を対象として、レッドリストランクと生態的特性の関係を、系統関係の効果を考慮した階層ベイズモデルによって検討した。その結果、地域間では木本において絶滅リスクが低い、科間では広域分布種を含む科でリスクが高いという傾向が共通していた。しかし、生育環境や生活史型、植物体サイズなど、地域間・科間で傾向の異なる生態的特性も多いことが明らかになった。また、絶滅危惧種は特定の科に偏って出現する傾向があり、絶滅リスクと生態的特性との関係は系統に関してランダムではなかった。これらの結果から、マクロ生態学的手法を用いる際には、全国スケールの指標ではなく、少なくとも気候帯の違いを考慮した空間スケールでの分析が必要であること、系統的制約を考慮した統計手法を用いるべきであることが示唆された。
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  • 赤坂 宗光
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 207-215
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    外来生物のどのような形質が、本来の分布域外での定着、分布拡大の成功と関連しているか、という問いは生物学的侵入の大きな命題である。この命題は40年以上も前から取り組まれているものの、対象とする空間的範囲や種数が限られたものが多かった。近年、デジタル化された大規模なデータセットの整備が進み、広域に生育する多くの種を対象とすることが可能になったことで、注目する形質に対しその影響の一般性の検討が容易になってきた。マクロスケールにおける大規模なデータセットを用いた研究では、問題設定により対象とする空間範囲(外来種の供給元、侵入先)や、比較する生物相(外来種と在来種、外来種同士)、対象とする種数等が異なる。また、近年、統計解析を実施する際、結果の偏りを避けるために、対象とする種の系統関係や、これまでに侵入した散布体や個体の数、個々の種が侵入した時期を考慮することが可能になってきた。さらに、個々の種の侵入先での分布域の広さを侵略性の指標とする研究が増えてきたが、その広さを評価する空間スケールも結果に影響を与えることから、今後、データセットの整備や解析の際に配慮が求められる。今後、注目する生物の分布と形質の情報に加え、生育地の特性、さらには捕食者など生物間相互作用のみられる生物の分布や形質を考慮に入れる解析を行うことで、外来種の侵略性と関係の深い形質に対する理解は深まるだろう。マクロスケールの研究は広域を対象としたデータセットがあって初めて進めることが出来る。データセットを活用した成果が示されることで、その整備の有用性が認められ、さらに新たなデータセットが構築されるという正の循環を生み出すことで、マクロ生態学が発展することを期待する。
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  • 宮脇 成生, 鷲谷 いづみ
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 217-225
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    外来生物による生物学的侵入が世界中で増加し、これらの侵略性に関する研究も急増した。外来植物の侵略性に関する既往研究は、ほとんどが導入先における定着以降の侵入段階を対象とするため、その前の段階に関する知見が限られている。本研究では、アメリカ合衆国を原産地とする日本の河川域の外来植物を対象として、原産地における分布特性(農耕地における雑草ステータス、分布範囲、湿地選好性)、意図的導入の有無、侵入後期間が、侵入成功に与える影響を検証した。日本の河川域における侵入を「未定着」、「定着」、「優占群落形成」、「広域で優占群落形成」の4段階に分類し、それぞれの段階から次の段階に到達するか否かを、一般化線形混合モデル(GLMM)により解析したところ、農耕地における雑草ステータス、分布範囲、湿地選好性、意図的導入の有無が侵入の成功に関連のあることが明らかになった。
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  • 奥田 武弘, 野田 隆史, 山本 智子, 堀 正和, 仲岡 雅裕
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 227-239
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    マクロ生態学で対象とされる様な大きな空間スケールでは、生物群集は内外に環境の不均一性を持つパッチ状の生息地に分布しており、これらのパッチ間では生物や物質の移動が生じる開放系として存在している。近年になり、開放系における野外実証研究や理論モデルが発展してきており、群集構造決定における生息地の環境の影響(環境プロセス)と空間構造の影響(空間プロセス)の相対的重要性もたびたび議論の的となっている。生物の生態的特性は群集構造決定における環境プロセスと空間プロセスの両方に影響を与えているために、環境プロセスと空間プロセスの相対的重要性を異なる生態的特性を持つ生物群間で比較する方法は、群集構造決定機構の一般則とその変異性(パターンやメカニズムの変化)を解明する上での有効なアプローチの一つとなるだろう。本稿では、生態的特性を考慮したマクロ生態学研究の一例として、三陸沿岸の岩礁潮間帯に生息する3つの生物群(海藻、固着性動物、移動性軟体類)を対象に、群集構造決定機構における環境要因と空間要因の相対的重要性を調べた研究について紹介する。群集構造決定機構における2つのプロセスの相対的重要性を明らかにするために、Variation Partitioningを用いて群集構造のばらつきの程度に対する環境の異質性と空間構造の説明力を調べた。解析の結果、全ての生物群で環境要因(海藻:25.9%、固着性動物:34.8%、移動性軟体類:14.2%)と空間構造(海藻:29.0%、固着性動物:5.9%、移動性軟体類:9.3%)の両方が群集構造のばらつきの程度を有意に説明していた。この結果は、例え同じハビタットに生息して共通の資源を利用し、相互作用する生物群であったとしても、生態的特性の違いに依存して群集構造決定機構が異なることを示唆している。
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  • 土居 秀幸, 高橋 まゆみ
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 241-247
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    地球温暖化による気温上昇の影響は、広く生態系に拡がりつつあり、フェノロジー(生物季節)のタイミングにもその影響が波及しつつある。近年、今まで蓄積されてきた長期データを使用した研究により、地球温暖化が植物・動物のフェノロジーのタイミングに、大きな影響を与えていることが明らかとなってきた。しかし今までの研究では、ある場所でのフェノロジーの温暖化への反応を検討している場合が多く、そのマクロ的な傾向について検討した研究例は未だに少ない。気象庁では、1953年から現在まで全国102ヵ所の観測所で、のべ120種以上の植物・動物種についてその開花・発芽・落葉・初見日・初鳴日などのフェノロジーを記録している。全国102ヵ所という広範囲で長期に観測されたフェノロジーデータを用いれば、フェノロジーの温暖化への反応をマクロエコロジーの視点から考えることが可能である。そこで本稿では、気象庁・生物季節データセットを用いたマクロスケールおけるフェノロジーと気候変動の関係についての研究、特にフェノロジーの温度反応性の緯度クラインと、温度反応性への遺伝的多様性の影響について紹介する。まとめとして、今後のマクロスケールでのフェノロジー研究の意義と方向性について述べる。
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  • 田中 嘉成
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 249-253
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    生物多様性と生態系機能の関係性の解明と、それに基づいた生態系の影響評価のための新たなアプローチとして、生物の機能形質(生態形質)に基づいた枠組みが進展している。理論的な面では、群集レベルでの機能形質の動態や、生態系機能の応答の定式化のために、集団遺伝学や量的遺伝学の進化理論が応用されている。実証データと理論的枠組みの連携がさらに進めば、生物の分布情報、環境要因データ、生態形質のデータベースに対する統合的な解析から、生態系影響評価が可能になると期待される。
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  • 矢原 徹一
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 255-260
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    マクロ生態学の歴史は18世紀の博物学にさかのぼる。当時の博物学はまさに地球規模の科学であった。そして当時の博物学者(ナチュラリスト)は、地理学、地質学、分類学を広く学んでいた。しかし20世紀に入って発展した生態学は、これらの博物学的諸分野と距離をおいてしまった。最近になって、生態学はマクロ生態学にたどりついた。しかしマクロ生態学はまだ、地理学、地質学、分類学との十分な復縁を果たしていない。マクロ生態学のこれからの発展においては、地理学、地質学、分類学との連携が大きな駆動力を生み出すだろう。また、過去5万年間に人類が生態系・生物多様性にどのような影響を与えてきたかを問うことが重要である。
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  • 山浦 悠一, 天野 達也
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 261-276
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    マクロ生態学は、大きな時空間スケールで生物の個体数・分布・多様性を扱う分野である。近年、人類が引き起こしている地球規模での環境変化が生物多様性に及ぼす影響が注目を集めるなか、マクロ生態学の重要性が認識されつつある。本稿では、まずマクロ生態学で扱われてきた課題とマクロ生態学の特徴を整理する。そして、マクロ生態学を発展させるための有望なアプローチの一つとして、生物の生態的特性の活用を挙げる。生態的特性とは、生物の形態的・生理的・表現的な特徴ことのを指し、生物の行動や環境への反応、資源(生息地)要求性、生態系内での機能、他の生物に及ぼす影響力なども含まれることもある。生態的特性を活用することにより、マクロスケールでの生物-環境の関係性の理解・予測が促進されるだろう。マクロ生態学の今後の課題として、局所生態学との統合や時間的視点の考慮などが挙げられるが、生態的特性の活用はこれら課題の解決に大きく貢献するだろう。人類が地球上で優占する現在、生物多様性を理解、予測、保全するうえで、マクロ生態学の更なる発展が望まれる。
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学術情報
  • 庄山 紀久子, ブライモー アデモラ
    原稿種別: 本文
    60 巻 (2010) 2 号 p. 277-281
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    土地変化科学(Land-Change Science)は、陸域システムを人間-環境結合システム(Coupled Human-Environment System)として捉え、その動態の解明を目指す学際的な研究分野である。陸域システムの変化は、人間社会と生物物理環境という二つのサブシステムの相互作用に基づく。IHDPとIGBPのコアプロジェクトであるGLP(全球陸域プロジェクト)は、持続可能な陸域システムの構築を目指し、土地変化科学を牽引する国際研究計画である。2006年に発足したGLPは土地変化科学領域における国際ネットワークを形成し、異なるバックグラウンドを持つ研究者が各々の専門領域を超えた分野横断的な課題を解決するための機会を提供してきた。今後の土地変化科学研究は、生態学を含む関連する研究分野の協力によって発展することが期待される。
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連載 博物館と生態学(13)
連載 野外研究サイトから(15)
連載 始めよう!エコゲノミクス(5)
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