日本生態学会誌
Online ISSN : 2424-127X
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61 巻 , 2 号
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原著
  • 伊藤 信一, 鈴木 智和, 小南 陽亮
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 2 号 p. 123-131
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    陸生のカニ(陸ガニ)が生息地の植物に対して果実採食と種子散布という作用を及ぼすことは熱帯・亜熱帯において数例知られているが、日本のような温帯では報告例が見当たらない。そこで、本研究では、陸ガニによる果実の選好性と採食・運搬行動を明らかにし、その結果から陸ガニが温帯海岸林において種子散布者や種子食者として作用するかを検討した。調査は浜松市にある海岸林とその周辺の竹林で行い、日本に広く分布するアカテガニ、ベンケイガニ、クロベンケイガニを対象に、果実の選好性、種子の取り扱い、果実の採食場所を比較した。飼育下でも野外の生息地においても、3種の陸ガニは多様な果実を好む傾向がみられた。アカテガニでは採食時に種子を破損する頻度が他の2種よりも低く、海岸林の多様な植生で活動し、採食した果実の種子を巣穴から離れた場所にも落としていた。一方で、クロベンケイガニでは、種子を破損する割合が高く、生育可能な植物が限られる湿った環境で主に活動しており、巣穴近くに果実を運んで採食する傾向が強かった。ベンケイガニでも種子を破損する頻度が高かったが、活動する植生は多様であった。これらの結果から、種子散布者となる可能性はアカテガニ、ベンケイガニ、クロベンケイガニの順に高く、種子食者となる可能性はその逆であると考えられた。すなわち、温帯の海岸林においても陸ガニは種子散布者または種子食者となっている可能性が高く、陸ガニの種によってその作用は異なることが示唆された。
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総説
  • 水口 亜樹, 永井 孝志, 浅井 元朗, 池田 浩明
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 2 号 p. 133-153
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    農業は食糧の安定的な供給を第一の目的とする人間活動であるが、生態リスクを引き起こす複数の要因を含んでいる。この生態リスクは個別の要因ごとに評価・管理されているが、異なる生態リスク要因間にはしばしばトレードオフ関係が生じ、ある要因の生態リスクを低減すると別の要因による生態リスクを増大させてしまう。また、農業活動は経済行為であるため、経済性を無視したリスク管理は農業生産者に受容されない。したがって、これらの要素を統合した統一的なリスク評価を実施すべきであるが、その方法は確立されていない。そこで本稿では、農業に由来する生態リスクの要因として農薬の流出、遺伝子組換え(GM)作物の逸出、雑草防除を取り上げ、個別のリスク評価法を概説するとともに、これらの生態リスクを統合する方法論を検討する。生態リスクは、農薬とGM作物ではそれぞれ農薬取締法とカルタヘナ法に定められた方法で評価されているが、雑草防除には該当する法律がない。農薬は、水系生態系への影響を想定し、定められた緑藻類の増殖速度、ミジンコ類の遊泳阻害率、魚類の致死率を用いたハザード比(環境中予測濃度/急性毒性基準濃度)に基づいて生態リスクが評価される。GM作物は、農地周辺と輸送路を想定し、 GM作物自体の競合性、有害性ならびに交雑性を指標とした宿主作物との実質的同等性に基づいて評価される。雑草防除は、農地内とその周辺を想定し、雑草の発生量を指標とした経済的許容性に基づいて防除法が選択されており、現段階では生態リスクは考慮されていない。このように、リスク要因ごとに評価項目が大きく異なっており、単純な加算によって生態リスクを統合することは困難である。異なるリスクを統合する際、費用便益分析や多基準分析がしばしば用いられるが、これらの方法には一長一短があるため限定的な使用に限られている。より現実レベルでの意思決定に活用するためには、共通する評価フレームによる総合的なリスク評価が必要である。農薬、GM作物、雑草防除というリスクは、「農法」の中で極めて密接に関連している。したがって、農業由来の生態リスクを適正に統合するためには、バックキャスティング手法に基づく共通目標の設定と農法に基づく生態リスク評価が有効であると考えられた。
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特集 三宅島2000 年噴火後の生態系の回復過程
  • 上條 隆志, 樋口 広芳
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 2 号 p. 155-156
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
  • 上條 隆志, 川越 みなみ, 宮本 雅人
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 2 号 p. 157-165
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    2000年噴火以降の植生にみられた変化について、著者らの既存の報告を中心にして紹介する。噴火初期の植生被害は、陥没カルデラの形成に伴う山頂部の消失、泥流の発生、火山灰の堆積による被害であった。山頂部の消失によりハコネコメツツジなどが島内で絶滅した可能性がある。火山灰放出の終息後も、二酸化硫黄を含む火山ガスの放出が続いたため、噴火後も樹木被害が進行し、植生は退行的に変化した。その一方で、特定の草本種が増加した。草本優占種の変化としては、オオシマカンスゲからハチジョウススキへと変化する地点が多かった。2005年以降オオバヤシャブシなどの木本は全体増加傾向にあるが、増加がみられない地点も多く、場所によってはハチジョウススキ優占群落が長期的に成立し続ける可能性がある。噴火と二酸化硫黄放出によって島内で減少した種がある一方で、噴火後に特異的に増加した種もみられた。その一つであるユノミネシダは火山ガス濃度の高い島の東部に多く出現した。
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  • 高橋 俊守, 加藤 和弘, 上條 隆志
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 2 号 p. 167-175
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    時系列的に観測した衛星画像を用いて、三宅島2000年噴火後の植生の変遷をモニタリングした。1994年から2009年にかけて、JERS-1/OPS及びTerra/ASTERによって観測された16時期の画像を用い、噴火前1時期および噴火直後2年まで、噴火後3〜5年、噴火後6〜9年の3時期分のNDVI画像に集成した。これらのNDVI画像をもとに、ISODATAクラスタリング法により教師無し分類を行った結果、NDVIの変遷パターンを分類することができた。分類された画像では、噴火後もNDVIの値が相対的に高く、噴火に伴う植生被害が相対的に少ない地域が認められた。これらの地域は樹林地を示しているが、NDVI値は徐々に減少する傾向が続いていた。一方で、噴火後にNDVI値が著しく減少し、その後増加に転じている、草地を示すグループが認められた。NDVI値の変化が植生のどのような変化に対応しているか検証するため、三宅島南西部の阿古地区において、噴火後に継続して実施されている11地点の植生調査の結果をもとに対応関係を評価した。植生構造を高木層、亜高木層、低木層、草本層に分け、それぞれの階層の植被率を合計した値とNDVIとの相関分析を行った。この結果、それぞれの階層の植被率を合計した値とNDVIにはいずれの時期においても有意な相関関係が認められた。ただし、それぞれの階層の植被率とNDVIの相関関係は、植生変遷の過程とともに変化し、一定でなかった。
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  • 加藤 和弘, 樋口 広芳
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 2 号 p. 177-183
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    三宅島において2000年噴火後の鳥類の生息状況を調査してきた。噴火直後に鳥類は一時減少した。その後、植生被害の少ない場所では鳥類の個体数は増加し、近年ではほぼ安定している。ただし、鳥類の種数(種密度)や個体密度は樹木植被率と正の相関を一貫して示しており、植生が破壊されて回復していない場所では、植生がより健全な場所に比べて鳥類群集は種密度、個体密度ともにより小さかった。この相関関係は噴火後終始一定であったわけではなく、回帰直線の切片が有意に正の値をとるという状況、すなわち植生が破壊されている場所でもある程度の鳥類が記録されるという状況が、2005〜2007年にかけて認められた。これは、何らかの理由、おそらくは衰退木や腐朽木から発生した多量の昆虫により、植生が貧弱な場所でも鳥類の食物が供給されていたことによると考えられた。2008年度になってこの状況に変化が見られ、植生が破壊された場所では鳥類の種密度、個体密度ともに小さくなった。今後、昆虫の調査結果との対応付けを行う必要があるが、腐朽木や衰退木からの昆虫発生がこれら樹木の消失や除去に伴って減少しつつあるのであれば、樹林性の昆虫食の鳥類は、本来の照葉樹林が回復するまでの間に食物の深刻な不足に直面することが懸念される。
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  • 阿部 晴恵, 長谷川 雅美
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 2 号 p. 185-195
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    生物間相互作用を通じた森林生態系の動態解明には、安定した生態系に関する研究だけではなく、環境改変に伴う反応が生物群集にどう現れ、どのように変化していくのかを観測していく必要がある。このような研究を、通常自然生態系において行うことは困難であるが、2000年に始まった伊豆諸島三宅島における噴火活動は、大きな撹乱作用による生態系の耐性試験になっている。このため、三宅島における噴火がその生態系に与える影響を評価し、森林再生過程のモニタリングをすることは、島嶼生態系成立のメカニズムを理解するための重要な知見を提供することになるだろう。そこで、筆者らは森林の維持機構を生物間相互作用の観点から解明するモデルとして、火山ガスに対する耐性の強いツバキ科の繁殖をめぐる生物間相互作用に注目し、噴火が繁殖成功にどのような影響を与えるのかを研究してきた。本稿では、ヤブツバキとメジロの花粉媒介系を中心に紹介する。研究結果をまとめると、噴火という撹乱作用は、1)ヤブツバキ個体そのもの(開花密度、果実の生存率ほか)には負の影響を与えるものの、2)開花密度の低下は鳥類による花粉媒介の効率を上昇させ、受粉率、鳥類に付着した花粉プールの遺伝的多様性に正の影響を与える、という2点にまとめられた。さらに、ラジオテレメトリー法を用いて推定したメジロの行動圏サイズは、開花密度の低いところで広くなり、上記の結果を裏付けるものであった。つまり、ヤブツバキ-メジロの花粉媒介系は噴火のような大きな撹乱に対して耐性を持っているということができる。また、花粉媒介者である鳥類は高影響地域に様々な植物の種子を糞として運んでいくという別の相互作用を生む可能性もあるため、今後も残存する生物(相互作用系)の存在が島嶼生態系の回復にどのように繋がっていくのかを注目する必要がある。
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  • 槇原 寛, 星 元規, 大村 和香子, 岡部 宏秋, 鎌田 淳史, 安岡 竜太
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 2 号 p. 197-202
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    三宅島では2000年の噴火後、一部の甲虫で大発生が観察された。カミキリムリ類では、2004年まではフタオビミドリトラカミキリの大発生が顕著であったが、2007年には捕獲個体数は減少した。本種は、材が腐朽する前の樹皮付きの硬い材に穿孔するため、噴火直後に増加し、腐朽した材が増加するに伴って減少したと考えられる。また、材食性甲虫の中では、噴火以前には記録のなかった希少種も捕獲された。材食性以外の甲虫では、イズアオドウガネの大発生が見られた。また、大発生が確認できた場所は、島の高標高の植生被害の著しい地域であった。今後はこれらの昆虫類の動向を見極め、三宅島の昆虫相がどのように変化していくのか、村民の生活に影響を与えるような昆虫類の異常な増加が認められるのかを正確に把握する必要がある。
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  • 川越 みなみ, 上條 隆志, 田村 憲司
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 2 号 p. 203-210
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    三宅島2000年噴火火山灰堆積地における植生-土壌系の初期発達過程を明らかにする一環として、植生と土壌の炭素蓄積量、土壌微細形態について、発達程度の異なる植生が成立する地点間で相互比較をした。植生の発達程度と土壌有機物層の厚さには対応関係がみられ、表層の土壌微細形態も亜角塊状構造から団粒内孔隙に富む小粒状構造、軟粒構造へと変化した。これらの変化には、植物体による新鮮火山灰への有機物の付加や土壌動物の活動が関与していると考えられた。2000年の噴火から8年経過した火山灰堆積地における炭素蓄積量は、325g/m2から3010g/m2であり、乾土あたりの表層の全炭素含有率は、0.34%から1.03%であった。植物体と土壌で炭素蓄積量を比較すると、植生が発達した地点ほど、植物体が占める炭素蓄積量の割合が大きくなった。
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  • 藤村 玲子, 佐藤 嘉則, 難波 謙二, 太田 寛行
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 2 号 p. 211-218
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    森林をはじめとする植物-土壌生態系では、光合成による一次生産と微生物による有機物分解のバランスが成り立ち、豊かな生物相が維持されている。しかし、火山噴火というイベントはこの生態系を壊してリセットしてしまう。新たに生じた火山灰などの火山砕屑物や溶岩に住み始める生物は、肉眼では見えない微生物である。本稿では、三宅島2000年噴火火山灰堆積物に住みつく微生物について、2003年から6年間にわたって調査してきた結果を紹介する。まず、調査初年時に採取した火山灰堆積物の細菌密度の測定結果では、すでに1gあたり108の高いレベルに達していた。直接試料から抽出したDNAの16SリボソーマルRNA遺伝子を解析した結果は、Leptospirillum ferroxidansAcidithiobacillus ferrooxidansといった独立栄養性の鉄酸化細菌が優占する細菌群集構造を示した。供試火山灰堆積物にはCO2吸収活性があり、十分に高いニトロゲナーゼ活性も検出されており、これらの活性は鉄酸化細菌に由来することが推察された。2009年の調査においても、三宅島雄山上部の火山灰堆積物は酸性状態に維持され、鉄酸化細菌の優占が続き、化学合成無機独立栄養代謝が中心の微生物生態系であることが示唆された。以上の結果をもとに、火山灰堆積物に形成される微生物生態系のエネルギー代謝と初成土壌への有機・無機物質の蓄積について推察する。
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  • 上條 隆志, 樋口 広芳
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 2 号 p. 219-226
    公開日: 2017/04/21
    ジャーナル フリー
    三宅島2000年噴火の生態系の回復過程に関する研究から得られた知見を整理した。(1)生物相の変化の概略。2000年噴火の経緯と生物相にみられた主な変化についてまとめた。(2)攪乱モザイク形成。噴火と火山ガス放出によって、堆積深や風向きに応じた攪乱モザイクが形成された。(3)噴火後に増加した種。先駆種や火山ガスに耐性のある種の増加のほか、攪乱後の資源変動が強く関係した大発生が昆虫を中心にみられた。(4)植生と鳥類の回復過程。植生被害と鳥類群集の間には明瞭な関係がみられたが、回復過程としてみた場合、単純な森林性の鳥類の増加傾向は示さなかった。(5)生態系回復のエネルギー源。陸上生態系を支えるエネルギー源は、基本的に太陽からの放射エネルギーである。その一方で、枯死木などの噴火前の光合成産物を分解・消費することによって得られるエネルギー源と硫黄化合物などの無機物の持つ化学エネルギー源の重要性が示唆された。(6)巨大攪乱跡地の総合的モニタリング。三宅島における研究例を踏まえ、巨大攪乱の跡地のモニタリングにおいては、サンプリングデザインを同じにすること、枯死木などの研究対象とされにくい資源の評価の重要性を指摘した。
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連載1 野外研究サイトから(18)
連載2 博物館と生態学(16)
連載3 始めよう!エコゲノミクス(6)
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