日本生態学会誌
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61 巻 , 3 号
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追悼記事
総説
  • 鈴木 美季, 大橋 一晴, 牧野 崇司
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 3 号 p. 259-274
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー
    生物間相互作用がもたらす形質進化の研究では、個々の生物が果たす役割とそのメカニズムについて、さまざまな角度から調べる統合的アプローチが必要とされている。被子植物のいくつかの種が見せる「花色変化」という現象は、植物、動物の両面から興味深い問題をいくつも含んでおり、こうした研究に適している。花色変化は、送受粉の役目を終えた花をわざわざ維持し、かつ色までも変えるという不思議な現象である。この形質の適応的意義として提唱された従来の仮説には、1)古い花を維持して株のディスプレイを大きく見せ、より多くのポリネーターを誘引する効果と、花粉や蜜を含まない古い花の色を変え、株を訪れたポリネーターを若い花に誘導する効果を組みあわせることで、他家受粉を促進するというものと、2)色を変えることで報酬を含まない花の存在をアピールし、株を訪れたポリネーターの立ち去りを早める効果をつうじ、他家受粉を促進するというものがある。しかし、これらの仮説はいずれも他家受粉の測定による裏づけがなされておらず、また個々の事例に見られるちがいを十分に説明できない。たとえば、古い花を摘みとった実験では、ポリネーターの訪問が減ったとの報告もあれば変わらなかったとする報告もある。また、被子植物の中には花色変化しない種も多数を占めている。さらに、色の変化部位や変化の引き金となる至近要因には著しい種間差がある。今後は、色変化をめぐる諸形質やそれらが引き起こす効果の「多様性」に目を向け、花色変化が、どんな条件のもとで、どんな形質との組みあわせにおいて進化するのか、といったより一般的な疑問に答えてゆく必要がある。そのためには、まず第一に、花の各部位の色や蜜生産の変化パターン、個花の寿命、開花スケジュール、そしてこれらの組みあわせによって実現される株全体のディスプレイ設計について、種間比較をおこなうことが有効だろう。第二に、ポリネーターの種類や個体の学習量のちがいによって生じる、花色変化への反応の多様性を把握する必要がある。そして第三に、花の形質とポリネーターの行動の相互作用をもとに、花色変化の進化を包括的に説明するための理論の整備も望まれる。こうして植物の繁殖生態学にとどまらず、生理学、行動学、そして理論生物学を組みあわせることで、花色変化、ひいては生物間相互作用がもたらす形質進化の研究は大きな進展をとげるだろう。
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  • 徳地 直子, 大手 信人, 臼井 伸章, 福島 慶太郎
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 3 号 p. 275-290
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー
    本稿では、近年増加が指摘されている窒素負荷が森林生態系に与える影響について既存の文献を整理し、窒素飽和を規定する要因と今後研究が必要な課題について検討した。産業革命以降、化石燃料の燃焼や化学肥料の使用に伴って多量の反応性窒素が大気中に放出され、降下物として生態系に負荷される窒素量が増加している。温帯森林生態系の多くは窒素制限下にあるが、生物のもつ窒素保持能を超えて窒素が負荷されると、窒素は制限要因ではなくなり"窒素飽和"に至る。森林生態系からの流出水中の硝酸態窒素(NO3-)濃度は窒素負荷量の増加に伴って上昇するため、流出水中のNO3-濃度やその変動が窒素飽和に至る指標として用いられる。しかし、集水域レベルでの窒素状態(N status)は植生・土壌・土地利用履歴などの影響を受け非常に多様で、窒素負荷に対する応答は一様でない。加えて、自然撹乱も森林生態系から窒素を流出させてN statusに影響し、このような自然撹乱が森林生態系の窒素制限の維持に寄与しているとする窒素制限理論も提示されている。そこで、窒素飽和の予測のためにはNO3-だけでなく有機態窒素や脱窒で生じる森林生態系からの窒素流亡量の推定精度の向上と、森林生態系のN statusの正確な把握が必要であると考えられた。一方で、定量的なモニタリングに加え、簡易でより鋭敏である植物などの種組成や指標種の消長を用いる生物指標を併用し、より早く、より広い範囲で生態系への影響が検出できるモニタリング体制の構築が望まれる。さらに、窒素負荷は温暖化や大気中の二酸化炭素濃度の上昇などとの相互作用のもとで、広い地域で純生産量を増加させる。土壌の窒素保持量も炭素保持とともに増加し、土壌の炭素/窒素比の低下が示されている。これらのことから、効率的な土壌の非生物的窒素保持メカニズムの存在が近年示唆されている。安定同位体比の利用により土壌中に既存の窒素や酸素が負荷由来のものと区別できることが示されており、安定同位体比の利用により不明な部分の多い土壌の窒素保持メカニズムの解明が期待される。
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特集:菌類・植食者との相互作用が作り出す森林の種多様性
  • 清和 研二, 大園 享司
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 3 号 p. 291-295
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー
    森林生態系における生物多様性の減少は著しいが、一方では種多様性の復元が試みられている。本来、復元のシナリオは自然群集における種多様性維持メカニズムに沿ったものでなければならない。しかし、温帯林における種多様性維持メカニズムに関する研究は、熱帯に比べ少ない。とくに、温帯では、光・水分・養分などの非生物的な無機的な環境の異質性を仮定したものが多く、生物間の相互作用が多様性を創り上げるといったパラダイムの研究は少ない。本特集では病原菌・菌根菌などの微生物や鳥類・シカ・ネズミなどと樹木との相互作用が森林の樹木群集および森林生態系全体の種多様性に大きな影響を与えることを具体的な事例から紹介する。とくに5つのキーワード(密度依存性、空間スケール、フィードバック、種特異性、生活史段階)を取り上げ、個体・個体群レベルでの相互作用から群集レベルでの種多様性維持メカニズムへのスケールアップを試みた。しかし、樹木の死亡や成長に及ぼす作用形態・重要度は個々の生物種によって大きく異なり、スケールアップは単純ではないことが示唆された。今後は、複数の生物種との相互作用を同時にかつ長期的に観察することによって種多様性の創出・維持メカニズムがより詳細に明らかになると考えられる。
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  • 大園 享司
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 3 号 p. 297-309
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー
    病原菌は森林における樹種の多様性の維持に貢献することが知られている。寿命の長い多様な木本種からなる自然環境下の森林において、病原菌が樹種の多様性の創出・維持に果たす役割を実証するためには、病害の発生地における長期的な樹木群集の動態データが不可欠である。本稿の目的は、病害の発生地における樹木の長期的な個体群動態や群集動態に関する実証的・記載的なデータをレビューし、病原菌が森林における樹種の多様性に及ぼす影響について議論することである。シュートレベルでの枯死を引き起こすミズキの輪紋葉枯病やスイス落葉病といった病害では、病原菌が樹木個体内のシュート集団の動態に及ぼす影響を定量化し、感染が個体レベルでの物質生産に及ぼす影響を実証的に評価することは可能である。しかし、それが森林における樹種の多様性にどのような影響を及ぼすのかはよくわかっていない。その一方で、成木の比較的急速な枯死を引き起こすミズキ炭疽病、ブナがんしゅ病、ニレ立枯病、クリ胴枯病、エキビョウキンによる根腐病、エゾノサビイロアナタケによる根株心腐病などの病害では、病原菌が樹木個体群の動態や樹種の種多様性に及ぼす影響が実証的に明らかにされている。これらの病害が森林における樹種の多様性の維持に貢献しており、病原菌が森林における樹種の多様性を創出するメカニズムの1つとして機能しうることが実証されている。ただし、病原菌は必ずしも多様性の増加に寄与するとは限らず、変化がない場合や、逆に多様性が減少する場合もあり、多様性がどう変化するかの予測は現時点では困難といえる。
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  • 谷口 武士
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 3 号 p. 311-318
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー
    森林生態系における植物の種多様性の維持には、非生物的要因(光環境や土壌環境)が大きく影響しており、この点を中心にそのメカニズムが説明されてきた。しかしながら、近年、植物の病原菌や共生菌がこの森林の植物群集に関与することが示されてきている。菌根菌は、植物と相利共生する菌の一つであり、菌根共生によって宿主植物の養水分吸収や耐病性、各ストレス(乾燥、塩類、重金属など)耐性が向上する。このような菌根菌の効果は宿主植物種によって異なるため、菌根菌が宿主植物の種間競争の結果を変え、植物群集に影響を与えうる。また、野外では同一クローンの菌根菌と複数種の植物が菌根を形成し、菌根菌の菌糸によって植物根が連結された菌糸ネットワークが存在する。菌糸ネットワークは、実生の定着に影響し、森林における植物群集に影響を与えている可能性がある。これらの影響を通して、菌根菌が植物種間の競争を緩和する場合には多種共存が促進され、菌根菌が優位種の競争力を高める場合には種多様性が減少すると考えられる。しかし、菌根菌が森林の種多様性に与える影響に関する研究は実生を対象としたものが大部分であり、草本と比べて寿命が長い森林生態系では、実生更新時の菌根菌の影響が成木の植生にどの程度寄与するのかについては不明である。従って、ミクロコズム実験と野外調査の結果を組み合わせて考察するなどして、今後、この点を明らかにしていく必要がある。
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  • 今埜 実希, 清和 研二
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 3 号 p. 319-328
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー
    Janzen-Connell(J-C)モデルは、森林の種多様性を説明するモデルの一つで、「群集内の多くの樹種において種特異的な天敵が密度依存的な死亡を引き起こすことによりそれらの共存が促進される」というものである。このモデルは熱帯を中心として検証されてきたが、近年では温帯でも検証が始まってきており、多くの実証例が報告されている。しかし、J-Cモデルの検証は単一樹種や種子・実生段階のみで行われたものが多く、さらに天敵の種特異性について検証した例は極めて少ない。本論では、(1)一つの林分に共存する複数種で同時にJ-Cモデルが成立するか、(2)病原菌や植食者に種特異性はあるのか、あるとすればどの程度か、(3)J-C効果はどの位の生活史段階まで持続するのか、について、実証例を挙げながら紹介し、J-Cモデルの成立要因について議論する。
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  • 今治 安弥, 清和 研二
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 3 号 p. 329-333
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー
    森林の種多様性を説明するモデルの1つに成長と生存のトレードオフモデルがある。このモデルは、明るいギャップで成長率が高い種は林内では生存率が低く、逆に暗い林内で生存率が高い種は明るい林冠ギャップでは成長率が低いといった、光環境傾度に沿った成長と生存のトレードオフを仮定している。ギャップが形成された光環境の不均一な森林でこの関係が成立すれば、これらの種は共存できるというものである。林内での生存率には病原菌や植食者などに対する被食防衛能力、あるいは一旦被食された後での再生能力が大きく関わっている。しかし、これまで、防御や被食後の回復のためにどれくらい植物が投資しているのかについての知見は少なく、防御・貯蔵両者への分配を同時に測定した研究は少なかった。そこで、耐陰性の異なる落葉広葉樹2種の実生を対象に、ギャップと林内での成長・防御・貯蔵への炭素分配パターンを調べた。ギャップと林内の両方で、耐陰性の高い種は低い種に比べて成長よりも防御へより多く炭素を分配し、逆にギャップで耐陰性の低い種は成長に多く分配した。このような種間の物質分配パターンの違いが結果的に成長と生存のトレードオフを成立させているものと考えられた。さらに、耐陰性の高い種では貯蔵より防御に優先的に炭素を分配していた。これら2種の物質分配パターンの違いは、個々の種にとって最適な物質分配パターンがあることを示唆している。
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  • 島田 卓哉
    原稿種別: 本文
    61 巻 (2011) 3 号 p. 335-340
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー
    どのような状況下で種子捕食者は植物の種多様性に影響を及ぼす可能性があるのかについて整理し、議論を行った。種子捕食が種多様性に影響を及ぼすメカニズムは、密度依存的採餌、頻度依存的採餌、競争優位種への選好的採餌、そして選好的採餌の時空間的異質性の4つに分類することが出来る。先行研究の整理によって、密度依存的採餌以外のメカニズムにおいては捕食者の広食性が成立の重要な前提となっていることが判明した。一方で、これらのメカニズムの相対的な重要性や、種多様性を形作る気候や土壌・地形条件、撹乱程度などの様々な生態学的なプロセスのなかで種子捕食者との相互作用がどの程度重要なのかといった問題については、理論・実証両面でほとんど研究が進んでいない現状が明らかになった。
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連載1 野外研究サイトから(19)
連載2 博物館と生態学(17)
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