日本生態学会誌
Online ISSN : 2424-127X
Print ISSN : 0021-5007
検索
OR
閲覧
検索
62 巻 , 2 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
    • |<
    • <
    • 1
    • >
    • >|
原著
  • 伊藤 公一, 佐野 淳之
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 111-120
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究では、雪解け時期の違いが林床に生育する稚樹の開葉フェノロジーに対してどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とし、アカマツに落葉広葉樹の混交する二次林内の積雪量の異なる2ヶ所にプロットを設け、開葉フェノロジーを3年間観察した。積雪量が多く、雪解け時期が遅い年ほど雪面下の温度と外気温の差が大きくなり、雪解けが遅かったプロットにおける開葉の進行は、雪解けが早かったプロットに比べ全体的に遅くなった。積雪量が少なかった年では、雪解け時期は早くなったが、4月の月平均気温が平年よりも低かったため、結果的に最も積雪の多かった年と同じような開葉度の推移を示した。これらのことから、稚樹の開葉は積雪が多い年では雪解け時期に、積雪量が極端に少ない年では春先の温度環境に大きく影響を受けると考えられる。また、雪解け時期の影響を、雪解けに伴う地表面の温度変動パターンの相違と見なして、実際の開葉日のばらつきを有効積算温量モデルを用いて評価したところ、開葉予測日との誤差が小さかったことから、有効積算モデルによって、雪解けの時期の影響を量的に評価できることが示唆された。
    抄録全体を表示
  • 堀毛 一秀, 島野 光司
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 121-142
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究では信濃川を対象として、上流の長野県川上村から下流の新潟県新潟市までの植生とその立地環境を調べることにより、植生と環境要因との関連を明らかにし、信濃川における現存植物種の構成や、在来植生にとって必要な環境について考察した。本研究において、信濃川全域を地形の特徴から渓谷、扇状地、沖積平野の3つの地形単位に区分し、計410地点を調査した。高水敷ではノイバラやニセアカシアなどの陸地に生育し、寿命が長い木本類が主に確認され、低水敷では水辺に生育するツルヨシや、水辺に生育し、かつ寿命の短いオオイヌタデのような1年生草本や2年生草本が主にみられた。渓谷や扇状地などの河川上流部に形成される立地では、低水敷と同様に水辺に生育し、寿命の短い1・2年草が主にみられ、反対に沖積平野のような河川下流域に形成される立地では、高水敷と同様に陸地に生育し、寿命の長い木本類が主にみられた。また、上流の渓谷では山地に生育するとされる植物がみられた。本研究の結果、低水敷などの攪乱の影響を受けやすい立地においては様々な種が出現し、かつ河川本来の植生が出現する傾向がみられる一方、高水敷などの攪乱の影響を受けにくく、安定した立地においては植生が単一化し、通常河畔外に生育立地を持つ植物が出現する傾向がみられた。
    抄録全体を表示
  • 冨士田 裕子, 高田 雅之, 村松 弘規, 橋田 金重
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 143-153
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    近年、ニホンジカの個体数の急激な増加により、各地で自然植生に対する様々な影響が現れている。森林に対する影響の報告が多いのに対し、踏査等が困難な湿原へのシカの影響については報告が少ないのが現状である。そこで北海道東部の釧路湿原中央部の大島川周辺をモデルサイトとし、2時期に撮影された空中写真からGISを使用してエゾシカの生息痕跡であるシカ道を抽出し、その変化と分布特性を調べた。さらに、現地で植生調査を行い、調査時よりエゾシカの密度が低かったと考えられる5年前の植生調査結果との比較を行った。また、植生調査区域でエゾシカのヌタ場の位置情報と大きさの計測を行った。その結果、調査範囲62.2ha内のシカ道の総延長は、1977年に53.6kmだったものが2004 年には127.4kmとなり、約2.4倍の増加が認められた。ヌタ場は、2時期の空中写真の解析範囲内では確認されなかったが、2009年の現地調査では大島川の河辺に11ヶ所(合計面積759m2)形成されていた。以上から、大島川周辺では30年間でエゾシカの利用頻度が上昇し、中でも2004年以降の5年間でシカ密度が急増したと考えられた。両時期とも川に近いほどシカ道の分布密度が高く、ヌタ場は湿原内の河川蛇行部の特に内側に好んで作られていた。蛇行の内側は比高が低く、川の氾濫の影響を受けやすいヌタ場形成に都合のよい立地であることに加え、エゾシカの嗜好性の高いヤラメスゲが優占する場所で、えさ場としても利用されていた。大島川周辺には既存のヨシ-イワノガリヤス群落、ヨシ-ヤラメスゲ群落が分布していた。ただし、河辺のヌタ場付近にはヤナギタデ群落が特異的に出現し、DCA解析からこの群落はエゾシカの採食、踏圧、泥浴びなどの影響で、ヨシ-ヤラメスゲ群落が退行して形成された代償植生であることが示唆された。
    抄録全体を表示
特集1 今こそ水田生物群集を捉えなおす―ミクロからマクロまで―
  • 日鷹 一雅, 大塚 泰介
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 155-156
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 木村 眞人
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 157-165
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    水田は、夏季の水稲栽培期間は湛水状態に置かれ、水稲収穫後は落水状態で翌年の春まで放置される。水田は、水稲の増収を目的に様々の圃場管理がなされる特異な人口湿地であるにもかかわらず、水田土壌生態系には多様な微生物群集が生息し、その多様性は土壌中に様々な微生物環境が存在することに起因する。筆者らは、水田圃場から、1)表面水・浸透水、2)表面水中の小型甲殻類、3)土壌、4)水稲根、5)稲ワラ、6)堆肥(製造過程、土壌に施用後)を季節ごとに採取・回収し、リン脂質、DNA、RNAを抽出後、リン脂質脂肪酸組成から微生物群集構造の全体像を、DNA、RNAに各種のプライマーを使用することにより、真正細菌、真核生物、メタン生成古細菌等の微生物群集構造をそれぞれ解析し、各部位における微生物の群集構造とその多様性を比較した。また、篩を用いて表面水中の30μmから2cmの水生生物を採取し、主に門や綱のレベルで同定するとともに各個体数を計数した。その結果、各部位には異なるグループの微生物群集が生息し、生物多様性、群集構造は各部位ごとに異なっていた。なお、各部位において季節変動が観察されたが、その変動幅は各部位間での違いに比べて小さいものであった。また、水生生物群集は、季節変動、施肥、生息部位、耕作の影響を受けるとともに、その多くの種類が水田圃場内で越冬することが明らかとなった。加えて、水田には多数のウイルスが生息し細菌の死滅の大きな原因となっているとともに、そのウイルス群集は、海洋中の群集と全く異なり、多様性は水田土壌のほうが高いことが推察された。
    抄録全体を表示
  • 大塚 泰介, 山崎 真嗣, 西村 洋子
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 167-177
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    水田の多面的機能は、そこに生息する生物間の相互作用に負うところが大きい。水田にキーストーン捕食者である魚を放流して魚を放流しない水田と比較すれば、対照区つきの隔離水界実験(メソコスム実験)になり、水田の生物間相互作用を解明する上で有効である。水田にカダヤシを放流しても、カに対する抑制効果が見られないことがある。カダヤシはカの幼虫・蛹のほかに、その捕食者や競争者も食べるので、捕食による効果の総和が必ずしもカを減らす方向に働かないためである。メコン川デルタの水田に3種の魚を放し、魚を放さない水田と生物群集を比較した実験では、ミジンコ目が減少し、原生動物とワムシが増加し、水中のクロロフィルa濃度が増加するという結果が得られている。水田にニゴロブナの孵化仔魚を放流した私たちの実験でも、これと類似の結果が得られた。ニゴロブナの後期仔魚および前期稚魚はミジンコ目を選択的に捕食し、ほぼ全滅させた。すると放流区では対照区よりも繊毛虫、ミドリムシなどが多くなった。また放流区では、ミジンコ目の餌サイズに対応する植物プランクトン、細菌、従属栄養性ナノ鞭毛虫などの数も増加した。メコン川デルタと私たちの結果は、ともに典型的なトップダウン栄養カスケードとして説明できる。また、魚の採食活動が、底泥からの栄養塩のくみ上げや底生性藻類の水中への懸濁を引き起こしたことも示唆される。これとは逆に、コイの採食活動によって生じた濁りが、水田の植物プランクトンの生産を抑制したと考えられる事例もある。こうした実験の前提となるのは、魚が強い捕食圧を受けていないことである。魚に対する捕食圧が大きい条件下での水田生物群集の動態は、今後研究すべき課題である。
    抄録全体を表示
  • 西原 昇吾
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 179-186
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    わが国の水田や、周辺のため池、水路には、かつては河川の氾濫原や後背湿地、自然湿地に生息していたと考えられるメダカ、イモリ、ゲンゴロウなどの水生生物が残存する。しかしその多くが、様々な開発や圃場整備による乾田化、侵略的外来種の侵入などにより絶滅の危機に瀕している。そのため、これらの種の生息環境を保全・再生する取り組みが各地ではじめられている。このような事業の実施の前提として、保全目標となる生物をめぐる生物間相互作用の把握がとりわけ重要である。しかし、水田生態系には多くの種が存在するために、それぞれの種間の関係性をとらえることは容易でない。そのため、必要な科学的知見が得られないままに、事業が進められることが少なくない。このような、保全目標となる生物と重要なかかわりがある生物間相互作用については、野外パターンの観察で得られた仮説を、定量的な手法である野外実験によって検証することによって明らかにできる。本稿では、野外実験によって得られた結果を保全事業に適用する試みとして、大型の水生甲虫であるシャープゲンゴロウモドキの事例を紹介した。高次捕食者であるシャープゲンゴロウモドキと被食者としてのミズムシ、クロサンショウウオ幼生の生物間相互作用に関して、野外観察・野外実験を行った。その結果、成長の各段階における幼虫の主要な食物はミズムシであり、しかも幼虫の成長、生存はミズムシに強く依存していることが実証された。また、各年度、各地域における野外調査の結果からも、幼虫の食物は主にミズムシであることがわかった。これらの知見をもとに、千葉県や石川県において、休耕田の湛水化などによって食物であるミズムシの個体数を増加させることを通じて本種の保全を試みた。その結果、本種の個体数の増加が認められた。このような生物間相互作用の把握に基づく保全事例の積み重ねが、今後の水田生態系の保全においてのぞまれる。
    抄録全体を表示
  • 日鷹 一雅
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 187-198
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    水田の生物多様性の実際的な保全・管理には、群集の構造と機能について十分理解した上での丁寧な議論が必要である。一般的に群集の解析には、食物連鎖・食物網の記述を重ねた栄養段階やギルドといった構造解析がよく行われる。水田における群集を題材にして、従来、特定種の保全を主眼にした仮説的な潜在的食物網はいくつか描かれてきたが、多様な環境に存立してきた水田の実際的食物網に基づき、ギルド構造を含む詳細な群集解析を行った事例は乏しい。そこで、野外水田で記載された稲作害虫の重要天敵クモ類における餌メニュー2事例を題材にし、主にギルド内捕食の視点から解析・再検討を行うとともに、これまで記述されてきた潜在的食物網における栄養段階構造のカスケード効果について再検討を行った。その結果、地域の異なる2事例だけの検討結果であるが、重要天敵とされてきたコモリグモ類2種の広食性肉食者では、ギルド内捕食と共食いを合計した頻度は餌メニューの約1/4を占めていた。このような重要天敵のギルド内捕食・共食いの実態から、害虫個体群管理における天敵活用の不確実性の原因を見出す上で、現場における実際的食物網の記載の重要性について論議した。また、さらにクモ類のように主に植食者を食する栄養段階にある低次肉食者と、鳥類のような高次肉食間の栄養段階間のトップダウンカスケードの存在についても指摘した。以上から、従来描かれてきたような鳥類をアンブレラ種やシンボル種とした保全主眼の食物網は、天敵類による害虫個体群抑圧を主眼とした食物網とは必ずしも機能的に連動しないことも想定された。水田生物多様性の保全・管理は重要になる中で、今後は、より生態系サービスの不確実性を少なくするために、直接観察法を基軸とし最新の手法を織り交ぜ、多様な時・空間レベルの水田群集における実際的食物網を丹念に記述・蓄積・解析していくことが望まれた。このような着実なアプローチを土台に、潜在的食物網を描くことが生態学的リテラシーに沿った生物多様性管理の常道であると結論した。
    抄録全体を表示
  • 亀田 佳代子
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 199-206
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    さまざまな環境がモザイク状に点在する水田地帯は、季節変化に沿った人為的影響の周期的変化によって、時空間的な境界線が極端に明確になることが特徴である。いくつかの異なる空間スケールの行動範囲を持つ生物とその相互作用によって、階層構造を持つ群集が形成されている水田地帯では、生物多様性と生態系機能の保全、それを実現するための水田管理の検討のため、時空間的に変化する水田地帯のモザイク状の環境構造と、異なる空間スケールの生息範囲を持つ生物間の関係、そしてこれらの組合せから見えてくる群集の階層構造の解明が必要である。移動能力が高く生活に複数の種類の生息場所を必要とする大型動物は、ある限られた範囲の小型生物群集に対して影響をおよぼす。大型動物の活動タイプの空間分布と小型生物群集の分布、そしてそれらと水田地帯の環境構造との対応関係を明らかにすることで、水田地帯の群集の階層性を明らかにできる可能性がある。鳥類は、モザイク状の景観構造を持つ水田地帯において、不連続で距離の離れた環境間に相互作用を生じさせることができる大型動物である。移動連結者(mobile link)としての機能を持つ鳥類は、小型生物群集に対して系外流入(allochthonous input)の作用を与える。湖沼や干潟の生物群集に対する鳥類のトップダウン効果、養分除去、養分負荷の研究、サギ類などによる水域から陸域への物質輸送の研究、越冬地である農地での鳥類の個体数変動と、遠く離れた繁殖地での植生に対するトップダウン効果の研究などから、水田地帯の群集解析に鳥類による系外流入の視点を取り入れることが必要と考えられる。鳥類を介した水田地帯の群集研究を進めるためには、1)鳥類の行動生態学的情報の把握、2)鳥類の個体群生態学的な情報の把握、3)食物の体内滞留時間の把握、4)ミクロからマクロまで質の異なる対象を統一的なパラメーターで検証できる安定同位体比分析の活用などを考慮に入れることが重要と考えられる。
    抄録全体を表示
  • 奥田 昇
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 207-215
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    人為的に管理された湿地生態系である水田は、群集生態学の諸プロセスを検証する野外メソコスム実験場と捉えると非常に面白いシステムである。水田は生産効率の向上を目的とした施肥を行うため、強いドナーコントロールが作用し、潜在的に栄養カスケードが起こりやすい系である。また、水田はバクテリアや微細藻類を基点とした微生物食物網が卓越した系であり、その生産物は最終的に移動性の高い魚類や鳥類などの大型動物にまで転換される。このように水田食物網に関与する生物の体サイズは1μm 未満から1m以上まで対数スケールで変化するため、個体群が変動する時間スケールも生物種間で大きく異なるという特徴をもつ。さらに、大型動物が水田と周辺生態系を空間的に連結することによってネットワーク構造が形成される。このように、異なる時空間スケールで繰り広げられる食物網の構造や機能を個体の計数や計量などの従来的な手法のみで評価するのは困難である。そこで、本稿では、食物網の有効な解析ツールとして注目を浴びている炭素・窒素安定同位体比分析を導入して、水田生態系の構造と機能、および、景観スケールから眺めた生態系ネットワークにおける水田の役割を定量的に評価する方法論を提案したい。
    抄録全体を表示
特集2 いま種間競争を問いなおす:繁殖干渉による挑戦
  • 本間 淳, 岸 茂樹, 鈴木 紀之, 京極 大助
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 217-224
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 岸 茂樹, 西田 隆義
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 225-238
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    種間競争の結末は競争排除か共存のいずれかに終わるはずである。均一で閉鎖的な実験条件下で競争排除が容易に生じることは、不均一で開放的な野外環境下では資源分割による共存が生じうることを予想させる。したがって種間競争は野外の生物の資源利用様式を決定づける大きな要因と考えられてきた。資源競争の理論的予測によれば、競争排除が起きるためには、種間の強い密度依存効果が必要となる。Gauseが競争排除則を提唱して以来、多くの室内競争実験により競争排除が繰り返し観察されてきた。そしてそれらの結果から種間の強い密度依存効果の存在が推定されてきた。しかし競争排除を起こすほどの強い競争メカニズムを具体的に示した研究は少ない。我々は種の絶滅を引き起こす要因として、種間の性的相互作用である繁殖干渉に着目して研究を進めてきた。繁殖干渉は正の頻度依存性をもつため種の絶滅を起こしやすいことが予測されている。本稿ではまずマメゾウムシ2種を用いた一連の実験結果から、繁殖干渉の非対称な関係と競争実験の結果が一致することを示す。次に繁殖干渉のメカニズムを検討する。一般に繁殖の過程は多くの段階にわかれているため、繁殖干渉もその各段階で生じうる。交雑は繁殖の過程の最終段階で生じる繁殖干渉にあたる。これまで交雑が最も注目される一方、それより前の繁殖過程に生じる種間のハラスメントは見落とされてきた。本論文では、マメゾウムシの競争系において、遺伝的な痕跡が残らない種間ハラスメントの重要性を指摘する。最後に、これまで行われてきた多くの室内競争実験の結果を繁殖干渉の視点から再検討する。繁殖干渉がより一般的に種の絶滅を予測できる可能性を議論する。
    抄録全体を表示
  • 京極 大助, 西田 隆義
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 239-245
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    近縁種間にしばしば認められる排他的な関係は長らく資源競争によってもたらされると考えられてきたが、多くの実証研究が行われたにもかかわらず、資源競争の重要性が示されたとは言いがたい。これに対し、繁殖干渉と呼ばれる配偶過程において生じる誤った種間での求愛行動などが、近縁種の関係を決定する上で重要であると考えられるようになってきた。繁殖干渉は相対的に個体数の多い種のほうが相手種に対してより強い悪影響を与える、すなわち頻度依存的にはたらくと考えられてきた。ここで本稿では繁殖干渉の強さを、繁殖干渉による個体の適応度の低下量と定義する。繁殖干渉はその頻度依存性によって正のフィードバックを生じやすく、そのため近縁種間の排他的な関係を説明する論理として資源競争よりも一般性が高いと考えられてきた。しかし相互作用する2種の総密度が大きく変化しても2種の頻度だけで繁殖干渉の強さを十分説明できるのかはこれまでほとんど問題にされてこなかった。実際には、総密度の変化が2種の頻度と繁殖干渉の強さの関係を変化させる可能性がある。また、配偶者選択のような行動が2種の頻度に応じて変化する場合には、繁殖干渉のはたらき方がこれまで考えられてきたよりも複雑になる可能性がある。個体が経験する繁殖干渉の強さは同所的に存在する同種個体・他種個体双方の個体数によって決まるため、繁殖干渉を考える上で個体群生態学的な視点は欠かせないが、我々の繁殖干渉に対する個体群生態学的な理解はあまり進んではいない。繁殖干渉がもたらす種々の生態学的・進化的な帰結を統一的に理解するためにも、繁殖干渉の個体群生態学的な研究が必要である。
    抄録全体を表示
  • 小沼 順二, 千葉 聡
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 247-254
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    分布の重複する2種が、異所的な個体群間では同様の形質値を示す一方で、同所的な個体群間では異なる形質値を示すことがある。形質のこのような地理的パターン形質置換とよばれ、種間相互作用が形質分化に影響を与えたことを示す重要な証拠となる。形質置換は、「生態的形質置換」と「繁殖的形質置換」の2つに分類される。生態的形質置換とはフィンチのくちばしやトゲウオの体型のように、資源利用に関わる形質の分化パターンのことであり資源競争がその主要因として考えられる。一方、繁殖的形質置換とは体色や鳴き声など繁殖行動に関わる形質の分化パターンのことであり、交配前隔離機構の強化の結果生じる分化パターンをさす。種間交雑によって生じるコスト、すなわち「繁殖干渉」を避けるように、交配相手認識に関わる形質が種間で分化するパターンといえる。これまで多くの生態的形質置換研究事例が報告されてきたが、実際それらにおいて種間競争を示した研究は非常に少ない。そこで我々は「生態的形質置換と思われている形質分化パターンの幾つかは実際には資源競争が要因ではなく繁殖干渉によって生じたのではないか」という仮説を立てた。特に体サイズのように資源利用や繁殖行動両方に関わる形質の分化では、資源競争の効果を考えなくても繁殖干渉が主要因として働き形質分化が生じる可能性を考えた。そこで同所的種分化モデルを拡張したモデルを用い本仮説の理論的検証を行った。その結果、たとえ種間に資源競争が全く存在しないという条件下においても資源利用に関わる形質が隔離強化の結果として2 種間で分化し得ることを示すことができた。この結果は、繁殖干渉が種間の形質差を導く主要因になり得ることを示している。
    抄録全体を表示
  • 高倉 耕一, 松本 崇, 西田 佐知子, 西田 隆義
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 255-265
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    種間に生じる繁殖干渉が生態学的に重要である理由は、この相互作用が種間の排除を最も強力にもたらすためである。一方で、外来生物による在来種の排除には多くの例が知られているにもかかわらず、外来種による繁殖干渉についてはほとんど研究例がなかった。西日本固有種で主に都市部での減少が注目されるカンサイタンポポを材料とした一連の研究により、野外において近縁外来種セイヨウタンポポの比率が高いほど在来種の結実率が低下すること、その直接的な要因が外来種からの種間送粉であること、その範囲が数メートルの規模におよぶこと、などが明らかになってきた。タンポポ類におけるこれらの研究は、繁殖干渉が、外来種が在来生態系に影響を及ぼす際の重要なメカニズムであることを示す一つのケーススタディになりつつある。本研究ではカンサイタンポポ個体群が衰退した要因としての繁殖干渉の重要性を更に検討するため、個体ベースのシミュレーションモデルを構築した。モデルには、既存研究で明らかにされた繁殖干渉に関わるパラメータに加え、野外において死亡率など両種の個体群動態に関わるパラメータを測定して用いた。シミュレーション解析の結果より、野外で観測される繁殖干渉の強度は1世紀程度の時間で在来種を衰退させるのに十分であること、その効果は人為的な撹乱がもたらす死亡率の増加によって増強されることなど、カンサイタンポポについて観測されてきたパターンと整合性が高いことが確かめられた。また、複数の外来種管理プログラムについて在来種個体群存続に及ぼす効果を検証し、より低コストで効果的な在来種保全手法についての提言を行った。これらの成果は、繁殖干渉の研究が在来種の衰退要因を理解する上で重要であるだけでなく、その保全においてもコストパフォーマンスに優れた対策の選択に貢献することを示している。
    抄録全体を表示
  • 鈴木 紀之, 大澤 直哉, 西田 隆義
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 267-274
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は寄主特殊化における繁殖干渉の重要性を主張することである。多くの動物は寄主の周辺で繁殖を行うため、資源利用の仕方と繁殖成功は深く関わっていると考えられる。しかし、資源競争の効果が疑問視されてから、寄主特殊化の研究において同じ栄養段階に属する種間の相互作用はほとんど注目されることなく、繁殖干渉の重要性も評価されていない。そこでまず、寄主特殊化の要因として従来考えられてきた昆虫と寄主との共進化について、現在得られているパターンを整理する。昆虫学、化学生態学、分子系統学といった学問分野の成果を引用しながら、共進化の概念だけでは寄主特殊化を十分に説明しにくいことを示す。次に、捕食性テントウムシのクリサキテントウHarmonia yedoensisとその近縁種であるナミテントウHarmonia axyridisを用いて私たちが進めている実証研究について紹介する。クリサキテントウはナミテントウからの繁殖干渉を避けるために捕まえにくいアブラムシに特殊化したという仮説を検討する。最後に、実証研究の結果をもとにして、寄主特殊化の鍵となる昆虫の産卵選好性の進化について議論をし、寄主特殊化における成虫の行動の重要性を指摘する。
    抄録全体を表示
  • 奥崎 穣, 高見 泰興, 曽田 貞滋
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 275-285
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    生態的に似た複数の近縁種が共存するには、種間の資源競争あるいは繁殖干渉が緩和される必要がある。オサムシ科オオオサムシ亜属は、成虫期に多食性の捕食者であるが、幼虫期はミミズ専食である。またオスは異種のメスに対しても交尾行動を示す。彼らは分布域の大部分で2-3種が共存しており、同所的に分布する種間では体サイズが異なっている。この種間の体サイズ差は、幼虫期に捕食可能なミミズのサイズに応じた資源分割をもたらし、資源競争を緩和するかもしれない。また成虫期に異種間の交尾行動を機械的に妨げる生殖隔離として、繁殖干渉を緩和するかもしれない。この2つの仮説を、京都に分布するオオオサムシ亜属4種(山間部の大、中、小型の3種、平野部の大型1種)を用いて検証した。まず、4種の幼虫(1-3齢)に様々なサイズのミミズを与えた。その結果、すべての幼虫は、ミミズのサイズに関わらず捕食行動を示した。またミミズのサイズ増加に伴う捕食失敗は、小型種の1齢幼虫期でのみ観察された。したがって、種間の体サイズ差は資源分割に有効ではないと考えられた。次に、4種の成虫で16通りの雌雄ペアを作り、交尾行動(交尾意欲、マウント、交尾器の挿入、精包形成)を観察した。その結果、体サイズ差が大きい異種ペアでは、交尾意欲があっても交尾器が届かず、挿入ができないペアが多かった。すなわち、種間の体サイズ差による交尾前生殖隔離が成立しており、このことが体サイズ差の大きい近縁種の同所的分布を可能にしていると考えられた。一方、体サイズ差が小さい異種ペア(山間部の大、中型種と平野部の大型種のペア)では、大半のペアで交尾器の挿入が行われ、精包形成まで達成するペアも見られた。このことから、体サイズの似た種が同所的に分布しないのは、資源競争ではなく繁殖干渉のためであることが示唆された。
    抄録全体を表示
  • 西田 隆義
    原稿種別: 本文
    62 巻 (2012) 2 号 p. 287-293
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    生物の分布と個体数を、生物間の相互作用によって統一的に説明することは生態学のもっとも基本的な目標である。しかし、資源競争説が徐々に衰退するにつれ、統一的な説明のみこみは低下し続けているようだ。本論文では、近縁種間に潜在的にある繁殖干渉を説明の第一原理として取り込むことにより、分布、生息場所選択、ニッチ分割、競争排除、外来種による近縁在来種の急速な駆逐など、資源競争では説明が困難であった多様な生態現象が統一的に説明できることについてのべる。そして、過去の研究においてなぜ繁殖干渉がほとんど見逃されてきたかについて、資源競争や交雑の効果と比較検討することにより考察する。
    抄録全体を表示
学術情報
連載1 野外研究サイトから(21)
連載2 博物館と生態学(19)
    • |<
    • <
    • 1
    • >
    • >|
feedback
Top