日本生態学会誌
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63 巻 , 2 号
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総説
  • 土屋 一彬, 斎藤 昌幸, 弘中 豊
    原稿種別: 本文
    63 巻 (2013) 2 号 p. 179-192
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    都市生態学は、人間活動が優占する都市生態系のふるまいの解明にとりくむ研究分野である。近年、国際的に進行している都市人口の増加と、それにともなうさまざまな環境問題の拡大を背景に、都市生態学への注目が高まっている。とくに都市生態学には、生物相保全や生態系サービス向上へ向けたとりくみの科学的基盤となることが期待されている。本稿では、日本国内における研究者のさらなる都市生態学への参入と議論の深化のきっかけとなることを企図し、国際的な都市生態学研究の進展状況と今後の主要な研究課題について、主に1)都市において環境問題の解決に生態学が果たす意義、2)都市に特徴的な生態学的パターンとプロセスおよび3)社会経済的要因の影響の3点から論述した。都市において環境問題の解決に生態学が果たす意義を取り扱った研究は、生物相保全を通じた環境教育への貢献や、都市生態系が提供する生態系サービスのうちの調整サービスおよび文化サービス、そして負の生態系サービスの評価を多くとりあげていた。都市生態系の特徴の解明にとりくんだ研究についてみると、都市から農村にかけての環境傾度に沿った種群ごとの個体数の変化や、都市に適応しやすい生物とそうではない生物の比較といった、生態学的なパターンについての知見が多くみられた。一方で、そうした生態学的なパターンをもたらすプロセスについては、十分に研究が進んでいなかった。都市生態系を規定する社会経済的要因を取り扱った研究については、社会経済的要因も含めた都市生態系の概念的なモデルの追求や、生態系の状態に影響が強い社会経済的要因の特定にとりくんだ研究が多くみられた。他方で、生態系の状態と管理などの具体的な人間の行為との関係や、その背後にある制度などの間接的な社会経済的要因との関係については、十分に明らかにされていない状況であった。今後の都市生態学には、都市生態系の構成要素や社会経済要素が相互にどう関係しているか、すなわち都市における社会生態プロセスに対して、さらに理解を深めていくことが求められよう。その実現のためには、生態学者が中心となった都市の生態学的プロセスの解明や、社会科学者と協働することによる分野横断的な研究アプローチの開発が鍵となろう。
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  • 早坂 大亮, 永井 孝志, 五箇 公一
    原稿種別: 本文
    63 巻 (2013) 2 号 p. 193-206
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    農薬は作物の品質・収量確保の上で必要不可欠である一方、持続的な農業活動に向けては生物多様性を無視することはできない。本稿では、今後の農薬の生態リスク管理手法として取り入れるべき、多種系あるいは群集レベルの評価手法について概説するとともに、これら手法の有効性・可能性と今後の展望について議論する。日本における現行の農薬管理は、農薬の曝露影響と生物への影響の濃度とを対比させて評価を行う。農薬の曝露影響は多段階の評価制度(Tier制)が確立されているが、生物影響は個体レベルの室内毒性試験のみで評価されており、群集(生態系)レベルでの評価手法は確立されていない。また、室内試験の結果を野外環境に外挿することの難しさは多くの研究者により指摘されている。近年、個体レベルの評価から多種系の評価に外挿する手法として、農薬に対する各生物の感受性差を考慮した統計学的手法である種の感受性分布(SSD:Species Sensitivity Distribution)が開発されている。これにより、生物集団の潜在影響を簡便に評価できる一方で、生物間相互作用や群集の回復性などは考慮できない。これら課題の解決に向けて、メソコスムを含む実験生態系による試験の実施が有効であると考える。実験生態系は、多種の生物に対する影響を同時に試験可能であるとともに、コントロール(対象区)を設定できる、などの利点がある。群集レベルの農薬の生態リスク評価にはこれまで、多様度指数や主成分分析等が指標として用いられてきたが、何れも生物多様性への影響評価として解釈が困難であった。そこで、コントロールと農薬処理区との群集組成の時間変化における差に着目した多変量解析である主要反応曲線(PRC:Principal Response Curves)解析が開発され、現在、多くの現場で使用されている。一方、曝露後影響のモニタリング期間が短い場合、世代期間(生活史サイクル)の長い生物に対する影響を過小評価してしまう危険性がある。1年以上の長期モニタリングを行うことで、各種の生活史も考慮したより現実的な生態リスクの評価が可能になる。これらの課題を踏まえ、今後の生物影響の評価システムとして、室内毒性試験、種の感受性分布、および実験生態系による長期モニタリングを一つの評価パッケージとして段階的に実施することを我々は提案する。その上で、これら試験結果から総合的に導かれる農薬の毒性について曝露影響と比較することで、農薬の生態リスクの総合評価による登録保留基準の設定が可能になると考える。
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特集 森林の “ 境目”の生態的プロセスを探る
  • 酒井 敦, 山川 博美, 清和 研二
    原稿種別: 本文
    63 巻 (2013) 2 号 p. 207-209
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
  • 今 博計, 明石 信廣, 南野 一博, 倉本 惠生, 飯田 滋生
    原稿種別: 本文
    63 巻 (2013) 2 号 p. 211-218
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    北海道中央部の落葉広葉樹林に隣接したトドマツ人工林において、広葉樹の種子散布が種子供給源からの距離にどのように影響を受けているのか、また、どのような場所に散布されているのかを明らかにするため、広葉樹林と針葉樹人工林の境界域に100m×200mの調査地を設置し、散布様式(風散布、鳥被食散布、貯食散布)ごとの種子散布状況を調べた。風散布型と鳥被食散布型の種子散布を評価するため、調査地内に100個(5列各20個)の種子トラップを格子状に10m間隔で設置した。アサダ、イタヤカエデ、シラカンバなど風散布種子は、母樹からの距離に依存して散布数が著しく減少した。長距離散布されるシラカンバを除くと、トドマツ人工林内に散布される種子数は極めて少なく、全トラップで回収された種子の4%程度であった。それに対して鳥被食散布のミズキ種子は、人工林内へも18%の種子が散布されており、散布が同時期に結実する植物に影響を受けていた。貯食散布型の種子散布を評価するため、境界域に設置した磁石付きミズナラ堅果の分散調査、ミズナラとカシワの当年生実生の分布調査を行った。磁石付き堅果の最大散布距離は、広葉樹林では32m、人工林では71mに達していたが、約70%の堅果は餌台から10m以内の比較的近距離に散布され、平均散布距離はそれぞれ8.1m、12.6mであった。一方、当年生実生の分布は、野ネズミの貯食場所とは明らかに異なる傾向を示し、人工林では野ネズミ以外の散布者が存在していることが示唆された。以上のことから、広葉樹林に近い場所ほど種子の供給量が多いが、鳥被食散布種子と貯食散布種子では散布者の行動に影響を受けるため、複雑であることがわかった。
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  • 山川 博美, 伊藤 哲, 中尾 登志雄
    原稿種別: 本文
    63 巻 (2013) 2 号 p. 219-228
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    伐採後の森林再生に及ぼす散布種子(伐採後に新たに散布される種子)の効果を明らかにするため、照葉樹二次林に隣接する伐採地において、伐採直後から6年間の種子の散布範囲および種子数をシードトラップによって調査した。伐採地へ散布された種子数は、隣接する照葉樹二次林およびスギ人工林と比較して明らかに少なかった。種子散布様式で比較すると、風散布型種子は伐採地に限らず隣接する照葉樹二次林およびスギ人工林でも少なかった。伐採地において重力散布型種子は林縁でのみで散布され、林縁から10m以上離れた地点ではほとんど散布されていなかった。被食散布型の種子は伐採地での散布が確認されたが、照葉樹林の林冠を構成する高木性木本種は少なく、多くは低木性木本種で、その6割以上をヒサカキおよびイヌビワの2種で占めていた。しかしながら、伐採地において、被食散布型の種子は伐採からの時間経過に伴って、散布される種子数および種数が増加する傾向がみられた。さらに、種子の散布範囲も伐採から3年目程度までは林縁から15m付近までの木本種が多かったが、伐採5年目以降は林縁から35m地点まで種子が散布されるようになり、種子の散布範囲が広がっていた。以上の結果から、暖温帯における散布種子による更新は、風散布型木本種がほとんどなく、重力散布型および被食散布型の木本種が主となる。そのなかで、伐採後の森林の再生を短期的な視点で捉えると、重力散布種子の散布は林縁周辺に限定され、被食散布型種子も伐採直後に伐採地内に散布される種子数は少ないことから、散布種子による更新は非常に難しいと考えられる。しかしながら、長期的な視点で捉えると、伐採からの時間経過とともに伐採地への散布種子数および種数の増加していることから、被食散布型種子による更新が可能となるかもしれない。ただし、本研究は母樹源となる照葉樹林が隣接する伐採地であることを考慮すると、特に辺り一面に人工林が卓越するような森林景観では、過度な期待は避け方が無難であろう。また、伐採後の更新において萌芽などの前生樹のみの更新では更新する樹木が伐採前の前生樹の分布や萌芽力に依存し種組成が単純化する恐れがあるため、伐採後に散布される種子は、長い時間スケールのなかで多様性を高めるための材料として重要であると考えられる。
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  • 平田 令子, 伊藤 哲
    原稿種別: 本文
    63 巻 (2013) 2 号 p. 229-238
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    ハビタットが分断されたモザイク状の景観において、パッチ境界に直面した動物がパッチ間を移動できるかどうかは、個体群の存続にとって重要な問題である。しかし、動物の移動パターンには、多くの要因が複雑に関わり合うため、それを把握するのは容易ではない。本稿では、鳥類の移動に関して行われたいくつかの事例的研究を整理し、鳥類のパッチ間の移動の理解の一助となるべく、その概念的なフレームワークの構築を試みた。パッチ境界に直面した鳥類が隣接パッチへ移動するまでの行動の流れは、大きく2つのステップに整理できる。第一のステップは、鳥類が異なる2つのパッチの隣接をパッチ境界と認識するかどうかであり、第二のステップは鳥類が境界を認識した後、境界を越えて移動するかどうかである。第一のステップにおいて、鳥類はパッチ間の植生構造の違いに基づくコントラストをとらえて境界を認識すると考えられる。コントラストが強い境界ほど、鳥類によって認識されやすい。第二のステップでは、鳥類はパッチのコスト-ベネフィットからパッチを選択して移動を決定する。隣接パッチの方が、鳥類が今いるパッチよりもベネフィットが高い場合に、鳥類は隣接パッチへ移動する。鳥類の移動に対する境界の透過性(移動に対して障壁となるのかならないのか)は、この2つのステップから評価することができる。パッチの選好度は種によって異なるため、ある一つの境界が様々な種の鳥類の移動に対して異なる透過性を持つと考えることができる。
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  • 深澤 遊, 九石 太樹, 清和 研二
    原稿種別: 本文
    63 巻 (2013) 2 号 p. 239-249
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    土壌中の菌根菌群集は地上部の植生に重要な影響を与える。森林を構成する各種植物の多くは外生菌根(ECM)菌かアーバスキュラー菌根(AM)菌と菌根を形成するが、これら2つの菌根タイプはおのおの宿主範囲が異なる。このため、樹種の異なる森林の境界あるいは森林と他の植生との境界では、土壌中の菌根菌群集も異なり、これが両植生間での実生更新の違いをもたらすことが予想される。本稿では、代表的な森林の境界として、森林と草地の境界、森林と森林の境界、森林と皆伐地の境界の3つを取り上げ、森林の境界で起こっている植生動態、特に樹木実生の更新において、地下の菌根菌群集が与える影響について、実証的な報告をレビューする。森林と草地の境界では、草本の大部分がAM性であるため、隣接する森林の樹種がECM性かAM性かによって、森林由来の樹木実生の定着に及ぼす菌根菌の影響は異なっていた。ECM性の樹種の場合、実生への菌根菌の定着率や多様性は森林に近いほど高く、実生の生存・生長も良かった。一方AM性の樹種の場合、森林から離れても実生の菌根菌定着率は低くならないが、菌根菌の種組成は変化し、それが実生の生長に与える影響は樹種により異なっていた。森林と森林の境界では、ECM性の樹種とAM性の樹種がそれぞれ優占する森林同士が隣接している場合、実生と異なる菌根タイプを持つ樹種が優占する森林で更新しにくいことが示唆された。森林と皆伐地の境界では、森林から離れても実生の菌根菌定着率は変わらず種組成が変化するが、皆伐地に適応した菌種が定着するため実生の生長はむしろ森林内よりも良いことが、主にECM性の樹種による研究から明らかになっている。全体的な傾向として、境界から10m前後離れると地下の菌根菌群集が急激に変化していた。これは樹木の根圏に樹種特異的な菌根タイプが保持され、実生への重要な感染源となることを示唆している。ただし、詳細な調査がなされた樹種は少なく、今後さらに多くの樹種で一般性を検証していく必要がある。特に、AM性の樹種で研究例が少ない。マツ科のECM性樹種を主要な造林樹種としている欧米と異なりAM性のスギ・ヒノキが主要な造林樹種である我が国の人工林の適切な管理のためには、AM性の樹種を対象とした更なる研究の進展が望まれる。
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  • 清和 研二
    原稿種別: 本文
    63 巻 (2013) 2 号 p. 251-260
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    針葉樹人工林など単純化された生態系における生物多様性の復元は森林管理の重要な目標の一つである。スギ・ヒノキ・カラマツなどの人工林では、種多様性が回復可能かどうかは広葉樹の前生稚樹の密度や種数などから推定されている。しかし、間伐や皆伐などの撹乱後に侵入する後生稚樹がどれほど定着し、種多様性の回復に寄与するのか、といった評価はまだほとんどされていない。本稿ではスギ人工林に広葉樹が侵入・定着し、種多様性が回復していくプロセスを詳細に解明した研究を紹介するとともに、種多様性の効果的な回復方法を検討する。無間伐の人工林における散布種子・埋土種子・実生・稚樹の個体数や種数はいずれも隣接する広葉樹林から離れるに従って減少する。一方、間伐をすると、散布種子・埋土種子では同様の距離依存的な減少傾向が見られるが、実生や稚樹では距離依存性は小さくなる。ただし、種子散布距離の短い種では依然として広葉樹林の境界に近い所で実生・稚樹が多く距離依存性が見られるようだ。さらに間伐の強度も種多様性の回復に大きく影響する。一般的に行われている本数間伐率33%の弱度間伐に比べ、67%の強度間伐の方が光(R:FR比)や変温要求性の高い遷移初期種の発芽を促し、後生稚樹の成長を促進することによって種多様性を高めている。しかし、単木的な強度間伐は稚樹を傷つけ作業コストも高いので、帯状皆伐や列状間伐がデメリットもあるが一つの有効な手段である。また、等高線方向に20mほどの幅で行い、50mほどスギ帯を残せば、小面積のスギ林ができる。帯状・列状に伐採された所に広葉樹が更新すれば、その境界からスギ人工林の内部にかけて約10mほどまでは、広葉樹の種数も個体数も多いことが分かっているので、このような境界効果を利用すれば、より簡便に種多様性を高める事ができるだろう。
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  • 酒井 敦, 山川 博美, 清和 研二
    原稿種別: 本文
    63 巻 (2013) 2 号 p. 261-268
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    針葉樹人工林の公益的機能を重視する立場から、自然林と人工林の境界域において人工林側への境界効果がどれくらいの距離に及んでいるのか、本特集の論文の成果を元に整理し、今後の課題を検討した。既往の研究事例から種子の散布距離を調べたところ、風散布種子、動物被食散布種子は、母樹または森林の境界から100m以上離れても散布されていた。貯食散布は散布者によって運搬距離は異なり、ネズミ類は概ね30m以内、リスは50m以上堅果類を運搬して地面に埋めていた。カケスは運搬能力が高く、250m程度堅果類を運搬していた。種子は広い範囲に散布され、人工林にも散布されているが、植物の定着には様々な物理的、生物的な境界効果が働いている。植物の定着には菌根菌や病原菌の影響が大きい。落葉広葉樹林とスギ林の境界域では外生菌根菌がスギ林側に10m程度しか分布していなかった。スギはアーバスキュラー菌根と共生関係にあるが、スギ林内では同菌根菌と共生関係にある広葉樹の生存率や成長がよいことがわかった。このような、菌類や食植者との生物相互作用を解明し、人工林に定着する植物にとっての正および負の境界効果を解明する必要がある。境界効果の大きさや種類は時間とともに変化し、特に境界が発生した直後(皆伐直後)と植生が回復する初期段階では物理的、生物的境界効果が変化していると考えられる。地形が急峻な日本においては地形のバイアスがかかり、境界効果を純粋に評価することが難しいため、試験の設定には注意する必要がある。冷温帯の構成樹種は風散布種子が多く、照葉樹林は動物被食散布種子が多い。また、西日本と東日本では人工林と自然林の大きさや比率、景観構造が異なる。人工林の公益的機能回復を図る場合は、それぞれの景観構造に合った処置を行うべきである。我が国において、人工林側の生態プロセスや境界効果は未解明な部分が多い。長期的なモニタリング体制をつくり研究者同士の情報交換を続けていくことが必要である。
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学術情報
野外研究サイトから(24)
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