日本生態学会誌
Online ISSN : 2424-127X
Print ISSN : 0021-5007
ISSN-L : 0021-5007
64 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
奨励賞(鈴木賞)受賞者総説
総説
  • 岩崎 貴也, 阪口 翔太, 横山 良太, 高見 泰興, 大澤 剛士, 池田 紘士, 陶山 佳久
    原稿種別: 本文
    2014 年 64 巻 3 号 p. 183-199
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
    生物地理学は、歴史的側面や生態的側面などの観点から、生物の分布パターンや分布形成プロセスの解明を目指す学問であり、進化生態学や群集生態学、保全生物学などの分野とも強い関連をもつ学際的領域である。1990年代以降、遺伝解析技術の恩恵を受けた系統地理学の隆盛によって、生物地理学は大きな発展を遂げてきた。さらに近年では「地理情報システム(GIS)」や、それを利用した「気候シミュレーション」、「生態ニッチモデリング」といった新たな解析ツールが、生物地理学分野に新しい流れを生み出しつつある。その基礎的な活用例として、現在の生物種の分布情報と気候要因から生態ニッチモデルを構築し、気候シミュレーションから得られた異なる時代の気候レイヤに投影するというアプローチが挙げられる。これにより、過去や現在、未来における生物の分布を予測することが可能となり、時間的な分布変化を推定することができる。さらに、GISを活用して、モデル化された生態ニッチや系統地理学的データを複合的に解析することで、近縁種間でのニッチ分化や、分布変遷史を考慮に入れた種分化要因の検証、群集レベルでの分布変遷史の検証なども可能となる。本総説では、最初に基礎的な解析ツールについて解説した後、実際にこれらのツールを活用した生物地理学とその関連分野における研究例を紹介する。最後に、次世代シークエンシングによって得られる膨大な遺伝情報や古DNAデータの有用性について紹介した後、それらの情報を用いた生物地理学や関連分野における今後の展望について議論し、GIS技術がその中で重要な役割を果たしうることを示す。
特集 植生のリモートセンシング
  • 久米 篤
    原稿種別: 本文
    2014 年 64 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
  • 松田 修, 末次 憲之, 内田 誠一, 和田 正三, 射場 厚
    原稿種別: 本文
    2014 年 64 巻 3 号 p. 205-213
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
    生物科学の研究では、材料やスケールを問わず、対象物を見分ける必要に迫られることが多い。その際、私たちが最も頻繁に参照する形質は、言うまでもなく目に見える形や色である。しかしながら、私たちはこれらの情報を十分に活用できているだろうか。とりわけ色に関しては、定量的な情報として注意深く扱われていることは稀である。一方、衛星や航空機によるリモートセンシングでは、精密な色情報とも言える分光特性が、地上にある対象物を定量または識別するための主要な鍵情報として活用されている。筆者らは、高精細な分光データを保持することができるハイパースペクトル画像を、ノイズの少ない撮影条件と遺伝的に均質なモデル植物の利点を生かすことのできる実験室において活用することにより、組織または細胞レベルの生理的状態を精度よく予測するための実験系の構築に取り組んでいる。本稿では遺伝学研究にリモートセンシングの異分野技術を取り入れる試みを紹介するが、生態学における同技術の新たな活用法を案出する有用な手がかりとなることを願いたい。
  • 中路 達郎, 小熊 宏之, 日浦 勉
    原稿種別: 本文
    2014 年 64 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
    近年、対象物からの反射を連続多波長で分光計測するハイパースペクトルリモートセンシングが生態系研究分野で注目されている。特に先進的な熱帯林の研究では、ハイパースペクトルリモートセングで得られた可視-短波長赤外波長の連続分光反射率データと多変量解析手法を駆使し、樹木の生産力や養分動態、樹種判別に関連した多種類の葉形質の非破壊・同時推定が可能になりつつある。葉形質の時空間変動の把握は気候変動の影響予測や生物多様性の評価においても重要であり、今後、地球規模のニーズに応えるためにも、幅広いバイオームでリモートセンシング研究の発展と生態系研究との一層の連携が期待される。
  • 細井 文樹, 大政 謙次
    原稿種別: 本文
    2014 年 64 巻 3 号 p. 223-231
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
    森林群落のもつ3次元構造は、森林生態系の機能を維持するためにきわめて重要な役割を果たしている。近年、スキャニングライダー(Light Detection And Ranging: LiDAR)を用いた3次元リモートセンシングにより、森林構造の計測が行われるようになってきた。スキャニングライダーは森林の3次元点群データを取得可能な装置で、得られたデータをもとに、様々な森林構造パラメータを算出することが可能である。本稿ではスキャニングライダーシステムを使った森林構造計測の概要について、具体的な応用事例を交えながら紹介する。応用事例としては、森林の3次元構造を表す指標の一つである葉面積密度の垂直分布の推定法について紹介する。本方法では、可搬型スキャニングライダーデータをもとにレーザービームの光跡をトレースし、その情報を用いてボクセルモデリングを行い、得られたモデルからレーザービームの衝突頻度を計算し、その垂直分布を算出する。さらにもう一つの事例として、可搬型スキャニングライダーデータを用いた樹木の材積の推定法について紹介する。本方法では、落葉期にライダーによる計測を行い、得られたデータから、幹や枝の内部を充填するソリッドボクセルモデリングを行い、ボクセル数をカウントすることにより、任意の部位の材積の推定を行う。これらの方法を広葉樹群落に適用した場合の結果について述べる。
  • 村上 拓彦, 望月 翔太
    原稿種別: 本文
    2014 年 64 巻 3 号 p. 233-242
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
    リモートセンシングによる植生マッピングについて、リモセンデータの選択、ピクセルベースとオブジェクトベース、新しい画像分類手法の順番で論じた。リモセンデータとして、地球観測衛星、航空機搭載型センサ、UAVに言及した。地球観測衛星は空間分解能別に各種衛星・センサを紹介した。画像分類の最小単位としてピクセルベース、オブジェクトベースにふれた。高分解能衛星データの登場後、オブジェクトベースでの植生マッピングの機会が多くなっている。新しい画像分類手法として機械学習に着目し、人工ニューラルネットワーク、決定木、サポート・ベクタ・マシン、集団学習について解説した。その他、ハイパースペクトル、多時期データ、スペクトル情報以外の情報を用いた植生マッピングについても事例を紹介した。今後はリモートセンシングの単なる可能性を示すだけでなく、植生に関連する主題図という高次プロダクトを確実に提供できる体制を整える必要もある。
  • 斎藤 琢, 永井 信, 村岡 裕由
    原稿種別: 本文
    2014 年 64 巻 3 号 p. 243-252
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
    急速な気候変動が顕在化した現在において、陸域生態系の炭素収支の時空間変動(炭素動態)を地域から地球規模で広域的に高精度に評価することが「環境科学」に関連する様々な分野で期待されている。リモートセンシングは、様々な時間・空間スケールで陸域生態系の炭素動態に関わる物理量を推定可能であり、陸域生態系の炭素収支の現状診断と将来予測の高度化に貢献している。本稿では、陸域生態系の炭素収支の現状診断と将来予測におけるリモートセンシング観測の期待と課題について、特に、リモートセンシングによる光合成量・光合成能の推定と葉群フェノロジーの推定およびそれらの炭素動態研究への応用について概説した。いずれの研究の発展においても、多地点に展開する生態系サイトで得たリモートセンシング観測情報や関連する生態学的な物理量に関する知見の集積・統合(観測ネットワーク化やデータベース化)および研究者コミュニティの連携が必要不可欠であり、生態学者の更なる積極的な参加が強く望まれる。
  • 望月 翔太, 村上 拓彦
    原稿種別: 本文
    2014 年 64 巻 3 号 p. 253-264
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
    野生動物研究への衛星リモートセンシング技術の適用は、航空機からの動物個体の識別や行動の評価から始まった。現在では、野生動物研究に対する衛星リモートセンシング技術は、野生動物の生息地を評価する目的に使用される事例が多い。野生動物に関係する生息地の指標を作り出す事や、野生動物の分布や行動と、環境要因との関係性を評価する事が求められている。さらに、潜在分布や生息適地を広域に地図化する事で、保全問題や獣害問題に対する効果的なゾーニングが期待されている。本稿では、近年の野生動物の保護管理における衛星リモートセンシング技術の適用例を挙げる。生息地の指標化や、ジャイアントパンダを対象とした生息地の分断化に関して、衛星リモートセンシング技術が果たした役割について述べる。また、生息適地の推定に対する事例研究として、ニホンザル分布域の長期間における変化を紹介する。これは、現地での野生動物の情報と衛星リモートセンシング由来の環境要因から生息適地を抽出し、生息状況の地図化を図った研究である。ここから、衛星リモートセンシング技術を用いた野生動物研究の可能性について考察する。
野外研究サイトから(28)
博物館と生態学(24)
feedback
Top