日本生態学会誌
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66 巻 , 1 号
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奨励賞(鈴木賞)受賞者総説
  • 門脇 浩明
    66 巻 (2016) 1 号 p. 1-23
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    生物群集にみられる多様性はどのように形成され、維持されてきたのか。私たちはその仕組みをより明確に理解 することを目指し、今日の生態学を築き上げてきた。その研究史は、空間に対する認識の変遷を軸に捉えることができる。空間を大きく捉えるようになったことで、生態学は、生物群集の様々な複雑性を理解することの必要性に直面した。生物群集はパッチ状環境に成立していること、そして、小さなパッチの集合が構成する、より大きな生息地の内部(パッチ間)において生じる移動分散、その結果としての空間異質性こそが多種共存の鍵を握ることが認識されるようになった。しかし、空間的な視野の拡大は、大きなスケールにおける理論的仮説と小さなスケールの実験を積み重ねてきた実証研究との間に深い溝をもたらした。「自然の縮小模型(natural microcosm)」は、大きな仮説と小さな実験の架け橋として、様々な空間や時間にわたる生物群集の複雑性に関する仮説の検証を可能とする。本稿では、自然の縮小模型を活用した3 つの事例研究を中心に、多種共存の仕組みとそれを実証するまでの道筋を明らかにする。それらを踏まえ、多種共存の可能性を支配する様々な要因がスケールに依存する理由を考察する。さらに、そのスケール依存性が私たちの生物群集に関する理解や保全・生態系管理の取り組みに対し及ぼす影響について考察する。このスケール依存性の問題によって、今後、生態学は、これまでとは異なる視点から多種共存の最も基本的な仕組みを追求することを迫られている。その仕組みとは、異なる資源を利用するといった単純なニッチ分割ではなく、空間や時間の異質性やスケールの利用様式という点からみた、より拡張されたニッチ分割である。拡張されたニッチ分割の解明に向け、多種共存の実証研究を前進させるために必要なことは、環境条件とそのスケールや異質性が、生物間相互作用に対しどのように介在し、その結果として多種共存に関与しているのかを問うことである。複数の時空間スケールにわたる検証作業をへて得られるであろう実証的知見は、自然生態系において保全すべき環境異質性やスケールと多種共存理論とを明確に結びつけることを可能とする。その時に生まれる新たな包括的枠組みは、生態系管理や保全、自然再生など広範な分野を力強く導くこととなり、私たちの未来を切り拓いていくだろう。
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奨励賞(鈴木賞)受賞者総説コメント
特集1 生態系における汚染の動態と影響
  • 綿貫 豊, 関島 恒夫
    66 巻 (2016) 1 号 p. 31-35
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    環境化学分野では環境汚染のモニタリング、影響評価、コントロールのためにこれまで数多くの研究がなされてきた。その結果、過去に排出され未だに環境中に蓄積している物質に加え、新規に開発・合成された化学物質の影響により、生態系における汚染は今現在も進行しており、野生生物に対する影響も時として甚大になることが明らかとなってきた。一方、自然界における汚染物質の挙動は、親水性などの汚染物質の性質だけでなく、汚染物質を摂取した動物の生理・行動特性や汚染物質が取り込まれた食物網や生態系によっても異なるので、その理解には生態学的視点が欠かせない。従来、環境汚染物質の影響評価は毒性試験を通した催奇形性や致死率の評価、あるいは自然界における残留蓄積量の評価に焦点があてられてきたが、生態学は個体群・群集・生態系といったより複雑な系を対象とした影響評価に貢献できるだろう。このシンポジウムではさらに、リスク削減や回避の目標を明確にした上で、モニタリングと影響評価のコストを組み込んだ現実的対応策にもとづいた「順応的管理」の考えを導入することや、汚染物質に対する感受性の種内変異を考慮した集団遺伝学的アプローチなどを取り入れることが提案された。
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  • 田辺 信介
    66 巻 (2016) 1 号 p. 37-49
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    化学物質の中でヒトや生態系にとって厄介なものは、毒性が強く、生体内に容易に侵入し、そこに長期間とどまる物質であろう。こうした性質をもつ化学物質の代表に、PCBs(ポリ塩化ビフェニール)やダイオキシン類などPOPs(残留性有機汚染物質)と呼ばれる生物蓄積性の有害物質がある。筆者がPOPs の汚染研究を開始したのは1972 年のことで、テーマは「瀬戸内海のPOPs 汚染に関する研究」であった。当時の汚染実態はきわめて深刻化していたが、不思 議なことに瀬戸内海に残存しているPOPs 量は使用量に比べ予想外に少ないことに気がついた。この疑問は、「大気経由でPOPs が広域拡散したのではないか」という仮説を生み、地球汚染を実証する研究へと進展した。この研究の中で、ダイオキシン類やDDT は局在性が強く地域汚染型の物質であるが、PCBs や殺虫剤のHCHs は長距離輸送されやすい地球汚染型の物質であることを、大気や水質の調査だけでなく生物を指標とした研究でも明らかにした。また冷水域は、POPs の沈着の場となることを示唆した。さらに、POPs は食物連鎖を通して生物濃縮され高次の生物種ほど汚染が著しいこと、とくに海洋生態系の頂点にいる鯨類などの水棲生物は、体内にきわめて高い濃度のPOPs を蓄積していることが認められた。この要因として、この種の動物の体内に有害物質の貯蔵庫(皮下脂肪)が存在すること、授乳による母子間移行量が大きいこと、有害物質を分解する酵素系が一部欠落していること、などが判明した。以上の結果から、海棲哺乳動物はPOPs のハイリスクアニマルであることが示唆され、地球環境時代に相応しい環境観や社会観を醸成して生態系を保全する施策が必要なことを提言した。また、先進国だけでなく新興国や途上国でもPOPs 汚染は顕在化しており、今後さらに深刻化することが予想されるため、ストックホルム条約の適切な履行が求められる。
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  • 山下 麗, 田中 厚資, 高田 秀重
    66 巻 (2016) 1 号 p. 51-68
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    プラスチックの生産量は増加傾向にある一方で、廃棄量も増加しており、適切に処理されないものは最終的に海洋へと流出していく。プラスチックは難分解性であるため長期間にわたって海洋中に存在し、鯨類やウミガメ類など様々な海洋生物に摂食されている。特に、海鳥類では高頻度のプラスチック摂食が確認されている。プラスチック摂食による影響は、物理的な摂食阻害とプラスチック由来の化学物質が体内へ移行して起こる毒性の2 つが考えられる。近年、プラスチックに吸着するポリ塩化ビフェニル(PCBs)と難燃剤として添加されているポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)がプラスチック摂食によって外洋性海鳥の体内に移行する証拠が出された。また、動物プランクトンなどの低次栄養段階の生物にもマイクロプラスチックと呼ばれる微小なプラスチックと化学物質が取り込まれていることが報告され始め、海洋生態系全体に汚染が広がっていることが明らかになってきた。このようにプラスチックが汚染物質のキャリヤーとしてふるまうことから、海洋生物のプラスチック摂食が生態系内での新たな汚染物質の暴露ルートとな。 今後、海洋へのプラスチック流出量の増加に伴って海洋生物への汚染物質の負荷量が大きくなり、海洋生態系全体へ脅威が増すと考えられる。
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  • 石庭 寛子, 十川 和博, 安元 研一, 星 信彦, 関島 恒夫
    66 巻 (2016) 1 号 p. 69-79
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、化学物質汚染による野生個体群への影響を明らかにする1 つのアプローチとして、生物で普遍的に起きている「適応」に焦点をあてた評価例を紹介する。ダイオキシン類による汚染によってアカネズミ個体群内に、ダイオキシン抵抗性個体が増加するような集団構造の変化が起きているか否かを明らかにするため、ダイオキシン感受性の違いを識別する遺伝子マーカーを開発し、野外集団への適用を試みた。遺伝子マーカーとしてダイオキシン類の作用機序に深く関わるダイオキシン受容体(AhR)に着目し、野生集団におけるAhR 遺伝子の配列解析を行ったところ、アカネズミのAhR にはタンパク質の機能に差をもたらす変異、グルタミン(Q)、アルギニン(R)が799 番目のアミノ酸に存在していた。さらに生体での機能を調べるため、各遺伝子型を持つアカネズミへダイオキシン投与を行ったところ、Q を持つ個体はダイオキシンに対する反応が高く、R を持つ個体は低かった。このことから、このAhR のアミノ酸変異は、アカネズミ個体群においてダイオキシンに対する抵抗性保持個体を検出する遺伝子マーカーとして有用であると示唆された。ダイオキシン汚染地域のアカネズミ個体群において、確立された遺伝子マーカーのアリル頻度を調べたところ、非汚染地域と比較してアリル頻度に差は見られなかった。ダイオキシン類の暴露下で、Q タイプは有利性が低下し、R タイプは有利性が相対的に増加するが、その選択係数は非常に低く、世代数の経過も少ないためにアリル頻度の変化は見られなかったと考えられる。
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  • 岩崎 雄一
    66 巻 (2016) 1 号 p. 81-90
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    化学物質の生態リスク評価(特に生態影響評価)は、主に室内毒性試験結果に基づき行われる。単一の種を用いた室内毒性試験は、比較的簡便で手法が標準化されているという実務的なメリットがある一方で、その結果のみから実環境における生物個体群や群集の応答を予測することには限界がある。そこで本稿では、実際の野外での生物群集の応答を直接観察できる野外調査に着目し、まず、その利点及び欠点、生態影響評価手法(室内試験、模擬生態系試験、野外実験、野外調査)における位置づけを整理した。さらに、底生動物調査結果に基づき金属の“安全”濃度を推定した事例から、①交絡要因の影響をできるだけ排除した調査デザインや計画を丁寧に選択すること、②分位点回帰を用いて複数の調査データをメタ解析することで、野外調査が室内試験結果を基にする生態リスク評価結果の信頼性を評価・補完する情報を提供できることを示した。最後に、生態系保全を目的とした今後の化学物質の管理施策を見据え、生物モニタリングや野外調査の導入が提供しうるさらなるメリットについて考察した。
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  • 松田 裕之
    66 巻 (2016) 1 号 p. 91-94
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    化学物質による環境汚染の生態系への影響は、人の健康影響とともに1960 年代以後に社会問題化したが、毒性の原因物質をつきとめ、発生源を断つことにより、毒性の強い物質による環境汚染は減りつつある。化学物質の毒性は 人の健康リスクと同様に実験動物の個体への影響によって評価されることが多い。しかし、次世代の人類が持続可能に生態系サービスを受け続けるという自然保護の目的からみて、野生生物の個体群の存続への影響を評価すべきである。毎年数万ともいわれる新規の人工化学物質の毒性をすべて評価することはできないし、すべての生物種への影響を実験的に吟味することもできない。そのため、化学物質の分子特性を考慮した毒性の予測手法や種間外挿などを使わざるを得ない。しかし、幼虫時代を水圏で過ごすトンボ類への影響など、限られた実験動物による毒性試験では予測できない影響もみられる。また、実験で懸念された影響予測が実際に汚染された野外の生態系調査によって見直されることもある。むしろ、化学物質の許認可を暫定的に行ったうえで事後検証を行い、規制措置を見直すことも考えられる。このような順応的管理は水産資源や野生動物管理などで多用されるが、環境汚染対策にも有効かもしれない。
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  • 野田 隆史
    66 巻 (2016) 1 号 p. 95-108
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    汚染物質の生物個体群への影響は直接的毒性効果ばかりでなく他種を介した間接的影響を通しても生じる。群集モジュール法は作用因の間接的影響を評価するための理論的枠組みであり、生態学研究において消費者、自然撹乱および温室効果ガスによる気候変化の影響を研究する際に頻繁に用いられてきた。そこでこれらの既往研究をレビューするとともに生態毒性学で得られている知見を参考にして、群集モジュール法を通して汚染の間接的影響を明らかにする上で不足している知見と有効な方法論について考察した。最初に間接的影響を明らかにするうえで不可欠な汚染の直接的影響に関する情報を検討した。生態毒性学から得られている汚染の直接的影響についての情報は実験条件下での少数のモデル生物における汚染物質濃度と死亡率の関係に偏っているため、多様なメカニズムで生じる汚染の間接的影響を知るには不十分である。特に不足している情報は汚染物質のもたらす多様な非致死的作用と選択的致死的作用、それらの変異性と種の生態的特性(汚染耐性を除く)及び汚染レジーム(汚染物質の時空間分布)との関連性、さらに生物から汚染物質へのフィードバックと受け手の進化的適応的反応及び汚染物質の影響の因果関係、についてである。いずれにおいても、生態系における機能上の役割と系統分類学上の位置の様々な種における情報が必要である。続いて汚染の間接的効果を明らかにする場合に群集モジュール法を適用可能な研究方法とそれらの方法で取り扱うのに適した研究テーマについて整理した。群集モジュール法は、(1)実験的手法、(2)大規模長期モニタリング、(3)汚染事故後の総合的研究に適用することが可能であり、これら3 つの研究方法は互いに相補的な役割を担っている。実験的手法は単純な群集において汚染が狭い範囲で生じる場合に、移動性の少ない生物や比較的小型の生物へ及ぼす汚染の短期的影響を明らかにするうえで特に有効である。一方、実験的手法ではカバーできない状況下での汚染の影響や汚染よってもたらされる個体群の不測の変化の検出およびその背後にある因果関係の解明には大規模長期モニタリングや汚染事故後の総合的研究が有効であると考えられる。
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  • 綿貫 豊
    66 巻 (2016) 1 号 p. 109-117
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    生物は環境中の汚染物質を蓄積する。したがって、体組織の汚染物質濃度は、環境中よりも高く、また、一定期間におけるある範囲の汚染を反映していると考えられる。そのため生物の体組織は、海洋汚染の分布や経年変化のモニタリングに利用されてきた。しかし、蓄積の程度は、疎水性だと体内に残留しやすいといったように、汚染物質の性質に左右される。また、使う生物種により生物蓄積(濃縮)過程や移動性が異なる。生物蓄積(濃縮)過程は、ある海域内においても、表層か底層かといった食物連鎖のタイプによって、また物理的な撹乱や回遊などによる生物種の入れ替わりによっても変わる。したがって、生物組織中の汚染物質濃度を汚染の指標とするためには標準化の必要があり、そのためには、環境化学的視点に加え、生態学的な視点が必要である。
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特集2 持続可能社会を実現するための実効性のある制度としてのユネスコエコパークの可能性
  • 酒井 暁子, 松田 裕之
    66 巻 (2016) 1 号 p. 119-120
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 朱宮 丈晴, 河野 円樹, 河野 耕三, 石田 達也, 下村 ゆかり, 相馬 美佐子, 小此木 宏明, 道家 哲平
    66 巻 (2016) 1 号 p. 121-134
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    綾町は約半世紀前から産官学民の協働によって先進的な人と自然が共生する町づくりを進め、2005 年からは照葉樹林の復元事業を通じて保全活動を強化し、2012 年には町の全域がユネスコエコパークに含まれることになった。移行地域を含めたユネスコエコパークの登録は日本では初めてである。ユネスコエコパーク登録は、綾町が移行地域を中心に核心地域や緩衝地域の保全にも主体的に関与することを明示化したものである。登録後、綾町はユネスコエコパーク推進室を創設し、綾町生物多様性地域戦略を通じて生物多様性保全や学術研究教育支援等を検討するとともに、綾町内外の多様な主体と連携をすすめていく新たな体制づくりを進めている。本稿では、ユネスコエコパーク登録後の社会変化についていくつかの指標、すなわち観光客数、人口増減、ふるさと納税額の変化を使って自然に配慮した持続可能な地域づくりにむけた社会動向を明らかにした。さらにユネスコエコパークの目的である生物多様性保全、持続可能な地域づくり、学術研究支援という3 つの観点からみた今後の課題について報告した。
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  • 鈴木 和次郎, 中野 陽介, 酒井 暁子
    66 巻 (2016) 1 号 p. 135-146
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    福島県の西端に位置する只見町は、日本有数の豪雪地帯で一年のうち半年は雪の中にある。約74,000 ha の広大な面積の90%以上を山林原野が占め、人口はわずか4,600 人程である。第二次世界大戦後の只見川電源開発による巨大な田子倉ダムと水力発電所を持つが、特筆される産業はなく、過疎・高齢化が地域社会の衰退に拍車をかけている。そうした中で、只見町は平成の広域合併を選択せず、独自の町づくりに着手した。その指針として町民参加によって「第六次只見町振興計画」が策定され、活動のスローガンとして「自然首都・只見」宣言が採択された。それは、これまで地域振興の大きな障害と考えられてきた豪雪とブナ林に代表される自然環境を、受け入れてさらに価値を見出し、それらに育まれてきた伝統的な生活・文化・産業を守ることによって地域の発展を目指すとの内容である。只見町は、これを具体化する包括的な手段として、ユネスコMAB 計画における生物圏保存地域(Biosphere Reserve, 国内呼称:ユネスコエコパーク)を目指すことを戦略的に選択した。ユネスコエコパークでは、原生的な自然環境と生物多様性を保護しつつ、それらから得られる資源を持続可能な形で利活用し、もって地域の社会経済的な発展を目指す。只見町では、歴史的に見ると、焼畑を中心に、狩猟、採取、漁労、林業などの複合的な生業によって地域社会が成り立ってきた。こうした自然に依存した生活形態は、現在でもなお色濃くこの地域社会を特徴付けている。只見ユネスコエコパークでは、こうした伝統的な生活や地場産業を大切にし、地域の発展を模索する。また、こうした取り組みを、過疎と高齢化に直面する全国各地の山間地の自治体に発信することで、ユネスコが期待する世界モデルとしての機能を担ってゆきたい。
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  • 川口 幹子, 荒木 静也
    66 巻 (2016) 1 号 p. 147-154
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    :国境離島である対馬は、大陸の影響を色濃く受けた極めて独特な生態系を有している。島の9 割を占める山林は、その大部分が二次林であり、炭焼きや焼き畑といった人々の暮らしによって形成された里山環境が広がっている。一方で、信仰の力によって開発から守られてきた原生林も存在している。しかし対馬では、急速な過疎高齢化によって里山の劣化が進み、原生林においても獣害や悪質な生物採取により貴重な動植物の生息環境が破壊されている。里山を象徴する生物であるツシマヤマネコも年々数を減らし、絶滅危惧種IA 類に指定されている。そのような背景があって、対馬では、原生的な自然と里山環境とを同時に保全するための仕組みづくりが喫緊の課題であった。市民レベルでは、野焼きの復活や環境配慮型農業の導入など、ツシマヤマネコの保全を銘打ったさまざまな活動が行われている。しかし、これらの活動が継続されるためには、制度的な仕掛けが必要である。ユネスコエコパークの枠組みは、原生的な自然と里山環境とを、エコツーリズムや教育、あるいは経済的な仕組みによって保全する一助となるものであり、まさにこの目的に合致するものだった。本稿では、対馬の自然の特徴を整理したうえで、その保全活動の促進や継続に関してユネスコエコパークが果たす役割について考察したい。
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  • 田中 俊徳
    66 巻 (2016) 1 号 p. 155-164
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、特集のテーマである「ユネスコエコパーク:持続可能社会を実現するための実効性のある制度を目指して」を念頭に置き、我が国のユネスコエコパークが実効性の高い制度として発展するために必要な方策について、同様の国際的な自然保護制度との比較分析から論じるものである。本稿では、ユネスコエコパークが依拠するユネスコMAB 計画と同様のサイトベースの国際自然保護制度として、世界遺産条約、ラムサール条約、世界ジオパークネットワークを取り上げ、サイト間の情報共有や相互交流、普及啓発を担う国内レベルのネットワークがどのような形で管理運営されているかに焦点を当て、論じる。それぞれの国内ネットワークとして、「世界文化遺産」地域連携会議、ラムサール条約登録湿地関係市町村会議、日本ジオパークネットワーク、ユネスコエコパークネットワークを取り上げ、各ネットワークの事務局体制、入会資格、会費制度、実施事業等を比較分析する。とりわけ、1989 年から25 年に渡り活動しているラムサール条約登録湿地関係市町村会議、2009 年に発足し、活発な活動で知られる日本ジオパークネットワークについて詳細に論じる。比較分析の結果から、ユネスコエコパークがより実効性の高い制度として発展するために、1. サイト・自治体の主体性及びネットワークの独立性を重視すること、2. 実施事業を充実させること、3. ユネスコエコパークネットワークの事務局体制を強化すること、4.1 から3 までを実現するために、入会資格と会費制度を検討すること、の4 点を提言する。
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  • 酒井 暁子
    66 巻 (2016) 1 号 p. 165-172
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    はじめに本特集の総括として、本誌での前回2012 年の特集も踏まえてユネスコエコパーク(Biosphere Reserve;BR)制度の現状の整理を行い、この間に優れたサイトの登録をはじめとして大きな進展があったことを確認した。しかし一般社会における認知度の向上が今だ課題であり、その改善のためには、客観的な指標によって他制度との比較分析を行うことで、発信力の現状を把握し方策を提示することが有効であると考えた。そこで国内で運用されているBRを含む国際的な7 制度、および法制度にもとづく国内5 制度を対象として、それらの発信力の指標としてGoogle ウェブ検索の「その語句とそのままの語順で完全に一致するフレーズを検索」する機能によって制度名称でのヒット数を調べ、その要因を分析した。解析の結果、ヒット数は各制度のサイト登録初年から現在までの経過年数および制度カテゴーの違いによって説明でき、BR は、1980 年を初年とする全サイトを対象とすると国内制度の成績に近いが、2012 年に認定が始まった新型サイトを対象とすると他の国際的制度と遜色ないことが示された。各BR の名称でのヒット数の傾向もこれと整合的だった。また制度名でのヒット数と登録サイト数は無相関であり、年あたりの増加数が増えることが必ずしもヒット数の増加に結びつかないことがわかった。以上を踏まえユネスコエコパーク制度の運用に関しては、今後も現状の努力量を維持し、拙速なサイト数拡大は控え、個々のサイトの質の向上を支援しつつ超長期にわたって優 良なサイトを堅実に増やし続けるとの方針を提案する。
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学術情報特集1 若手研究者のキャリアパス支援
  • 坂田 剛
    66 巻 (2016) 1 号 p. 173-180
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本生態学会は、男女共同参画学協会連絡会による第3 回科学技術専門職の男女共同参画実態調査(2012 年11 月)に参加した。この調査によって、全会員の1/5 強972 名からの回答が得られた。また回答者の45%は35 歳以下と、生態学会員若手の状況や意見を推し量ることが可能なデータが得られた。本稿では、若手の雇用問題に焦点をあてて集計した結果を報告する。生態学会員は大学での研究職志向が強いが(回答者の71%が希望)、任期つきの職における在職年数長期化などポスト獲得の困難さが伺えた。また、ポスドク後のキャリアパス支援には、常勤研究職の拡充を望む意見が最も多かった。一方で、行政職など研究職以外の拡充も半数程度の回答者が望んでいた。
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  • 篠原 信貴
    66 巻 (2016) 1 号 p. 181-191
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    有期労働契約に関する平成24 年度労働契約法改正、特に無期転換ルールとこれによって生じると懸念される雇止めを念頭に解説し、検討を加える。無期労働契約における解約自由の修正(解雇権濫用法理)、有期労働契約における期間満了の効果の修正(労働契約法19 条)が現在の雇用終了に関する法的ルールを作り出しており、解雇はもちろ ん、一定の雇止めについても合理性・相当性が求められている。つまり、使用者にとって解雇は不可能であるが雇止めは可能であるというシンプルな構造にはなっていない。労働契約法改正により労働契約法18 条において導入された原則5 年を超えて有期労働契約を反復更新している労働者に無期転換申込権を付与するという無期転換ルールは、この雇用終了に関する法的ルールと並存して設定された。そのため、無期転換ルールの回避を意図する雇止めが生じた場合でも、当該雇止めは裁判の場においては労働契約法19 条に基づく審査を免れることはできず、他方で無期転換後に解雇に至った場合には解雇権濫用法理によって審査がなされる。この両審査は、雇止めの場合には雇用継続に対する合理的な期待の有無と雇止めの合理性・相当性審査という二段階審査であるが、解雇の場合には必ず合理性・相当性審査がなされるという一段階の審査であるという点、及び合理性・相当性の中身が解雇の場合にやや厳格であるという点に差異がある。無期転換回避のための雇止めが生じるとすれば、この差異を捉えてなされることになるが、これをどのように評価すべきであるのかは、労働契約の内容・運用によって異なる。そこで、解雇・雇止めの適否に影響を与えうる要素を人事管理について正社員と非正規社員(限定正社員)の視点から整理し、また雇用継続の期待に関して不更新条項の運用がもたらす影響を分析する。
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  • 葛原 武典
    66 巻 (2016) 1 号 p. 193-201
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ポスドクスタイル(株)は、博士号取得者に向けた転職支援サービスを提供する民間事業者である。本稿では、主に文部科学省 科学技術・学術政策研究所の公表データに基づき、博士号取得者の雇用環境を説明したたうえで、ポスドクスタイルの活動の事例を簡単に紹介する。
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  • 半場 祐子, 別宮 有紀子
    66 巻 (2016) 1 号 p. 203-207
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2010 年10 月に発足した日本生態学会キャリア支援専門委員会は、若手研究者が男女を問わず研究職だけでなく様々な分野で活躍できるよう、キャリア形成のための支援活動をおこなっている。本稿では、キャリア支援専門委員会が行ってきたフォーラムや企業ブースなどの情報提供活動と、今後の計画を紹介する。また、若手研究者のキャリアパスをめぐる国などの対応と今後の展望についても、あわせて簡単に紹介する。
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学術情報特集2 情報化時代の生態学―GBIF と生物多様性情報学―
  • 細矢 剛
    66 巻 (2016) 1 号 p. 209-214
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    地球規模生物多様性情報機構(Global Biodiversity Information Facility、GBIF)は、地球規模で生物多様性情報を収集・提供する機構である。GBIF は、国、研究機関などの公式の機関が参加者となり、意思決定は、年に1 回開催される理事会においてなされる。実質的な運営は執行委員会と事務局が担っている。各参加国からのデータは、ノードと呼ばれる中核機関を通じてGBIF に提供されており、現在5.7 億件の標本情報、観察情報をだれでもホームページからダウンロードして利用できる。日本国内の活動は日本ノード(JBIF)が担っており、国立科学博物館(科博)・国立遺伝学研究所(遺伝研)・東京大学が拠点となって、GBIF への情報提供のほか、普及活動、アジア地域での活動への対応がなされている。GBIF の活動は世界6 地域に地域化し、日本はアジア地域で最多のデータ提供国であるが、アジアからのデータ数はGBIF 全体の3%に過ぎず、いっそう活発な活動が求められる。今後、データの統合・利用の互換性を維持のための技術的な問題の他、コピーライトの問題など、解決しなくてはならない課題が多数あるが、生物多様性情報学的な常識・基礎知識の普及や、オープンアクセスなど、オープンマインドな知識共有の文化醸成が今後の課題である。
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  • 大澤 剛士, 細矢 剛, 伊藤 元己, 神保 宇嗣, 山野 博哉
    66 巻 (2016) 1 号 p. 215-220
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2013 年、生物多様性情報学の世界的な現状と課題をまとめた地球規模生物多様性情報概況(Global Biodiversity Informatics Outlook: GBIO)が公開された。これは地球規模生物多様性概況(Global Biodiversity Outlook: GBO)の生物多様性情報分野版に相当するもので、生物多様性情報学という分野の趨勢を確認し、今後を見据える重要文書である。筆者らGBIF 日本ノードJBIF では、本文書を意訳し、オープンデータライセンス(CC-BY)で公開した。さらに文書の公開に併せて公開ワークショップを実施し、国際的な状況と日本の現況について議論を行った。その結果、生物多様性情報の分野において、国際的な課題と日本の課題の間にはギャップがあることが見えてきた。本稿は、GBIO 翻訳版の公開に併せ、2014 年12 月15 日に開催された第9 回GBIF ワークショップ「21 世紀の生物多様性研究ワークショップ(2014年)「日本と世界の生物多様性情報学の現状と展望」」における議論をもとに、日本における生物多様性情報の現状と課題について論じる。
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  • 神保 宇嗣
    66 巻 (2016) 1 号 p. 221-227
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本における生物多様性情報を発信するシステムに関する現状と課題を概説し、その課題を解消する一方法として生物多様性情報の簡易データベースシステムを提案した。現在の生物多様性情報の公開は、印刷物やウェブサイトなどが多くデータ形式がまちまちなため、データの検索や再利用がしばしば困難である。今回提案するシステムは、メタデータとデータの二枚の表から自動的にデータベースを作成するもので、データ提供者の作業を減らし、かつ自動的に標準的な方法で公開できる点で、データ提供者にも利用者にもメリットがある。また、オープンソフトウェアで構成され、システム自身もオープンソースで公開することで、今後の自由な更新が可能となる。データ公開の大きな流れの中で、このようなシステムを核とし、データ提供者と利用者双方が参加するコミュニティの形成が必要である。
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  • 古川 泰人
    66 巻 (2016) 1 号 p. 229-236
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 宮崎 佑介
    66 巻 (2016) 1 号 p. 237-246
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    新興の学術領域であるCitizen Science(市民科学)の発展は、情報科学技術の発展と不可分の関係にある。生物多様性に関連する分野においても、その可能性はとみに高まっている。本稿では、市民科学に関連する生物多様性情報データベースの現況と課題を、国内外の事例から概観することによって、今後の生物多様性情報データベースを活用した市民科学の在り方を考える。
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  • 渡辺 恭平
    66 巻 (2016) 1 号 p. 247-252
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    地方自然史博物館は多数の標本を収蔵する点で、生物多様性情報の活用における重要な役割を担う。博物館活動の三本の柱、資料収集管理、調査研究、教育普及の各領域における現状と課題を整理した上で、今回の特集であるGBIF の活動のメリットを整理すると、①台帳化の促進を館独自でない予算で推進できる、②、①に伴い、電子情報に基づく資料の管理や検索が行えるようになり、業務の効率性が高まる、③博物館に収蔵されている資料の認知度が高まり、多くのユーザーによって利用されることで資料の価値が高まる、④地方のレベルを超えた研究活動、教育普及活動への資料の利用が推進されること、が挙げられた。このうち、③と④はユーザーの視点からも標本の情報へのアクセスが良くなる点で、多大なメリットがあると考えられた。これら活動推進を軸として、地方自然史博物館における、①生態学者の諸活動への協力、②生態学者が収集した標本の保管、③標本の作り方や管理、同定手法を学ぶ場について言及した。
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  • 伊藤 元己
    66 巻 (2016) 1 号 p. 253-258
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
野外研究サイトから(32)
博物館と生態学(25)
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