日本生態学会誌
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68 巻 , 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
大島受賞総説
  • 大園 享司
    2018 年 68 巻 3 号 p. 149-168
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー
    菌類群集の地理的な勾配に沿った多様性と機能を明らかにし、環境要因との関連性について実証研究を行なった。落葉分解菌については、熱帯林から亜熱帯林・温帯林・亜高山帯林を経て北極・南極の極域ツンドラに至る環境傾度、標高傾度、および森林の伐採・遷移にともなう多様性と機能の応答を明らかにし、それらが気温、降水量、および落葉の植物種や化学性と密接に関連することを示した。培養系で滅菌落葉への分離菌株の接種試験を行い、菌類種ごとの潜在的な分解活性を評価するとともに、個々の環境要因が菌類の潜在的な分解力に及ぼす影響を検証した。樹木葉の内生菌では、本邦の亜熱帯林から冷温帯林を経て亜寒帯林にかけて種多様性が次第に低下するとともに、宿主樹種との相互作用ネットワークの特殊化の程度が高くなる傾向が認められた。木材腐朽菌を亜熱帯林・冷温帯林・亜高山帯林で比較すると、粗大枯死材の分解の初期段階にはいずれの森林でもリグニン分解性の白色腐朽性担子菌類がリグニンとセルロースの同時分解に関わっていた。一方、後期段階の選択的なセルロース分解には、それぞれクロサイワイタケ科子?菌類、軟腐朽性の子?菌類、褐色腐朽性の担子菌類が関与していた。これら一連の実証研究の意義と問題点、および今後の研究の方向性について議論した。
  • 広瀬 大
    2018 年 68 巻 3 号 p. 169-170
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー
  • 保原 達
    2018 年 68 巻 3 号 p. 171-172
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー
特集: 生態学と政策・制度をつなぐコミュニケーションのデザイン
  • 相川 高信, 西田 貴明
    2018 年 68 巻 3 号 p. 173-177
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー
  • 黒川 紘美
    2018 年 68 巻 3 号 p. 179-188
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー
    世界規模で起こる生物多様性の喪失は、地球に生きる私たちひとりひとりにとって重要な課題である。課題を解決するための国際的な枠組みとして生物多様性条約(生物の多様性に関する条約)があるが、ここでの政策形成は政治家や専門家など限られた人間のみが参加し、ごくふつうの“市民”が関わることは難しい。「世界市民会議World Wide Views?生物多様性を考える」は、国際的な政策形成と市民とをつなごうとする試みである。2012年、世界25の国と地域から約3000人の市民が参加して開催され、会議結果は、生物多様性条約第11回締約国会議(CBD-COP11)に届けられた。著者らは、この取り組みに日本大会の主催者(ナショナルパートナー)として参加した。決議書内での取り組みへの言及など、一定の成果を残した一方で、会議結果は本当に市民の「声」を反映したものだったのかなど、多くの課題がある。著者らは、独自の追加セッションの実施やファシリテーション方針の設定、会議で行われた議論の分析を通して、会議において設問や情報提供の偏りによらない本質的な議論を促すとともに、会議設計の妥当性を検証し、本当の“市民の声”を見出そうとした。また、他国において会議がどのように開催運営されていたのかの検討も行なった。その結果、情報提供、設問設定の両方が、かなり限定された文脈の中で行われており、議論を通じて生まれた参加者の多様な意見を反映できていなかったことなどが明らかとなったほか、他国においても、それぞれの国の事情を鑑みて独自の工夫が行われていたことがわかった。World Wide Viewsは、会議設計や締約国会議との連携方法に多くの課題がありながらも、グローバルな科学コミュニケーション手段として大きな可能性を秘めている。そして、会議設計の改善のためには、各国の“科学コミュニケーター”とも言えるナショナルパートナーの役割が重要となるだろう。
  • 水町 衣里
    2018 年 68 巻 3 号 p. 189-197
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー
    生態学者が社会と関わる機会は、今後ますます増えることが想定される。政策形成に関与する機会、地域住民との協働の機会などが考えられる。本稿では、筆者が開発に関わった教育プログラム「宇宙箱舟ワークショップ」の開発と実践事例を紹介しつつ、生態学と政策・制度をつなぐために、生態学コミュニティが多様な立場の人々との対話に臨む際に認識すべきことや今後改善すべきことについて論じたい。この教育プログラムは、学校現場での利用を想定して開発された。児童・生徒たちに、1)科学に関わる事柄の中には、「科学だけでは解決できない課題」や「不確実性が含まれる課題」が存在するということを提示する科学的情報そのものに不確実性が含まれるといったことや、科学という観点だけでは解決できない課題もあるという側面を共有すること、そして、2)常識や日常的な価値観を相対化し、1つの課題を複数の観点から捉える機会を提供することを目指した教育プログラムである。多様な価値観を持った人々との議論の場を模擬的に体験できるようになっている。生態学に関わる社会的な課題には、科学だけでは解決できない課題が多い。「答え」がないからこそ、多様な観点を持った人々の間での対話が重要になってくる。今後、本プログラムの参加者や実践者からのフィードバックを教材のよりよい改良に向けて活用したい。と同時に、これらフィードバックを生態学コミュニティにも返していくことで、科学的知見を提供する側に立つ生態学コミュニティとその外側の世界とのコミュニケーションの改善に寄与できるのではないかと考えている。
  • 千葉 知世
    2018 年 68 巻 3 号 p. 199-209
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー
    自然環境保全のためには科学的に適正な予測と評価に基づいた価値判断と政策立案が欠かせないが、それは必ずしも容易でない。社会の意思決定は常に極めて多様な要素の総合的判断に基づくからである。そうした中で研究者らが、政策過程における非自然科学的要素に対し関心を放棄してしまうと、自然環境政策形成の可能性は狭められてしまう。本稿は、自然環境政策の形成過程への研究者の関わり方、そこで果たしうる役割や機能について試論するものである。事例として、熊本地域における地下水保全政策、とりわけ白川中流域水田湛水事業を取り上げ、その政策過程を記述するとともに、キングダンの「政策の窓モデル」を援用した考察を試みた。本モデルは、政策プロセスを問題・政治・政策という3つの異なる流れで捉え、政策形成をそれらの流れの合流とするものである。検討の結果、熊本地域の研究者らは3つの流れのすべてにおいて政策実現に向けて重要な役割を果たし、「政策企業家」として機能したと推察された。研究者は、自然や社会の状態評価のみを政策過程における自身の役割として捉えるのではなく、政策決定に向けて主体的な役割を果たす「政策企業家」として行動することで、政策形成への架橋となることができるであろう。
  • 富田 涼都
    2018 年 68 巻 3 号 p. 211-222
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー
    生物多様性の保全をめぐる科学技術コミュニケーションでは、非専門家の科学的知識の欠如が問題の原因と考える「欠如モデル」を脱したコミュニケーションのあり方が求められている。そのためには、どんな社会的文脈のもとに何を現場の問題とするのかという問題設定のフレーミングを自ら相対化するようなコミュニケーションプロセスを設計することが必要である。アザメの瀬の自然再生事業では、まずは地域住民の土地の記憶を「聴く」行為をきっかけとし、それを共有することで、ステイクホルダー同士のフレーミングの違いを前提として問題設定のフレーミングの相対化に成功し、何が重要なのかを再考することで同意を得ることができた。このことは、脱・欠如モデルの科学技術コミュニケーションの例として位置づけることができる。また、「聴く」プロセスと同様のことが、環境社会学や民俗学等で行われている生活や生業に関する聞き取り調査とその成果の活用においても行われていることは、脱・欠如モデルの科学技術コミュニケーションの手法を検討する上で重要なヒントを与える。特に「聴く」という行為による「学び」を、それを多様な主体が参加する市民参加型の調査として設計することは有力な方法となり得る。生物多様性の保全においても、このような問題設定のフレーミングの相対化をともなう「聴く」行為を軸とした新しい科学技術コミュニケーションが必要になるだろう。
  • 佐久間 大輔
    2018 年 68 巻 3 号 p. 223-232
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー
    生態学が実学として社会の中で人間活動と生態学的諸問題の衝突の解決を目指す上で、生態学上の基本概念や専門知識を市民の間に広げ、対話を持ち、地域での合意を醸成するアウトリーチ活動と、それら実践の現場から得た課題を政策として立案し、政策決定者と対話を行うアドボカシー活動は重要な両輪である。これらの活動を担う生態学コミュニケーターの養成と、科学技術政策の中での位置づけ、生態学会との関わりや、社会の中で活動するための基礎的な条件を検討した。自然史系博物館は社会と学術界の両者にひらかれた施設として対話の場として、そして人材養成、NPO支援のプラットフォームとなりうる。自然史博物館自体の社会的機能を有効に活用するためにもコミュニケーターは重要である。博物館のみならず、生態学会も社会からのフィードバックを受け自らの知見と合意形成機能の有効活用をはかることにより新たな視座が開けるであろう。
  • 相川 高信
    2018 年 68 巻 3 号 p. 233-240
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー
    生態学コミュニティが置かれた外部環境が時代とともに変化した結果、関係を持たざるを得ない「他者」が出現し、コミュニケーションの問題が顕在化している。現段階で、生物多様性の保全のために社会変革を誘導するための経済システムや政治システムは確立されておらず、コミュニケーション行為を媒介として社会制度に働きかけていくしかないという現実がある。また、政策形成や実際の保全活動の実施など全ての局面において、他者の経験や価値観等の違いを前提としたコミュニケーションは基盤となりうる。そして、コミュニケーション能力は基礎的なもので十分であり、教育・訓練で身につくものである。そのような能力を持った実務家の育成が、生態学コミュニティに求められている。
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