日本生態学会誌
Online ISSN : 2424-127X
Print ISSN : 0021-5007
ISSN-L : 0021-5007
最新号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
特集 種の境界:進化学と生態学、分子遺伝学から種分化に迫る
  • 山口 諒, 松林 圭
    2019 年 69 巻 3 号 p. 145-149
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    生物学的な「種」は生態学のみならず、多くの分野で研究対象の選択時に考慮される大切な単位・概念である。新たな種を生み出すプロセスである種分化は、生物多様性の創出要因として重要であり、そのメカニズムはダーウィンやウォレスの時代から注目を浴びてきた。一方で種の境界は時に、亜種やエコタイプなど様々な階層を含め非常に曖昧な場合が存在する。本特集では、集団が「種」として確立される際に重要である生殖隔離機構の進化に焦点を当て、野外や実験下での観測から、その分子遺伝学的基盤の解明、理論までを総説として取りまとめる。近年、本分野に関する日本語の解説は限られており、種分化のメカニズムとパターンを概観する本特集を通して、生態学研究の対象となる「種」の境界が成立する過程の理解が深まることを期待する。
  • 山口 諒
    2019 年 69 巻 3 号 p. 151-169
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    生物多様性の創出要因である種分化は、基本的に長い時間を要する事象であるため時系列に沿った直接観測は難しい。そのため20世紀前半より、数理モデルを用いた理論的研究が種分化に関わる仮説の検証や新仮説の提唱に大きく関わってきた。しかし、種分化の促進要因は多岐にわたるため、それぞれの種分化が個別の機構によって説明されることが多く、未だ統一理論は存在しない。一方、野外データやゲノムデータをどの種分化シナリオと対応させ、どのように生物地理学的な議論を行うかは、まず関連する進化機構の整理と統合が必要であるため、一見したところ乱立して見える理論を理解することは欠かせない。本総説では、種分化を達成する際に障壁となる諸過程の整理から始め、どのようなメカニズムがそれらを乗り越えて生殖隔離の進化を促すかを概説する。非常に多くの生殖隔離機構やそれらの進化パターンから共通する要素を抽出し、種分化ダイナミクスにおいて鍵となるメカニズムを特定することが目標である。そのため、古典的な地理的要因の理論から、近年の潮流である生態的種分化まで広範なトピックを扱うが、基本的には遺伝的浮動と多様化淘汰を強める要因を俯瞰したい。数理モデルを背景としてはいるものの、生態学者を対象に理論の理解を促進することを目指すとともに、現在提示されている生態的な仮説に対してはできる限りその対立仮説を取り扱うこととした。また、すでに検証が行なわれている仮説や理論的枠組みが遅れている箇所を明記することで、今後の種分化理論の発展が期待される方向を示した。
  • 松林 圭
    2019 年 69 巻 3 号 p. 171-182
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    種分化とは、生物の多様性を生み出す原動力であり、“潜在的に交配可能な集団間に、交配を妨げる遺伝的機構(=生殖隔離)が進化すること”と定義できる。生物学的種概念を基礎とするこの種分化の定義は、広く進化生物学において受け入れられてきたが、実際の生物にこの基準を適用することには困難が伴う場合が多い。異なる個体群が、果たして異なる種にあたるのか否かは、進化生物学、生態学のみならず、分類学的にも重要な問題であった。この“種のちがい”を定量化する試みは、遺伝子マーカーを使用するものや形態的相違を判別形質とするものなど、様々な手法が使われてきた。これらはどれも、生殖隔離の存在やその強度を間接的に推定するものである。最近では、野外観察や行動実験を通して生殖隔離を直接測定する手法が普及しており、隔離障壁の進化やメカニズムに関する理解が大きく進んでいる。本総説では、種のちがいを量る方法として生殖隔離の定量化に着目し、近年になってこの分野で得られた知見を紹介する。
  • 髙橋 文, 田中 健太郎
    2019 年 69 巻 3 号 p. 183-190
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    生殖的隔離機構が生じる遺伝的メカニズムについては、Bateson-Dobzhansky-Mullerモデルで示されたように遺伝的要素間の不適合に起因することが古くから概念化されている。モデル生物であるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)やその近縁種を用いた研究では、交尾後に生じる不適合性に関与する遺伝子が複数同定されている。また、外部生殖器形態の種間差のような量的形質についても原因となる遺伝領域に迫るツールを駆使することができる。このような不適合性の生起には、自然選択が関与している場合としていない場合があるが、交尾後の生殖的隔離に寄与する遺伝子が同定されたケースの多くで、アミノ酸の置換速度が速いなど、正の自然選択が関与した痕跡が見られる。特にショウジョウバエでは速い進化の原因として、ゲノム内コンフリクトから生じる強い正の自然選択の関与が多く報告されているが、環境適応による自然選択が不適合性の生起に関与するケースがもう少し見つかってもよいのではないか、またそれを明らかにするためにモデル生物を用いる利点や難点は何か、今後の展望について考察する。
  • 細 将貴
    2019 年 69 巻 3 号 p. 191-192
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
  • 北野 潤
    2019 年 69 巻 3 号 p. 193-195
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    ゲノム解析技術、及び、ゲノム編集技術が急速に進展してきたことから野生生物の種分化ゲノム解析はますます容易になりつつあり、現在は、遺伝学と生態学を融合することが可能な時代と言える。本コメントペーパーでは、特集号であまりカバーされていないゲノム内コンフリクトの種分化における役割について紹介するとともに、今後どのような研究が可能となるかについて、一つの考察をしてみたい。
学術情報特集 北日本の環境アイコン「サケ」の保全活動を考える
  • 森田 健太郎
    2019 年 69 巻 3 号 p. 197-199
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
  • 峰岸 有紀, 青山 潤
    2019 年 69 巻 3 号 p. 201-207
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 俊平, 森田 健太郎
    2019 年 69 巻 3 号 p. 209-217
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    サケの野生魚と放流魚で遺伝的特徴に違いがあるのかを調べるため、北海道内の放流河川および非放流河川に生息するサケ13水系16河川25集団についてSNP43遺伝子座の分析を行った。遺伝標本は、遡上したサケ親魚またはサケ稚魚の体組織から採集した。また、耳石も採集し、耳石温度標識が確認されたふ化場由来の放流魚は分析から除外した。放流魚の比較対象として既報の北海道サケ放流魚26集団を加え、集団遺伝学的解析を行った。遺伝的多様性を野生魚と放流魚で比較したところ、放流魚で低くなる傾向を示した。一方、野生魚についても河川間では遺伝的多様性にばらつきが見られ、自然産卵が可能な非捕獲河川の方が遺伝的多様性は高い傾向にあった。野生魚の遺伝的集団構造は、既知の北海道放流魚の5地域集団に区分されたが、野生魚はその5地域間よりも地域内の集団間の方で高い遺伝的分化を示した。石狩川水系に属するサケ調査河川集団間でその遺伝的特徴を調べたところ、3つのグループに分かれ、同一水系内でも弱い遺伝構造が存在することが分かった。特に、野生魚で構成されている千歳川後期群のサケ集団は他のグループとは遺伝的に異なっていた。以上の結果から、北海道に生息するサケ野生魚は放流魚とは異なる遺伝的特徴を持つことが示唆された。
  • 片岡 朋子, 布川 雅典, 田代 優秋, 谷瀬 敦, 村山 雅昭
    2019 年 69 巻 3 号 p. 219-227
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    北海道札幌市を流れる豊平川において、産官学民協働活動として、2017年にサケ産卵環境の改善プロジェクトが行われた。本プロジェクトは行政主導ではなく、市民団体、建設会社および研究機関が主体的に活動してきた。その活動の結果、減少していたサケ産卵床の増加につながった。このような活動への参画組織とその活動体制がユニークであったことから、多方面から注目されることとなった。このような活動事例は、今後の自然再生や環境保全活動を行う際に参考となる。そこで、本稿では、本プロジェクトに参画した個人や組織の、つながりと役割に着目して、本活動が数年にわたって継続できた要因について明らかにした。2015年から本プロジェクトに至る経緯は、協働活動参加者に対して2018年10月に行われた対面式のインタビューにより収集し記述した。2017年の本プロジェクトまでは、2015年は市民団体のみ、2016年には研究機関が加わらない協働での産卵環境改善の試みが行われた。その後、2017年にはこれが産官学民の協働活動に発展し、活動する様になった。本活動が発展した要因として、活動へ参画する個人のつながりである特定のローカルコミュニティの人間関係が重要であった。これに加えて、コミュニティ間の連携があったこと、また個人や組織の役割が、明確ではないものの活動内容に応じて柔軟に変化したことが要因として考えられた。さらに、「小さな自然再生」といわれる自然再生活動の定義に比して、本研究のプロジェクトは規模が大きいものの、行政主導の自然再生事業に比べると小規模である。このため、本プロジェクトは「中くらいな自然再生」といえることも明らかになった。既存の活動にもこの「中くらいな自然再生」といえる活動があるが、本プロジェクトは、多様な主体が対等な立場で参加し活動していることが、類似する活動と異なる点であった。以上のことから、多様な主体が対等な立場で参加し、役割を柔軟に変化して活動できた活動形態が今後の協働活動の調整手法を考える上で非常に重要であると示唆された。
  • 有賀 望, 森田 健太郎, 岡本 康寿
    2019 年 69 巻 3 号 p. 229-237
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    かつてサケは北海道のどの川にも遡上するほど身近な生き物であったはずである。明治時代に川での捕獲が禁止され、孵化放流事業のために川が堰き止められるようになり、一般市民にとって身近な魚ではなくなってしまった。しかし、札幌のサケは市民運動で復活し、都市の中にも身近な自然があることを教えてくれる象徴的な存在になった。近年は、放流から野生サケ保全の活動が加速し、河川管理者、施工業者、研究機関との連携による産卵環境の復元が行われている。都市河川において、サケ個体群が存続し続けるために必要なことを模索している。
学術情報
生態教育の今と未来(6)
野外研究サイトから(39)
feedback
Top