倍数化は種分化や適応進化などの進化生態学的現象を駆動する要因であるとともに、多くの農作物が栽培化される過程での有用形質の獲得にも関与してきたと考えられている。この倍数化はどの分類群でも確率的に生じうる現象であるが、とりわけ自殖によって交配相手がいなくとも個体数を増やせる植物で特に維持されやすく、その結果、四倍体を超える「高次倍数体」と呼ばれる極めて複雑な染色体構造を持つ種も存在する。これらの複雑な倍数性の進化生態学的な機能について理解するために、ゲノム情報の解読と染色体構造の構築が重要である。特に2000年代以降に登場し、その後目覚ましい進歩を遂げた大規模並列シーケンサー技術は、倍数体のゲノム解析に大きく貢献してきた。近年ではロングリードシーケンサーによって高品質なコンティグの構築が可能となり、得られたコンティグの順番や向きを正しく繋ぎ合わせることで、染色体数と一致させた染色体レベルでのゲノムアセンブリも現実的なものとなった。末端のテロメアから反対側のテロメアまでの全長を決定する、T2T (Telomere-to-Telomere)レベルまで到達する研究も現れ始めている。本総説では、2020年以降に新たに発売されたシーケンサーの特徴とトレンドを中心に、倍数体ゲノム解読がどのように進展しているかを概説する。さらに筆者らが取り組んでいる高次倍数体植物のゲノム解読の状況とその展望、そして限界について論じる。
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