日本油化学協会法による標準人工汚染布の作製には汚染浴の分散媒として四塩化炭素が指示されているが, 四塩化炭素は強い毒性をもった溶剤で, 麻酔を主とした急性中毒, 肝臓や腎臓の障害を主とした慢性中毒を引き起こす.本報はその汚染布作製作業について衛生学的見地からの検討を行なったものである.
通風換気不良な室内での作業時には環境空気中四塩化炭素濃度は衛生学的許容濃度を越えた.したがって, 室内の通風換気あるいはガスマスクの使用など中毒予防対策の必要が認められた.しかし, 強力な通風は分散媒の蒸発を促進し, そのために製品に汚染の不均一を生じた.また, ガスマスクの着用は不快感, さらに作業性の低下を招いた.なお, 全国の教育研究機関を対象としたアンケートによって, 作業時に中毒予防対策を講じているところはごく少数に過ぎず, 作業者の自覚症状の訴えもかなり高率に達していることがわかった.
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