樹脂加工布の遊離ホルムアルデヒド測定における抽出方法 (浸せき法, 気相液相法) , 抽出条件 (温度, 時間) ならびに定量方法 (浸せき法におけるアセチルアセトン法, クロモトロープ酸法) による測定値の相違について検討した.また, 抽出液の煮沸前処理および水蒸気蒸留の影響についても検討した.
(1) 各抽出法とも, 抽出温度が高いほど, また, 時間が長いほど, 遊離ホルムアルデヒドは増加し, 72hrでも平衡に達しない.
(2) 気相液相法では抽出によって遊離してきたホルムアルデヒドだけを測定できるが, 浸せき法では同時に一部樹脂をも溶出するので, 定量法および発色条件によっては溶出樹脂に結合しているホルムアルデヒドも測定していることになる.
(3) クロモトロープ酸法は発色操作中に, 溶出樹脂の加水分解を起こし, 溶出樹脂中の結合ホルムアルデヒドも測定する.
(4) アセチルアセトン法でも発色を高温 (100℃) で行なうと, 溶出樹脂の加水分解を一部起こす.
(5) 浸せき法において抽出液を水蒸気蒸留で行なう方法ではホルムアルデヒドのみを測定することができる.しかし, 水蒸気蒸留によって脱落樹脂は分解する.分解率は使用樹脂によって異なる.
(6) 浸せき法では定量法によって, 測定値がちがってくる.水蒸気蒸留前の測定では, 一般に, クロモトロープ酸法, アセチルアセトン法―100℃水浴法, アセチルアセトン法―40℃水浴法の順に小さくなる.この主な原因は抽出液中の脱落樹脂分解の程度の大小による.
(7) 気相液相法 (40℃, 5hr) -クロモトロープ酸法と浸せき法 {室温 (24℃) , 1hr} ―アセチルアセトン法 (40℃水浴法) との値は比較的近似する.
抄録全体を表示