紳士用スーツ地86種を試料とし, しわの異方性が1つの試験で捉えられる, LINRA Sun-Ray Test法を採用し, できるだけ着用時に近いしわ付け条件を設定して, しわ付けを行なった.
しわの評価は, しわ付け前後の試料の投影面積の比をしわ回復度とし, 瞬間しわ回復度および平衡しわ回復度を求めた.しわのこれら2つのパラメータについて, 布のどのような物理量がどの程度寄与しているかを検討する一方, 基本物理量から, しわを予測するための式を導いた.
その結果, 瞬間しわ回復度には, 繊維自身の粘弾性的性質, 平衡しわ回復度には, 繊維, 糸, 布の塑性的な性質の寄与が最も大きいことがわかった.そして, 着用時に生じるランダムなしわには, せん断特性, 表面特性の寄与が大きく, 曲げよりもむしろ繊維間, 糸間の“ずり”の効果の大きいことが明らかになった.
また, 多変量回帰分析の手法を用いて求めたしわの回帰式から計算した計算値と実測値との相関係数は, 瞬間しわ回復度では0.724, 平衡しわ回復度では0.743となり, かなり良い一致が得られた.
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