着用によって生じる織物の疲労現象を布の基本的な力学的性質の変化として実験的に捉え, 布の着用性能試験による疲労予測のための基礎的資料を得ることを目的とする.
羊毛織物の紳士スラックスを3シーズンにわたる計1000hr着用試験後, 腰, 膝, 裾部位より試験布を採取し, これらの基本力学特性をKES-FB計測システムを用いて計測し, 他方, 繊維, 糸, 布の形状変化を顕微鏡で観測する.着用によって引張り, 圧縮変形からの回復性は低下し, 曲げ, せん断変形特性の変化も著しく, これらは糸構造や布構造によって変化の傾向を異にするが, 一般にヒステリシス成分が2~3倍増加する傾向が認められる.
また部位による疲労の様相は多少異なり, これらは繊維表面のりん片の脱落状態や繊維の集合構造変化などとの関連で定量的に捉えられた.
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