被服の表地や裏地としてよく供される代表的な被服地即ち, 綿・ブロード, 綿・デニム, 毛・カシミア, 毛・フランネル, 絹・クレープデシン, 絹・サテン, レーヨン・シュラー, アセテート・サテン, ポリエステル・シュラー, ポリエステル・スエードの各種被服地試料群に所定の方法で, それぞれ人為的に水じみを付与した.この時, 各試料群内は諸元も同一で単に色違いのものとした.かつまた, 水じみの付与に際しては, 所定同一条件下で実施し, 同一試料群における水じみの実質的発現状態に差異はないように処理した.かかる風乾後の水じみの状態を評点法により, 各試料群ごとにパネルに官能検査をしてもらった.その結果を次に記す.
1) 綿・デニム, 毛・フランネル, ポリエステル・スエード試料群を除く, 残りの7試料群では, 水じみの官能評価値は各試料間において, それぞれ有意差を示し被服地の色によって水じみの判断, 評価が異なった.
2) しかし, 上記の7試料群では, その官能評価値と色相, 明度, 彩度との間に, 何ら相関関係は認められなかった.また, それら試料群の官能評価値は, 対比光沢度, 色濃度値 (絹・サテン試料群を除く) との間にも何ら連関をみせなかった.
3) 上記の7試料群の官能評価値とハンター色差△E (原布部一水じみ部間の色差) との間には, 相関関係がみられた.即ち, 色差を水じみの判定要因の一つとしていることがうかがえた.したがって, 水じみとして知覚される場合, その当該部は周辺部のそれと異なった色, 色差として判断されていることが示された.
4) また, 別の分散分析によれば, 水じみの認識状況は試料群によって異なった.ちなみに, フィラメント糸試料群に水じみの発生傾向が大きく, スパン糸試料群にその傾向の少ないことがうかがえた.
以上の結果により, 被服地に付与された水じみの官能評価値は, 事前の測定値 (色相, 明度, 彩度, 対比光沢度, 色濃度値) によって把握することができず, 結局, 事後の測定値, 色差によっていることが明らかになった.
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