繊維および構造のことなる19種の布に対する血液汚れのぬれと付着状態を検討した.
布上での血液汚れのぬれ挙動は, ぬれ拡がり面積より評価し, 付着状態は, 走査電子顕微鏡により観察した.
布上のぬれ拡がり面積は血清のほうが全血よりも大きく, その差の大きい布では, 2重の輪じみを生ずる.
血液汚れのぬれと付着状態は, 便宜上, 布の種類により4つのパターンに分類された.すなわち, 羊毛を除く親水性繊維織物では, 血液汚れは布表面および内部にぬれ拡がり, 均一に付着する.疎水性短繊維織物では, 血液汚れはぬれ拡がるが, 2重の輪じみを生じ, かなり不均一に付着する.疎水性長繊維織物では, 血液汚れはぬれ拡がらず, 布表面で凝固する.親水性繊維および疎水性繊維の編物では, ぬれ拡がりにくく, 血液汚れは編物内部に包含される.
血液たん白質汚れの水に対する溶解性は, 布上での付着状態と関係し, 不均一に凝固して付着している汚れは, 均一にぬれ拡がるものよりも分散溶解されやすい.
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